近年、“身体改造”が新たなカルチャーとして日本にも広がっているという。
「ここに人間を卒業することを誓います」。そうツイートしたのは、埼玉県内で水タバコの店を営む、はちさんぶんぶんさんだ。全身に施した身体改造は約50カ所に上る。
「まずピアスから入って、一通りのことをやってしまって。次はもう身体改造に行きたくなった(笑)。そこからネットで海外のサイトとかも含め調べまくって。まずスプリットタンに入って、スプリットタンからインプラントを。なかなか日本だとできないことでもあるし、やはり人と変わったことがしたいなという欲望がちょっと強くて…」。
腕に入るインプラントは医療用のシリコン、額の皮膚と頭蓋骨の間に額に埋めてあるネジも医療用のステンレスを使っているため、手術後の痛みはあったものの、その後はアレルギー反応などを起こすことは無いのだという。「水タバコの他にフードデリバリーの仕事もやっていて、帽子をかぶらないといけないので、その時は角(ネジに装着)が邪魔になる(笑)」
驚くべきはスプリットタンだ。約5年の“練習”を経て自在に動かすことができる舌先だが、これは自ら2つに割いたのだという。「スプリットタンのやり方には2種類あるあって、普通に電気メスなどでやる方もいるが、僕の場合は限られた情報の中でやった。デンタルフロスの糸で毎日毎日、強めに…。痛い。でも10日間くらいだ」。
ただ、トラブルも無いわけではない。「自分の身体なので仕方ないかなという気持ちでいるが、例えばシリコンが“こんにちは”しちゃったり。実は5日前ぐらいまでは帽子に当たる部分が炎症を起こして腫れていた」。
京都芸術大学非常勤講師の大貫菜穂氏は「裾野もディープさも広がってきているのが現状だと思う」と話す。
「やはりインスタなどのSNSがあるので、世界中の人がアップしやすく、そして情報を得やすくなった。さらにタトゥーのマシンやインクがどんどん改良されているように、メスやインプラントもどんどん良くなっているし、技術者の腕もよくなっている。結果、裾野もディープさも両広がっているということだと思う」。
その上で「舌をフロスで、というのは、当時はその方法しかなかったからだと思う。やはり適切な道具や素材を使い、確立された方法で行うべきだし、衛生環境もより良い方を選択するべきだと思う。その意味では、はちさんぶんぶんさんがインプラントを海外の施術者にやってもらったということもそういう理由だろうし、逆に情報統制のようなことになってしまったり、適切な施術者の育成が行われないと、皆がリスクを伴う自己流でやってしまう可能性が否めない」。
こうした技術は身体改造の分野にとどまらない。人体と機械を融合させたトランスヒューマニズム、人間拡張という概念が注目を集めており、世界では開錠に使えるマイクロチップを体内に埋め込んだり、スマートコンタクトレンズを眼球に付けたりする研究も進められている。
「今後は耳を尖らせる。“エルフ耳”だ。あとは乳首を取ろうかなと。怖い。怖いが、誰よりも先に行きたいので仕方ない」と話すはちさんぶんぶんさんも「あとはテクノロジーとの融合だ。日本人でやっている方はまだあまりいないと思うし、Suicaや電子決済を体内に埋めてやろうかと」と語った。
大貫氏は「私達にも身近なトランスヒューマニズムと言えば、義足だ。素材や技術が向上しすぎて、パラリンピックの陸上競技の記録がオリンピックの記録を上回るという状況も生まれている。昔から身体改造の思想とテクノロジーが合致して技術開発が進むというのはよくあることだし、自分の好みの分野として進化していくものや、Suicaのように利便性の高いもの、人道的なもので進化していく。もっと言えば、哲学の分野ではポストヒューマニズム、つまり人間の後という思想があって、人間だけを中心に考えるのではなく、地球に住む他のものとも共存・共栄しないとダメだよね、というものだ。身体のアップデートは古い歴史に連なりつつも、“別のものになる”という未来とも両立する可能性があると思う」と話していた。
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