不登校生徒に居場所を…「片中カフェ」が作る“第3のコミュニティ” 運営者「大切なのは距離感」
【映像】片中カフェの様子
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 神奈川県藤沢市の片瀬中学校にある一室。看板には「片中カフェ」と書かれている。ここは、ある生徒たちに「一息つく場所を提供したい」という理由から立ち上げられた。

【映像】片中カフェの様子

「学校に通っている子がちょっとクラスに居づらくて一休みをしたり、本当は学校に通ってみたいけどクラスには行きづらい不登校の方たちが来たりするという両面を考えて立ち上げた。クラスや保健室以外で、来てもらえるような(場所の)選択肢を広げたいと思い、『片中カフェ』を作っている」(「片中カフェ」運営代表/PTA役員経験者・西永雄二さん)

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 色々な登校の仕方があってもいいのではないか――。不登校の生徒やクラスに居づらい生徒が気軽に立ち寄れる“居場所”を作りたいとの思いで、去年の7月から「片中カフェ」を開放した。

 西永さんをはじめとしたPTA経験者たちが運営し、月に2回ほどオープンしている。畳の小上がりにはソファーが置かれ、くつろげる空間が広がっている。しかし、カフェのように飲食物を提供するなど、特別なことをするわけではない。西永さんが大切にしているのは「適切な距離感」だという。

「相談を受けることはあるかもしれないが、我々から積極的に話しかけるよりは、“見守り役”としてそこにいるという形で運営している。自分の時間を過ごして、自分のタイミングで話しかけられるのがいいところだと思っているので、まずは気を休めてもらう」

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 実際に去年、不登校と思われる数人の生徒が片中カフェに訪れ、自分の時間を過ごした。また当初のメンバーに加え、今では当事者の保護者も運営に参加している。不登校の生徒たちの居場所だけでなく、「その保護者たちの相談所としても機能すれば」と西永さんは話す。

「(子どもが)不登校になったことをきっかけに、初めてその事象に向き合う保護者の方も多いと思う。そうなったときに誰に相談したらいいか、また実際に子どもの不登校を経験されている方と知り合う機会がなかなかないのも課題として見えてきた。色々な解決策に向かって進んでもらうきっかけになればいいなと思っている」

 文科省の調査によると、2020年度の不登校児童生徒数は全国の小学校と中学校で19万6000人を超えている。西永さんは「片中カフェが直接的に貢献できているかが分からない」という悩みを抱える一方で、「数人でも“心休まる場所”として感じてくれる生徒に向けて“居場所”の提供を続けていきたい」と訴えている。

「片瀬中学校の湯山校長先生からアドバイスをいただいたが、人数だけではなくて、この場所があることで心が休まっている部分もあると思う。いつか『あのとき、片中カフェがあって助かったよ』と言われたらすごくうれしい。気長に活動を続けていきたい」

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 これを受けて、ニュース解説YouTuberで「The HEADLINE」編集長の石田健氏に話を聞いた。

――不登校の人は8年連続で増加していて、2020年度の不登校者数は過去最多の19万6000人を超えました。この人数について、どうお考えですか?

「数は非常に多い。10年で倍増しているがそもそも子どもの数は減っているので、割合がかなり増えているところに驚いた。特にここ2、3年でいうと、新型コロナウイルスの感染拡大でそもそも学校が閉じていた時期もあるし、感染拡大を不安視して行かなかった人もいる。それによって学習のペースが乱れたり、学校行事がなくなったりしたことで『行かない』というのもそう。子どもにストレスがかかっているということもデータとして上がってきている。加えて、学習のペースや発達の状態などにも悪影響が出ているんじゃないかという研究データもいくつか出ているので、そのあたりもあわせて早めに国で調査を進めていく必要がある」


――片中カフェのように、学校内に教室以外の居場所を作る取り組みはどう思いますか?

「非常に良いと思う。今、学校の先生の負担が大きいというところでいくつかニュースも出ているが、部活にコロナの対応、授業など、色々なことをやる中でなかなか手が回せない領域がある。そのときに、学校でも家庭でもない“第3の場所”があると非常に良いと思う。これは子どもたちだけではなくて、社会全体にも言えることだと思っている。『家庭と職場しかない』『家庭と学校しかない』……これによって、コミュニティでうまくやれないときがある。例えば、アメリカには教会やコミュニティセンターがある。地域によって別のコミュニティがあるので、そこで心が軽くなったり、特別な人との関係が築けたりする。しかし、日本においてはこういった“第3のコミュニティ”が想像しづらい。そういう意味でも、こうした試みが広がっていくといいかなと思った。特に、中高年の男性は孤独感を感じやすいというデータが非常に多いので、大人こそ“第3の場所”に出会うことが大事」

(『ABEMAヒルズ』より)

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