「世界の昔のことまで知る必要があるの?」の声も 戦争や歴史をどこまで深く学ぶべき? 竹中平蔵氏「近代史から始めるなど教育を変えるべき」
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 6月にドイツで行われたコミックマーケット。参加者たちが好きな漫画やアニメなどのコスプレを楽しんだが、中でも大人気だった『東京リベンジャーズ』のコスプレが物議を醸した。

【映像】「ハーケンクロイツ」知ってる? 渋谷の若者の回答

 原因となったのは、特攻服などに使われている「卍(まんじ)」の文字。仏教で徳の象徴と言われ、家紋や地図記号としても広く使用されているが、これが第2次世界大戦中にナチス・ドイツが用いていた鉤十字の紋章「ハーケンクロイツ」を想起させるという。

 ハーケンクロイツについて渋谷の若者に聞いてみると、「ハーケンクロイツ? 知らない」「カーテンクロイツ? 州の名前? 都市? わからない」「学校で学んだ記憶はない」といった答えが返ってきた。

 戦後生まれが87%となる中で、歴史をどう伝えていくのか、またどこまで学ぶべきなのか。『ABEMA Prime』では15日の終戦の日に議論した。

■竹中平蔵氏「歴史教育の中身は変える必要がある」

 ネット上であがる「自分の家系図さえ知らないのに、世界の昔のことまで知る必要があるの?」「日本史と世界史って両方知らなきゃいけないの?」「学ぶ必要がある時代だけ勉強したい」といった声に対して、小泉内閣で経済財政政策担当大臣などを務めた竹中平蔵氏は、教育課程から見直す必要があると指摘する。

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 「学校で習った歴史は面白くなかった。一方で、アメリカで子どもが歴史の授業を受けている時に持っていた、日本より4~5倍の厚さがある教科書を読んだときは面白かった。日本だと“何年に何が起こって、何年に鎌倉幕府ができた”という年表ばかりで、“なぜそれができた?”が書かれていない。実際には、歴史を動かしたロジックがあり、動かした人がいるわけだから、それを教えるような内容にすれば違ってくると思う。例えば近代史的なところから始めるとか、歴史教育の中身は変える必要があると思う」

 大学受験予備校で世界史を教える茂木誠氏は「ほとんどの生徒が寝てしまうような高校で、アンケートをとったら、ある生徒が『昔の話はやめてくれ』と書いていた」と紹介。一方で、2022年度から始まった歴史総合について「現代から教える形に、今の高校1年生からはなった。これからは期待できるだろう」と補足する。

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 さらに、「8月15日ということできょうの現代史では、最初はみんなで起立して黙とうから始めた。一番教えたいことは、二度と負けないためにどうするか? なぜあの負け戦をやってしまったのか? どこで止められなくなったのか? ということを学生に問いたい。パリ講和会議でどうした方がよかったのか、あるいは満州事変の時にどうすべきだったのかと。今の日本の多くの問題は負けたことにあると思う。未だに日本がアメリカのまるで保護国のような状態で、外交路線も全部アメリカの言いなり。一体どこを向いて政治をやっているのかと思う」と続けた。

■柳原伸洋氏「アウシュヴィッツという名前が重要なのではない」

 では、ドイツではどのような歴史教育がなされているのか。ドイツ在住の東京女子大准教授でドイツ・ヨーロッパ近現代史が専門の柳原伸洋氏は次のように話す。

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 「ドイツでは近現代史を重点的に学ぶ。それはナチスの歴史だが、単に恐怖や独裁、虐殺だけではなく、民主主義が今の憲法では一番重視されていて、変えることができない要素だということを学ぶ。フランス革命以降、民主主義がどのように現れて、もちろん血なまぐさいこともあったが、ナチスがどう破綻していくのか?そして民主主義がもう一度どう出来上がっていくのか。それを学びながら、議論させることが教育で重要になっている」

 若者の歴史への考え方や熱量はどれくらいあるのだろうか。

 「移民や難民の人が多い中で、今では“アウシュヴィッツ”という名前を知らないという人たちも多く、そういうアンケート結果も出てきている。しかし、その名前は重要というよりは、民主主義が破壊されたらどうなるのか?というところ。基本的にどの学校に通っても収容所跡などの展示施設は必ず回る。それによって歴史嫌いの生徒が出てくるのは、おそらく日本とも同じような状況だろう」

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 戦争を知っている人が減ってきているのは当然ドイツも同じだ。今後、どのように次の世代に繋げていくのか。

 「日本は受験があるのでまだ時間はかかると思うが、改革されていくだろう。実はドイツの場合は受験がなくて、基本的に高校の卒業資格があれば大学に行ける。ギムナジウム(日本でいう中高一貫校)では、カリキュラムが決まってないので議論が重要になってくる。議論をすると、“戦争が好きだ・嫌いだ”とか、“戦争をやった方がいい”という子もいるわけだ。しかし、5~10人集めれば、“私は戦争から逃げてきた移民の子どもだ”とか、“うちのおじいちゃんはアウシュヴィッツの中で死んだんだ”という話が出てくる。個人がどのように戦争の中で翻弄されるのか、自由がなくなるとはどういうことなのか?というのを、その議論の中で考える。

 実はドイツでは日本ほど体験証言者や証言集はたくさん出ていない。西と東に分かれたわけだが、西側は特にフランスやイギリスと仲良くしていかないといけない。法的、政治的なレベルではドイツはやはり加害国で、証言者が話をしても“あなたはナチに協力していたんでしょ”という立場になり、正直日本よりは居づらさがある。最近は日本と同様に証言者が減ってきているので、証言集がたくさん出てきているが、それは歴史を学ぶための、あるいは歴史を考えるための素材・材料として使われることが多い。少し冷たいかもしれないがそういう形になる」

(ABEMA Prime)

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