「要人暗殺テロに対する日本社会の意識の低下があった。事件を起こす人を減らす“根本療法”を」安倍元総理の銃撃事件で福田充・日大教授
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 参院選の投票日を目前に凶弾に倒れた安倍晋三元総理。銃撃の瞬間を捉えた映像からは、警備体制の問題点も指摘されている。また、山上徹也容疑者の自宅からは複数の手製の銃が押収されており、“試し撃ち“をしたという趣旨の供述をしていることも報じられている。

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 11日の『ABEMA Prime』では、こうした問題について、安倍政権時代に内閣官房「日本のテロ対策の在り方について」委員会の委員も務めた福田充・日本大学危機管理学部教授に話を聞いた。

■要人暗殺、要人暗殺テロに対する意識の低下

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 まず福田教授は「無差別殺傷事件や無差別テロが一般的になってきたので、社会全体で要人暗殺、要人暗殺テロに対する意識が薄れていた、弱くなっていた部分が反省点ではないか」と指摘する。
 
 「無差別殺傷、無差別テロは警備が薄い場所や人に紛れて攻撃を行うことができるが、要人暗殺、要人暗殺テロはSPなどによる警備、警護がきちんとできていれば防げる可能性が高い。アメリカではライフルによるケネディ大統領暗殺事件が起きているが、これ以後、要人が銃等で殺害された事例はほとんどない。なぜかと言えば、単純に警備、警護が強化されて簡単に狙うことができなくなったからだ。それは日本も同様だった。また、民主主義国家の中で人命が重いため、一般人を標的にしても社会に対してインパクトを与えられる。加えてテロリズムという政治的目的をアピールする時には無差別殺傷、無差別テロでも効果はあるということが社会的に認識されてきた。

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 そうしたこともあって、無差別殺傷、無差別テロへの対策が意識の中で大きくなりすぎ、その分だけ要人暗殺、要人暗殺テロへの意識が警察も社会も少し気が緩んでいた、日本では起きない、という雰囲気が続いていた部分があるのではないか。しかし歴史的には大化の改新、本能寺の変、赤穂事件もそうだ。桜田門外の変で殺された大老の井伊直弼は、今で言う首相だ。近代以降も、大久保利通や伊藤博文が暗殺されたし、 五・一五事件や二・二六事件だってそうだ。

 もちろん現代の社会では件数自体は減ってきたものの、テロ対策や危機管理の研究を専門にしている私としては、起こさないために研究してきたつもりだったし、要人暗殺やテロへの対策を強化すべきだということも申し上げてきたつもりだった。しかし、こういう穴があった。非常にショックを受けた」。

■至近距離に近づくことを許してしまった警備上のミス
 

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 その“穴”の一つとも考えられるのが、安倍元総理への接近を許してしまったことだ。福田教授はこう話す。

 「今回の銃は散弾銃的なもので、火薬が爆発すると1つの砲身から1つのカプセルが飛び出す仕組みだ。そしてその中にパチンコ玉か小さな鉄球が6個入っていたようだ。非常に大ざっぱで荒々しい、雑な作りだと思ったが、問題は、これでも実行できてしまうことだ。ほとんどの部品がホームセンター等で買えるので、ある程度の工作の技術、もしくは作り方の知識が多少あれば、誰でも自作できてしまうものだ。

 ただし、ピストルやライフルと違って散弾銃は距離が短いので、近づいて発射しなければ当たらない。逆に言えば散弾は飛び散るので、あのくらい大ざっぱな銃でも、近寄れば当たる可能性が高まる。つまり警備としては近寄られることがなければ弾が到達しなかったかもしれないし、命中しなかったかもしれない。

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 もっといえば、あれだけ至近距離に近づければナイフでも襲撃できてしまったと思う。例えば社会党の浅沼稲次郎さんが殺されたのも短刀だ。僕自身、学生時代にお世話になった石井紘基先生が右翼に包丁で殺されてしまう経験をしている。やはり高さが違うだけでも、アクセスがしづらくなったと思うので、なぜ選挙カーの上ではなく、地上で演説をしていたのか。そして警備の人たちは、なぜ前方ばかりを見ていたのか。警備上のミスがあったと思う。

 欧米、特にアメリカで大統領が登壇するイベントの場合、必ず防弾ガラスで覆うくらい徹底するし、屋内であれば手荷物検査もできる。実際、今回の容疑者は前日に岡山の会場で入れず断念している。もちろん、まさに握手や一緒に写真を撮るといったことが選挙活動だし、票に繋がってくる。しかしインパクトのある事件が起きると模倣犯が増える可能性がある。その潜在的なリスクがある以上、対策を強化しなければならない状況が続くと思う」。

■事件を起こす人を減らしていくことが中長期的な対策

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 その上で福田教授は、“根本療法”の必要性を強調する。

 「今回のような事件をなくすためには何ができるのか。警備、警護の強化、そして手作りの武器を作るために必要な3Dプリンターや火薬などを買えないようにするための規制が挙げられるが、これらは対症療法だ。例えばテロ等準備罪や特定秘密保護法もそうだが、国際機関とのインテリジェンスでの連携、そして出入国管理というのは強化されているし、テロリストや犯罪者が海外から入って来なくなってきた。しかし最近のテロ、犯罪の潮流は国内の若者などが過激化することによって起きるホーム・グロウン型だ。

 今回の容疑者も、まさにローン・ウルフ(一匹狼)なので、たとえ通信傍受を強化したり、監視カメラを増やしたりしても、事前に察知することが極めて難しかったと思う。そこはやはり根本療法が必要だと思う。欧米のテロ対策の教訓でもあるが、こういう事件を起こす人は社会的に孤立をしていたり、貧困状況にあったりするケースが多い。また、宗教の原理的主義なものに染まっているケースもある。そうした人たちを教育したり、包摂したりしながら社会で救い、事件を起こす人を減らしていくことが中長期的な対策になると思う」。(『ABEMA Prime』より)

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