世界的に続く半導体不足や、中国のゼロコロナ政策の影響を受け、自動車の生産が需要に追い付かず、一部の中古車価格が新車を上回っている。
【映像】「アルファード」「カローラ」も…出荷表から分かる納期遅れ(画像あり)※2:05ごろ〜
一体、中古車市場に何が起こっているのだろうか。テレビ朝日・経済部の平田淳一記者はこう話す。
「今まで中古車と言えば『新車より安い』といった理由で購入が当たり前でしたが、今は、その逆です。というのも、今はまず新車が手に入らないのです。全体的に、3カ月~1年程度の納期待ちとなっていて、特に人気の車種で、ミニバンのアルファードや、SUVのハリアー、カローラクロス、セダンのカムリなどは、生産の準備が整っておらず、受注を停止している状態です」(以下、平田淳一記者)
市場では早く欲しい人が、新車に近い、より良い状態の中古車を求めて殺到しているという。
「かたや新車の生産はストップしている状態なので、中古車も市場に回らない悪循環が起きています。この需要と供給のバランスが極端に崩れてしまっていることから、これまでにない中古価格の高騰が起きているのです」
トヨタの人気車種「ランドクルーザー」は、アジアや中東など海外の需要が高く、円安の影響もあり、価格は2倍以上高騰。新車の納期は4年先だという。
「ランドクルーザーは、もともと人気のあるSUV車ではありますが、この異常な高騰の原因は、9割が海外だと言われています。アジアや中東など、このランドクルーザーはとても需要が高く、その上、海外でも新車が供給不足のため、日本にある新しい中古車を求めて、積極的に買いが進んでいます。市場関係者を取材すると『海外の輸入業者が買い漁っている』と話していました。また、円安もそれに拍車をかけています。これは裏話になりますが、一部の輸入業者は、2000万円でランクルを購入し、5000万円で政府や軍の高官、民間のお金持ちに売っているといった事例もあるほどです」
中古車価格が高騰したそもそもの発端について、平田記者は「世界的な半導体不足と、コロナ禍による中国・上海のロックダウンだ」と指摘する。
「部品の調達ができず、車の生産ラインが大打撃を受けたことが影響しています。最近、人気のEV=電気自動車やハイブリッド車は、半導体を多く使います。これが供給されなければ、車は作れません。また、上海は車の生産や部品の製造に関して、世界的に重要な拠点となっています。トヨタの車は、7割が購入部品で、これらを集めて一つの車が完成します。部品が一つでも欠けると車はできません。こうした、複数の要因が重なって、新車の生産台数が少なくなり、品薄となっています」
新車の生産台数が減り、高騰していく中古車価格。市場では、どのような影響が出ているのだろうか。
「中古車でも価格が上がれば、購入を控える人も当然います。一方、この状況下で、自分が持っている車の価値が上がり、売りに出す人もいるんです。例えば、人気車であれば、3〜4万キロ走った後でも、新車と同様か、それ以上の価格で買い取ってくれることがあります。もちろん、新たに買う車も高くはなりますが、値崩れしない限り、このサイクルをずっと続けることができて、新たな費用負担なしでカーライフを回せることになります」
高騰が続く中古車価格。市場関係者によると「あと1年はこの状態が続くのではないか」といった声もあるという。
「もっと厳しい見方としては、半導体不足や部品の供給網の混乱に対し『未だ解消の目途はたっていない』と、さらに長い期間、影響を受け続ける可能性が指摘されています」
中古車販売業者は、この事態をどのように受け止めているのだろうか。
「中古車を販売する会社も、中古車がなかなか市場に出回らない状況で苦労しています。買取りや下取りが増えるのは、自分の持ち駒が増えますし、お客さんも選択肢が増えます。一定の店では上手く売り上げや利益を出している印象です。これもある意味、生き残るための企業努力ではあると思います」