今年7月に創立100周年を迎えた日本共産党。過去には暴力による革命の可能性が指摘され、公安調査庁が今なお破壊活動防止法に基づく調査対象団体としている。
一方、同党の“若手のホープ”山添拓参議院議員(37)は同月の参議選で東京選挙区(定数6)から出馬、蓮舫氏(立憲)や生稲晃子氏(自民)を抑え3位で当選。ANN出口調査では20歳代の投票先でトップ、30歳代でも2位、また、無党派層の投票先でも2位の支持を得ている。
全当選者のうち最年少でもある山添議員はこう語る。
「自公政権に対して正面から向き合い、変えようと取り組んできた政党で、野党共闘の一つの柱としての役割も果たしてきた。同時に、この政治を変えようという役割についてご覧いただいた方が多かったのではないか。とりわけ東京は学生も含む現役世代が多い。そこに届く言葉、方法で政策や実績を伝えることを意識してきたつもりだ。例えば高過ぎる学費の問題を何とかしてほしい。あるいは正規であれ非正規であれ給料が上がらない社会になっているので、底上げには最低賃金の引き上げが必要だ。そういう身近に感じている問題で訴えかけ、変える展望があることを示した」。
他方、共産党の議席数は漸減傾向にあり、政党助成金や企業・団体献金を受け取らず、党費や『しんぶん赤旗』購読料などが活動資金にとって党員の減少も向き合わなければならない問題だ。
「まず、参院選で党として2議席後退したことは大変悔しく、残念な結果だと思っている。今回の参院選では、“去年の総選挙での野党共闘はダメだった、共産党と共闘するなどあり得ない”と、私たちからすれば“共闘攻撃”を受けた。また、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、“日本は大丈夫なのか。9条で平和は守れるのか”と、9条を大事にしようと訴えている日本共産党にとっては逆流もあったと感じている。
こうしたことに抗いながらの、大変困難な戦いだった。もちろん党の自力の問題、世に広げるための取り組みが十分でなかったというところもある。来年には統一地方選挙があるが、これに向けて参院選の教訓をどう生かしていくのか。今の情勢をどう押し返していくのかということが問われている。ただ、野党共闘で政治を変えようという流れ自体は止めるわけにはいかないし、その方向をさらに力強くするための総括も党内で行ってきた。
そして、党員の問題は死活的だ。歴戦の党員や後援会の皆さんの頑張りを繋いでいかないと、地域や職場に広がっていかない。ただ、若い世代に向けた集いをやっていると、共産党に関心がないわけではないし、選挙で繋がった方々もたくさんいる。そういう方々に対して、仲間になって一緒に政治を変える主体になろうと一生懸命に呼びかけている」(山添議員)。
■「私たちには党の名前に込めている理念、思いがある。」
とはいえ、2000年以来、20年以上にわたって党を率いてきた志位和夫委員長「これから先100年もこの名前で戦っていくことになるだろう」と述べるなど、旧来のイメージや変わらなさ、“保守性”が新たな支持者の獲得の足かせになっているのではないか。
フィリピン出身の実業家・薄井シンシア氏も「私自身は日本共産党にはクリーンなイメージを持っている。しかし客観的に、そしてこれが企業のビジネスだと考えた場合、今の名前では市場、消費者に選んでもらえない。そして業績が伸びてないのに、なぜ経営トップが入れ替わらないのか。世の中を変える前に、まず自らが変わらなければいけないのではないか」。
テレビ朝日の平石アナも「『しんぶん赤旗』も含め外部への指摘は鋭いが、逆に指摘されたことについてはなぜ聞かないんだろう」「党の役職についても、委員長や書記局長などと言われても、一般の人にはどのくらいのランクの肩書なのかが分からない」と疑問を呈する。
山添議員は「いわゆる党員、議員が1人1票でという仕組みとは違って、まず党大会に参加した代議員から中央委員会を選び、その中から幹部会、さらに常任幹部会を選んでいく。そして常任幹部会で委員長が選ばれるという仕組みだ。こうした人事や体制のありようについては党大会の場でその都度確認をしているし、議論の結果は全てオープンになっている。
もちろん、体制という意味では私が議員4年目で常任幹事会のメンバーになったし、世代的や男女のバランスも考慮しながら幹部を育てていくことはかなり意識して取り組んでいる。すでに地方議会では世代交代が進んでいて、都議会などでは若手の女性が大変多いという状況になっている。志位委員長が長い、変わらない、ということだけが批判の対象になっているということは、やろうとしていること、掲げていることについては批判の余地はないということじゃないか」と説明。
さらに党名についても、「名前を変えた党が伸びてきているわけではない。私たちが“共産党”という名前を変えるのは、目指すべき社会像としての社会主義や共産主義を捨てるときだ」と反論する。
「私たちには党の名前に込めている理念、思いがある。そして、それが人類社会の進んでいく道に必然的になるだろうと考えている。つまり、今の資本主義の世の中がいつまでも続くわけではない。こんなに命や環境を粗末にするような社会は人類社会の終着駅ではないという確信を持っているからだ。
やはり今の世の中は儲け第一で、様々な犠牲も生まれている。私が弁護士として取り組んできた過労死事件も、人を殺してしまうまで搾取する問題だ。あるいは環境を壊すことでの気候危機の問題もそうだ。格差・貧困や環境破壊をもたらしていることの根本には資本主義の仕組みというのがあって、それは克服されなければならない。
ただし、明日から共産主義にする、というような話ではないし、そこまで行った国というのは歴史上どこにもない。資本主義が十分に発達し、その中で自由や民主主義、人権についての改革がきちんと行われ、生産力が高まっていく。そして、その次のステップへと進んでいくだろう、進んでいかなければならないだろうということだ。北欧型の福祉国家のような、暮らしや働き方、教育や福祉を充実させられる社会のあり方は今の資本主義の中で枠内でも十分可能だ。まずはそういう方向に変わっていくべきだということだ。
一方で、共産主義といえば私有財産の否定、あるいは民主主義を否定し、独裁国家にするものだといった誤解も生んできた。しかし、そのイメージというのはソ連や中国のものであって、私たちはそれが共産主義、社会主義だとは考えていない。“革命”という言葉についても、民主主義的な議会を通じた改革を進めていって行うものだと考えている。
共産党という名前はイメージが悪いから変えるべきだというのは、共産主義のイメージが悪いということが前提にある。そうでなければ、別に変える必要はない。もちろん、みなさんがおっしゃるような党内の改革はしていかないといけない。それが無くなれば、社会を変えるという主張の信頼にも関わる。寄せられる意見については共有もしてるところだ」。(『ABEMA Prime』より)
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