国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」(以下、アムネスティ)が発表した「ウクライナ軍が民間施設を拠点にし、民間人を攻撃にさらしている」という報告に、ウクライナのゼレンスキー大統領が「テロ国家に恩赦を与えている」と批判した。専門家などからも「ロシアを利する内容だ」といった声が相次いで寄せられている。
【映像】ひろゆき氏「タバコの不始末で航空機爆発するわけない(笑)」クリミア半島の爆発(現地の様子)
7日には「我々の報道発表が引き起こした苦痛と怒りは大変遺憾だ」と表明。「ウクライナ軍はロシア軍の撃退のため住宅地、学校、病院などに拠点を置き、民間人を危険に晒している。国際人道法違反である」と、改めて戦争犯罪や人権侵害に言及した。
1961年に発足したアムネスティ。世界最大の国際人権NGOであり、世界200カ国、1000万人以上が運動に参加している。これまで何度もロシア軍の問題を指摘し続けてきた同団体が、なぜ今になって、ウクライナ軍を非難する声明を発表したのだろうか。
ニュース番組『ABEMA Prime』に出演した防衛研究所主任研究官の山添博史氏は「レポートでは『ロシアも悪い』と書かれているが、ウクライナの問題点も述べている。実際に市街戦が行われているような都市では、使われていない学校や病院などを拠点にウクライナ軍が活動している。レレポートは『これは問題があるのでは?』という指摘だ。国際法に詳しい人の見方では、学校は夏季休暇中で『民間施設そのものではない』といった指摘もある。合理性があって、一概に『民間施設の軍事利用で違法行為だ』とは言えない」と説明する。
ジョージタウン大修士課程在学中で戦略コンサルタント時代は防衛・安保を担当した佐々木れな氏は「そもそもこの報告が事実かどうか怪しい」と話す。
「この報告書を書いたドナテラ・ロベラ氏は『軍に民間の避難支援や戦闘地域を離れるように勧めたが無視した』と批判しているが、一方で報告書を読んだ人から『自分の主張に沿った話しか取り上げていない』といった声もある。そもそも報告書を書いた人が、要は“人権ドン”みたいな人で、若干問題があったのではないか」
ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「事実として民間施設の軍事利用があったときに、それが良いか悪いか、価値判断までアムネスティが持ち込んじゃったことが僕はよくないと思う」という。
「もともと兵隊じゃない人でも『銃を持って戦う』と言って国を守ろうとしているじゃないか。その中で『民間の施設も使うよね』となった。それが『人権侵害である』と価値判断まで持ち込むと『ウクライナは悪い』となってしまう。ただ『事実がありますよ』の報告だけに留めなかったことが、僕はアムネスティの失敗だと思う」
ジャーナリストの堀潤氏は「基本的には、犠牲になっている一般市民への支援や思いが軸だ。両国の政府、軍の行いがどうなのか、それを考える前に一般市民への関心を忘れてはいけない」とコメント。「評価の前に、戦争状況の中で多くの人たちが命を失い、犠牲になっている事実に対して、人権団体としてどのようにサポートするのか。これを世界に訴えていくべきだ」と述べた。
佐々木氏は「アムネスティ・インターナショナルが客観的であろうとするあまり、侵略者と侵略された者、要は侵略者と被害者を同列に扱ってしまって、誤った等価性みたいなものを作ってしまったのが今回の原因なのかなと思っている」と指摘。山添氏は「アムネスティはロシアの人権侵害にもいろいろ言っていて、ウクライナのことも言っている。ウクライナにもそういう問題があると知った上で、やはり全体としての問題は『ロシアにある』と、我々が気を付けて見ないといけない」と話した。
これらを踏まえて、司会のテレビ朝日・平石アナウンサーが「大きな悪の中に小さな悪が存在する可能性もある」とコメント。「小さな悪だといって目をつぶっていいわけではない」と述べた。(「ABEMA Prime」より)
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