岸田総理の“原発9基稼働”発言はパフォーマンス?Twitterで論争の玉木雄一郎代表&細野豪志議員に聞く
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 「この冬で言えば、最大9基の稼働を進め、日本全体の電力消費量の約1割に相当する分を確保する」。14日の会見での岸田総理の“原発9基稼働”発言と、その報道をめぐって論争が起きている。

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 会見後、直ちに「国民を勘違いさせないよう、メディアも内容を正確に伝えて欲しい」「従来から予定されていたものが動くということだけなので、新たに再稼働を認めるものではない」とツイートしたのが、国民民主党の玉木雄一郎代表だ。すでに再稼働している10基のうち点検や保安上の工事で停止しているものを冬までに稼働させて9基体制にしようというのは、いわば“既定路線”だったからだ。

 さらに玉木代表は「引き続き東日本においては、厳しい状況が続くというのが、私たちの見通しだ。これでは電力危機の回避は期待できない。電気料金の高止まりも解消されない」と指摘する。実際、9基はいずれも西日本にある原発で、東日本の電力ひっ迫の懸念は払拭されていないようだ。

■細野議員「“総理のパフォーマンスだ”というのは言い過ぎだ」

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 19日の『ABEMA Prime』に出演した玉木代表は「私も会見を見た時には、岸田総理が“覚醒した”と思ったし、再稼働が認められている10基に9基がプラスされれば余裕が出てくるだろうと捉えた人は多かったと思う。ただ、政治的な指示で勝手に9基は動かせないよなと思って調べたら、定期検査で認められてはいるものの様々な理由で止められているものが順次動き始め、電力ひっ迫が予想される12〜2月で足し合わせると9基になる、ということだった。

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 また、電力供給の余力である“予備率”も、この9基を動かすことを織り込んで計算しているが、それでも必要だとされる3%に対し東京電力と東北電力管内では1.5%が改善されるに過ぎない。政府としては残りを10基の火力補うとしているが、それがどこになるかも分からないし、3月の地震で止まった新地火力発電所(福島県相馬郡)も含めてフル活用しても103万kWが足りない。依然として電力事情、特に東日本は厳しい。その客観的な現実を国民に伝え、節電も含め、やるべきことをやり尽くさなければならない。一緒になってエネルギー問題を考える姿勢が大事だと思うということを伝えたかった」。

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 玉木代表のツイートに「政治決断に基づく新しい情報。プラスされる数百万kWは現在の電力供給不足を考えると相当大きい」と反論したのが、民主党時代には原子力規制委員会の設立にも携わった自民党の細野豪志議員だ。

 細野議員は「まだまだ冬は厳しい。様々な取り組みを加速させないと、状況次第では供給が足りなくなる可能性がある。その意味では玉木さんと方向性は同じだし、最終的にやらなきゃならないと考えているポイントも同じだと思う。ただ、“総理のパフォーマンスだ”というのはやや言い過ぎだ」と指摘する。

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 「今回、岸田総理が経済産業大臣に明確な指示を出したというのがポイントだ。経済産業大臣にはできることがいくつかある。一つは電力事業者に対し、工事を早くするよう促すこと。審査途中の段階にある原発がいくつかあるので、1カ月でも前倒しができれば冬の電力に余裕を生じさせることができる。もう一つについては様々な意見があるが、原発のある地方自治体が持っている実質的な拒否権のようなものに対し事前に調整を行い、準備が整ったら時に再稼働できるようにすること。こうしたことは政治的には非常に大きな効果があるということだ。

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 原発について総理が指示を出すというのは近年ない。3.11の後、菅政権で指示を出さざるを得なかったことがあって、私もそのうちのいくつかに関わったが、それ以来だ。いま確実に動くものについてはできるだけ前倒しをして、電力供給に資するという意味で一歩踏み出したというふうに私は理解しているし、その意味で、私は今回の指示は“覚悟の表れ”ではないかと思っているし、状況によっては“第2弾”もあり得ると思う。具体的には『サハリン2』だ。これが実際に途絶することになれば、日本のエネルギー危機の状況はもう一段階上がることになる。その時に何ができるのかについても、内々でかなりの検討をしていると思う」。

■玉木代表「“つらい政治判断”はしないという宣言とも捉えられる」
 

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 細野議員のツイートに対し、玉木代表は「特重施設の期限を迎えたものも政治決断で動かすのですか?(私は賛成ですが)」との質問を投げかけている。再稼働にあたり求められる、テロ攻撃等による非常事態を想定した「特定重大事故等対処施設」の整備問題だ。

 玉木代表は「テロも含めた安全保障対策がクリアになったものしか再稼働の認可が出ないが、これに加えて航空機テロなどに備え、さらに安全性を確保しようということで造られるのが特重施設だ。ただ、5年以内という期限にはあまり意味がないし、原子力規制委員会の委員長も、これがないからといって直ちに安全性に影響があるとは言えないと国会答弁している。十分な電力供給ができないという状況になった以上、経済産業大臣は天下国家の重要事として電気事業法第31条の供給命令を事業者に対して出し、原子力規制委員会はそれを踏まえて規則改正すればいいと思っている」と問題提起。

 「そこで政治判断になるのが玄海原発の4号機だ。これは特重施設が完成していないので、9月12日に稼働を止めて、工事をし、再び動き始めるのは来年2月23日になっている。これも動かせば118万kWを確保できるので、総理の指示で動かすのかな?と思ったら、10基で認められた9基のうち、唯一外れてしまった。九州電力の幹部の人と話をしたが、玄海の4号機を入れなかったということはある意味で“つらい政治判断”はしないという宣言だとも捉えられる」。

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 細野議員も「私も最優先すべきは国民が安心して生活ができることだ。また、日本が原発を使わないことでエネルギーの獲得競争に参入し、ロシアの問題で他国を苦しめることにもなる。ただし、あの3.11を経験した我が国が同じような間違いを犯すことは絶対にあってはならない。私が特重のことを言っているのは、法律を作った時の経緯に関わっているからだ。

 原子力の安全には3種類ある。災害対策、セキュリティ・テロ対策、セーフガードだ。日本はセーフガードでは優等生だったが、深刻だった災害対策もこの10年間で大きく変わった。そしてセキュリティの特重だが、これは同時多発テロのような事件を想定してもなお安全に保たれるということだが、そこまで求めるのかどうかだ。

 確かにロシアがウクライナの原発を攻めるという新しい事象は起きているが、どこかで線を引かなければならないのも現実だ。3.11のようなケースがクリアできるということであれば、優先順位が高いのは国民の命を守るための電力供給、そして世界がものすごく苦労しているエネルギー分野に、日本はどんな貢献できるのか、ということだと思う。その意味で、玄海の4号機に関しては津波対策ができているから、動かさないともったいないし、玉木さんの指摘は当たっていると思う」とコメント。

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 一方、「供給命令を出したとしても、たとえばサハリン2が止まってLNGが10%近く入らなくなれば動かしようがない。さらには3.11の教訓から、電気事業者は原発を勝手に動かすことはできず、原子力規制委員会をワンクッションかますことになっている。そこを含めて、政府はまだ様々なオプションを持っている。それらのカードを切らなくて済むならそれでいいし、切らざるを得ない時はしっかり切っていかないと、責任を持って国民の安全を守ることはできない」とも話した。

■「今は原発にある程度依存せざるを得ない」

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 元衆議院議員の菅野志桜里弁護士は「この問題は、“正義”が三つ巴のようになっていると思う。まずロシアの侵略を成功させてはならないので、エネルギーでの脅しに屈しないように、ということ。しかし温暖化はダメなので原発も含めて考えなければならないということ。そして原発の安全性のために命や土地を奪ってはダメだということ。政治家として、どういう優先順位で何を解決していくかが問題だ」

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 原発や関連施設を抱える福井県出身の若新雄純・慶應義塾大学特任准教授は「万が一の事があれば、僕は実家を捨てなければならない立場だが、カーボンニュートラルまでにはまだ時間がかかるし、人間の欲望に応えていくためにも、慎重に再稼働していけばいいと思っている。そこで必要なのは手続きの問題以上に、社会が原発とどう向き合っていくのかということだと思う。その中には、原発は必要ないという未来があるとしたら、そのためには何年くらい必要なのか、それまでにミニマムでどれくらい原発が必要なのか、そして社会はどう変わっていくのかといったビジョンもある。政治家には、そういったメッセージを出して欲しい」。

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 玉木代表は「ここはまさに政治家、政党の考えが出るところだと思う。若新さんは“欲望”と表現したが、GDP成長率と電力使用量に相関があることは明白だ。結局、節電と言っていると経済が小さくなるし、電力がきちんと提供できなければ経済は成長しないし、もっと言うと給料も上がらない。やはり非常に高性能な蓄電技術が出て再生可能エネルギーが安定的な電源になるまでは使わざるを得ない。

 また、原発を作っても自国の企業や人材では動かせなってしまうという経済安全保障上の問題もある。今は国産率9割を超えているが、世界で建設中の原発の6割は中国とロシアで、下手するとこれらの国々に頼らざる得なくなる。その意味でも、ある程度きちんと動かして、知識や技術をつないでいかないといけない」。

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 細野議員は「この11年間、原発に頼らずにやろうという努力はしてきた。しかし実際には再生可能エネルギーも技術的に難しいという問題と、総論賛成・各論反対が非常に多い。メガソーラー、地熱、風力もそうだ。自動車産業を維持し、リニアを通し、仮想通貨といった技術にもチャレンジしていくというのなら、膨大な電力が必要だ。それを考えると、原発にある程度依存せざるを得ない。政府もすでにその方向性を出していて、エネルギー基本計画では2030年度の発電比率目標を20%から22%としている。

 今、新たなエネルギー危機が来ているので、原発についてもさまざまな開発をし、我々は3.11を乗り越えてやっていくしかないのだという政治的なメッセージを出すべきだ。国民の中でいろいろな意見があるかもしれないが、自分の子ども世代も含めて、それが今の政治の責任だと思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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