“ウイグル問題”で国連が新たな報告書「奴隷状態に相当する可能性」 父親が連行された男性「危険はあるが誰かが証言しないと」
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 「農業、製造業などの強制労働が課されていると結論付けるのが妥当。人道に反する犯罪である奴隷状態に相当する可能性がある」

 16日、国連の小保方智也特別報告者が新疆ウイグル自治区を巡りこのような報告書を公表。ウイグル族への強制労働や、職業訓練施設での過度な監視・拘束・暴力などの可能性を指摘した。報告書は被害者の証言、シンクタンクなどの報告をもとに作成しており、今後、国連人権理事会で議論されることになる。

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 これまでも多くの指摘の声が上がってきた、中国でのウイグル族弾圧問題。アメリカがジェノサイドとして認定しているほか、フランスの下院でもジェノサイドにあたるなどと非難決議を採択した。さらに、人道に反する罪を犯しているとして、トルコに住むウイグル族の人々が習近平国家主席ら100人を刑事告発する事態も起きている。

 そのような中、実体験を発信する1人の在日ウイグル男性がいる。父親が「騒乱挑発罪」で実刑になり服役中だという、ムハラム・ムハンマドアリ氏(29)に話を聞いた。

■ムハラム氏「“誰かが証言しないと”という思い」

 2017年に父親が連行された後、親族約10人が次々と拘束。2018年に来日したムハラム氏は、当時の状況について次のように話す。

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 「私はトルファン出身。その村で父は宗教の知識があり、イスラムのやり方で葬式や結婚式などを昔から担当してきた。そういう人に対して、中国政府は定期的に集まらせて政治の勉強をさせたりしていて、私たちはいわゆる“会議”と呼ぶが、当日はその会議に行ったまま帰ってこなかった。

 拘束されてから7カ月経っても情報がなく、生きているだろうかと心配していたところ、2017年10月に突然家に手紙が送られてきた。“父が騒乱挑発罪で6年の懲役になった”と。どこで裁判をやったのか、裁判があったら私たちにも弁護する権利があるのにそれも無視されたというか、結果だけ知らされた」

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 父親や親族が連行された理由として宗教的な知識を持っていたことをムハラム氏はあげるが、中国政府に対して反体制のような姿勢はとっていなかったという。

 「モスクに通って、ブドウ畑で生計を立てている、普通に生活している人だ。金曜日のお祈りに、父はイマーム(指導者)として宗教的な文章、例えば“良いことをしなさい”という文章を読んだりしていた。モスクで話す内容について中国政府から直接干渉はされないが、2014年になって中国政府を称えたり褒めたりするような内容のものを読むようにと、木曜日の夜に家に送られてきた。ただ、政府に対して不満を言ったりはしていない」

 父親や親戚は拘束後、口々に「中国共産党のおかげで悪い思想の病気が治った」という発言をしていたそうだが、どう受け止めたのか。

 「この発言は私が受け取った手紙の中にあった。自分で書いたものではなく、こういう内容で書くように言われたもので、本音ではないだろう。ただ、家族と連絡をとる手段がないので、これは自分が生きていることを知らせるチャンスだということで、手紙を出したのかなと思う」

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 日本で発信を続けることで危険は及ばないのだろうか。ムハラム氏はその思いを語る。

 「2019年、たくさんの親戚が収容された中で、私は運良く日本に来られた。施設の中の様子や出てきた人の証言を聞いて、私が発信しないとその人たちがもっとひどい目に遭うと思って活動を始めた。新疆の家族には、家に警察が入ってきて私と連絡させないようにしたり、妹の銀行口座をメモして送金を受け取れないようにしたりということが起きている。危険はあるが、これは私自身だけの問題ではない。中国政府は自分たちが経済的に強いということから、アフリカやアジアの国に対して外交的に強く出てもっとひどいことになるので、“誰かがやらないと”という思いでこの活動を続けている」

■国連が新たな報告書「とても重い指摘」

 国連の報告書について、著書に『貧者を喰らう国 中国格差社会からの警告』などがある東京大学大学院教授の阿古智子氏は「このようにはっきりと強制労働、奴隷化という言葉で中国の問題を指摘したのはとても重いことだと思う」と指摘。

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 ムハラム氏の父親らのように連行されるケースは多く見られることだという。

 「新疆ウイグル自治区は区域自治法というものがあって、少数民族が住んでいる区域では信仰の自由なども本来は認められるはずだ。最近は、私たちが日常的に神社に行ったりお葬式をしたりするようなことだけでも、何か“悪い病気”だと言って、思想的に変えなければいけないということで収監される。中国は今、共産党政権自体が宗教のリーダーのような感じで、そのリーダーよりも尊敬される宗教のリーダーがいては困る。宗教を信仰するよりも、共産党の中国政府のそういう考え方を信じろということだ」。

 中国外務省の汪文斌副報道局長は17日、「特別報告者は、米国をはじめとする西側諸国や反中国勢力によって流された新疆に関するうそや偽情報を信じることを選択した」とコメント。新疆での強制労働を否定し、労働者の権利保護に取り組みを強調した。

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 国際社会には、ウイグル問題は中国の「内政問題」だとして、他国が人権を口実に干渉することに反対の意を示している国も多くある。では、日本を含めどのように対応していくべきなのか。

 「アメリカだと新疆の製品を使うことはできないという法律もできているが、日本は欧米諸国に比べて対応があいまいというか、決議はぼやかしていて、具体的な制裁もしていない。内部から流出する情報を見ると、状況がわからない中で収容されている方もおそらくたくさんいて、何か圧力をかけることは大事だと思う。一方で、“新疆でも経済活動を行っていかなければならない。圧力をかけすぎるのはどうか”という見方もあるが、労働者が強制労働で幸せに働いていないのであれば、“社会主義国のはずなのに労働者の権利をちゃんと守っていないではないか”と。内政干渉ではなく、国際的にルールとして労働者の権利を守ることが決められているということを、日本としてもしっかり言うべきだと思う」

(『ABEMA Prime』より)

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