「元信者や元2世のインタビューが多く報じられている中、自分の意思で所属している“祝福2世”の観点は、また違った確度からの見方を提示するきっかけになると思いました。」
『ABEMA Prime』にTwitterアカウントに先月、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の生まれながらの2世信者(20代)から匿名で取材に応じたいとのDMが寄せられた。
番組では、テレビ朝日の平石直之アナウンサーと、レギュラーMCのひろゆき氏、さらに旧統一教会の活動実態について取材を続けてきた鈴木エイト氏を聞き手に、70分にわたり話を聞いた。
浮かび上がってきたのは、同じ現役2世信者でも微妙に異なる現状認識、そして安倍元総理の銃撃事件を機に再び報じられるようになった旧統一教会の活動実態に触れて揺れ動く気持ちだった。
■「献金はしたくないが、結婚は2世としたい」
両親は「合同結婚式」で結婚、父親は教会の職員でもあるタカハシさんは、普段はサラリーマンとして働いている。「日曜の礼拝には参加しておらず、節目の行事や合同結婚式のスタッフなど、年に3~4回ぐらいの活動だ。いい距離感で接していると思う」。
両親が1億円を超える献金により破産、少年時代は周囲よりも貧しい生活を強いられたこともあった。「こういう宗教なので、献金するもんだと思っている。教団を恨む気持ちはない」としながらも、自身は献金をしていない。
「日本は韓国を植民地にしていた罪を清算しないといけないから、献金するのが当たり前だ、という感じの教えをうけたので、“そんなもんなんだな”って感じ。ただ、親や1世たちは、"世界平和にもつながるから"と言って、喜んで献金をお捧げする。教会のビジョンにお金が必要だから、“ひとつ、かましてやる”という心境だと思う。だから億単位の献金も稀なことはない。ただ、自分は献金をしない“無料会員”だし、これからもしたくない(笑)」。
それでも旧統一教会との関係を断ち切るつもりは話す。教義に反して、信者ではない女性と恋愛経験があると話すが、結婚相手については、気心の知れた2世信者から探したいと語った。
「献金のノルマもあって、組織は冷たいけれど、そこにいる個人は優しい。お世話になった人たちを切りたいとは思わない。結婚も2世としたい。安心するし、祝福を受けたい。合同結婚式に参加したい」。
■「政治と深い関わりがあると知って驚いた」
同じく両親が合同結婚式で結婚。父親だけでなく、母親も職員だというサイトウさんは、給与の10%を献金する“十分の一献金”を実践しているという。
「お金は韓国の清平にある施設の建設費などに使われていると聞いた。2世たちは基本的にいい子たちだし、繋がれるのはいいかなと思っているし、“十分の一献金”だけだけれど、心が苦しくなるので払っている。その意味では家庭が破産されているタカハシさんとは感覚が違うのかなと思う。
それでも今回の報道で、日本が“集金国”で、それが韓国に渡っている、という話は初めて知った。世間から見れば常識外れな額の献金だったり、高額な品を買ったりしていたんだと、認識も改まった。第二次世界大戦の贖罪という気持ちもあったが、内部ではそういう時代はもう終わったんではないか、という話もされているし、今のような献金はそろそろ終わりにしてもいいのではないか。
そして、以前から“教会がやってることって、本当にこれでいいのかな、世間から見て危ないことをやっているんじゃないか”という気持ちも芽生えてはいた。信者の獲得をしながらも、心の中で葛藤みたいなものは常にあった。やんなきゃいいんだけど、同調圧力に押し負けていたと思う」。
話題は、旧統一教会と政治との関わりについても及んだ。2人は「今回の報道で、政治と深い関わりがあると知って驚いた」と口を揃える。
サイトウさんは「選挙の手伝いの声はかかるが、やったことはない。投票も政策で判断していて、自分の意見と違うところには投票しない」、タカハシさんも「僕も父が職員だし、他の信者からもLINEグループで“この人に入れて下さい”と言われることはあるし、全て自民党だった。ただ、そうしたお願いに従ったことはない」と証言した。
■「無くなるのは寂しい。どうしたらいい?」
「家族全員が教会に近いので、中からは見えないものもある。こういう場に出て、一般の方からどう見られているのかを聞くことで、自分の考え方が変わるかな?と思いました。教会を擁護するために来たつもりはないのですが、逆に外からは見えないこともあるので」と、出演を決めた理由を説明するタカハシさん。
サイトウさんが「僕たちみたいな現役信者の観点からの報道も増えればいいし、肯定的なものもあってバランスが取れていくと思う」と話すと、「普通の20代なんだなってのが伝わればと思った。ただ、ひろゆきさんと話しても自分の考えは変わらなかった(笑)」とした上で、教会については「やっぱり組織として見ると冷たいけれど、中の人は温かいし、感謝の気持ちもある。生まれた時からのアイデンティティだと思うので、無くなるのは寂しい。どうしたらいいんだろう」と、複雑な胸中も明かしていた。
旧統一教会のありようや政治との関わりを厳しく追及してきた鈴木エイト氏は「現役の2世信者の話を聞けたのはありがたかった。様々な報道があるが、2世への偏見はやめて欲しいと、普通の感覚を持った2人の話を聞いて、さらに感じた」、ひろゆき氏は「勇気を出して話をしてくれたのは良かった。悪い人たちが集まってるわけじゃなく、騙されやすい人、いい人が多いのだと思うし、生まれながらにこの環境だった人がいるわけで、悪い要素をいかに排除していくのかだと思う」と話していた。
現役信者への70分にわたるインタビュー映像はABEMAビデオ、番組公式YouTubeチャンネルで公開している。(『ABEMA Prime』より)
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