安倍元総理の国葬、政府の“黙とう検討”に反対の声 堀潤氏「岸田政権は本当にやりたいのか? なぜ説明に手を抜くのかと問いたい」
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 9月27日に日本武道館で執り行われる、安倍元総理の国葬。15日、政府は国葬に関する野党からの質問に対し、答弁書を閣議決定。弔旗の掲揚や黙とうの弔意表明の在り方については「現在検討中」とし、官公庁や企業の休業、学校の休校、歌や音楽などのイベント、番組の自粛を要請することについては「現時点では考えていない」としている。

【映像】吉田茂元総理の国葬の様子(1967年10月)

 Twitterには、「国葬自体に納得していないのに、さらに黙とう?」「学校で黙とうといわれたら子どもたちは拒否できないよね」「黙とうの要請以前に説明すべきことがたくさんあるのでは」と、国葬実施に多くの反対意見もあがる。

 今月下旬にも国会で閉会中審査が行われる予定だが、もし国から黙とうなどの協力要請があった場合、自治体や企業、学校、そして私たちはどう受け止め、対応すればいいのか。

■黙とうは個人の自由?

 政治学者で神奈川大教授の大川千寿氏は「慎重な岸田政権の姿勢が見てとれる。現在は価値観が極めて多様化していて、人をどう弔うかという考え方もさまざま。今回の国葬、あるいは安倍氏に対する評価を巡っては国論が二分していて、政権の支持率にも響いている状況だ。“なるべくゆるやかな要請内容に”ということかなと思う」との見方を示す。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「行為だけを求められるのはおかしい」とした上で、「なぜ悼むのか、なぜ私たちがともに時間を過ごすのか、その理由を岸田政権は語るべきだと思う。安倍さんであろうとなかろうと、公然の場で、一方的な暴力である人の行動が抹殺されてしまうということに対して、私たちはもっと議論しないといけない。今回の事件は日常の中に取り込まれすぎていないか、平和ボケだな、という思いもある」と指摘。

 リディラバ代表の安部敏樹氏は「黙とうはするつもりでいるが、単純に個人の意思決定としてそうするだろう。少なくとも国に要請されてする必要はないので、一人ひとりが自由にすればいいのではないか。例えば、戦争があって亡くなられた方がいる時に、自国の兵士だけの死を悲しむのかというと、そういうことではないよねと。交戦国であったとしても、相手国の兵士や亡くなった方全体の死を悲しみ、その意を表すということをしたいと思う」と述べた。

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 大川氏は「15日の終戦記念日の12時に黙とうしたが、周りを見るとけっこうお話しをされていたり、普通に歩いている方もいらっしゃった。現実的にはそういう形になるだろうし、今のこの社会においては自然なのかなと思う」と当日の状況を推察した。

■堀潤氏「岸田政権に“本当にやりたいのか”“なぜ説明に手を抜くのか”と問いたい」

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 吉田茂元総理の国葬の際、政府は「弔意表明」について、各省庁に対して弔旗の掲揚、葬儀中の一定時刻に黙とう、公務に支障ない範囲での午後休業、公行事・儀式・歌舞音曲を伴う行事の差し替えを要請。また、各公署や学校、会社、その他一般にも同様の方式で哀悼の意を表するよう協力を求めた。

 吉田元総理の国葬が行われた背景として、堀氏は「当時の佐藤栄作総理が直接語られないにしても、昭和天皇から吉田氏の貢献に対する思いを内々に引き出した上で、秘書会の皆さんが内々に各議員のところを回って内諾を取り付けたと。“陛下がこのようにおっしゃっているんだ”ということを錦の御旗に、“立法化されていないけれども国葬なのだ”という空気を作り出していった」と説明。その上で、「岸田政権に“本当にやりたいのか”“もっとできる根回しがあるのではないか”“なぜ説明に手を抜くのか”と問いたい。そうでないと、国民を二分するだけで、悼む心にも優劣をつけさせられるのかと思うと悲しくてしょうがない」と訴える。

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 大川氏は国葬には賛成であるものの、弔旗や黙とうの強要には反対している。「岸田政権は早々に国葬を決定したわけだが、確かに説明が不十分だというのは事実としてあると思う」としつつ、「個人の自由が可能な限り尊重されるのは極めて大切な民主主義の美徳で、そこで懸念を抱かれている方も多い。やはり個人が何かを強制させられるのは避けなければならず、自分自身が良心に従って行動するという決意を強く持つことがとても重要だと思う」と述べた。

 吉田元総理の国葬の日、黙とうの時間にはNHKや民放が一斉に中継をしたほか、追悼番組や音楽演奏が多く放送された。

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 堀氏は「誰が殺害されたのか以上に、何が脅かされたのかということをしっかりと共有するような発信をしてほしい。これを見誤ったままいくと、それこそ“安倍さんが”という主語で語られるかたちでこの日を迎えることになる」「安倍さんの生い立ちや成果などを中心にしたVTRが作成されて、コメンテーターが“安倍政権とはなんだったのか”ということを語るのだろう。それよりももっと大きな、この国の社会基盤がどのように成り立ってきたのかなどが議論された上での故人への悼みなのかと思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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