2022年7月1日、映画『ゆるキャン△』が劇場公開された。原作は芳文社「COMIC FUZ」にて連載中の『ゆるキャン△』(作・あfろ)で、2018年にTVアニメ化されると2021年には『ゆるキャン△ SEASON2』が放送されるなど人気を博している。現在のアウトドアブームの一端を担っており、作中に登場した実際のキャンプ用品を紹介するムック本が出版されるなど、『ゆるキャン△』からキャンプ沼へハマっていったという人も多い作品だ。
山梨県を舞台に女子高生たちが実在する場所でキャンプをする描写は、スタッフが実際にロケハンを実施。キャンプ道具の緻密な描写はもちろんのこと、陽の傾きをリアルに再現するなど確かに登場人物がその場所にいるように計算されたリアリティのある演出と、コミカルに描かれる女子高生たちの日常も含めた緩い雰囲気のギャップが印象的だ。
各務原(かがみはら)なでしこ役を演じた声優の花守ゆみりと志摩(しま)リン役の東山奈央のインタビューの中で、花守は『ゆるキャン△』という作品の魅力をこう語った。
「とあるお父さんから、お子さんたちがなでしことリンちゃんの真似をして、タオルを棒の上にかけてがんばってテントを張る真似をして遊んでいるというお話を聞いたんです。本当にこの作品は年齢を問わずどんな人にも重なる部分や楽しめる部分がたくさんあって、だからこそなでしこたちに感情移入してくれるんだろうなと感じました。
この作品をキャンプの入門書のように扱ってくれて本当に嬉しいですし、何事も押し付けないで開かれた作品だからこそ、色々な方に楽しんでいただける魅力があるのだと思います」
花守が言うように、押し付けないことは『ゆるキャン△』という作品を通じて描かれている。ソロキャンパーとして1人でキャンプに赴きゆっくりと好きな本を読む時間を楽しむリンに対して、なでしこは友人たちと一緒に楽しむキャンプへと誘う。賑やかなことが苦手なリンは誘いを断るのだが、なでしこは無理強いをしない。2人でキャンプへ出かけた際も、一緒にボートに乗って荷物を運ぼうとなでしこは提案するものの、リンはボートに乗らず歩くことを選択するのだが、なでしこは気にせず1人でボートに乗って楽しむ。
なでしこの天真爛漫さに次第に心動かされたリンは、最終的に友人たちと一緒にキャンプへ行くことになるが、ソロキャンプも続けていく。1人楽しむキャンプの魅力と、友人たちや家族で楽しむキャンプの魅力がそれぞれ別の魅力として描かれていることが『ゆるキャン△』という作品の特筆すべきところなのだ。それぞれ別の行動をしていても、スマホで写真を送ったりメッセージのやり取りをするという現代的な友人関係の距離感もしっかりと描かれている。
東山もそんな押し付けない関係性について「仲のいいなでしこやリンたちが、尊重し合うことでお互いのペースを守っているところがいいですよね。見ているこちらも居心地がいいと感じられるポイントなのだと思います。そういう姿を見ているからこそ、緻密に描かれる自然の中に没入できたり自分もこういう仲間がほしいなと思えたりして、日々の疲れを癒してくれるような作品になっているんじゃないかなと感じていますね」と言及する。
キャンプを通じて自然の魅力を感じたいと思っていても、初心者が1歩を踏み出すのはなかなか難しいものだが、リンのように1人で気ままにソロキャンプをすることも良し、なでしこたちのように気心知れた仲間たちと楽しく過ごすのも良しなのだと教えてくれる。花守自身も、『ゆるキャン△』に関わったことでキャンプを始めた1人だという。
花守は「自分が思ったように時間を無駄にすることもできれば、有効活用することもできる自由な時間の使い方って、日常生活の中でなかなかできないことだとキャンプに行った時に感じたんです。この3年くらいキャンプでだらだらと過ごす時間の虜になっていって、もっと早くキャンプという趣味にハマればよかったなと思っています(笑)。食わず嫌いってもったいないんだなって」とキャンプそのものの魅力を語ってくれた。
見た人にキャンプの魅力を自然に伝えてくれる『ゆるキャン△』だが、7月1日より公開された映画『ゆるキャン△』では、社会人となったなでしこやリンたちがキャンプ場を作るというストーリーが描かれる。キャンプをしてみたいが1歩を踏み出せないという人は、まずは劇場で映画『ゆるキャン△』を見て、キャンプの魅力を感じてみてはいかがだろうか。
映画『ゆるキャン△』
【公式HP】https://yurucamp.jp/cinema/
【Twitter】https://twitter.com/yurucamp_anime
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取材・写真・テキスト/kato