“1型糖尿病”は小児でも発症も…周囲からは「贅沢病」の差別や偏見 2型の当事者とは軋轢? 病名変更の必要性は
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 患者数1000万人、成人の5、6人に1人がなると言われている「糖尿病」。実は大きく2つのタイプに分かれており、世間では患者数の9割を占め、遺伝や体質、生活習慣などが原因で血糖値が高くなる「2型糖尿病」が知られている。

【映像】2歳で発症も…当事者に聞く1型糖尿病

 一方、免疫の異常などで血糖値を下げるインスリンが体内で作れなくなるのが「1型糖尿病」だ。高血糖状態になると意識を失ったり、最悪死に至るケースも。

■1型糖尿病は小児でも発症も…「贅沢な生活してたんでしょ」などの偏見

 1型糖尿病患者が特に気を付けなければいけないのが食事だ。当事者である大学生の原田みなみさん(21)は、好きな時に好きなものを食べるのが難しい。高血糖状態が続くと、血中の糖が血管を傷つけ、動脈硬化などのリスクがある。

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 食事や運動など生活習慣の改善で血糖値をコントロールすることはできないため、少量の血液を使い、食事の前に必ず血糖値を測定。そこで出た数値をもとに、細かく調整したインスリンを自分で注入してコントロールする。インスリンを打てば基本的にいつでも何でも食べられるそうだが、外食時は周囲に見られないよう隠れて注射。現在の医学では完治せず、生涯注射を打ち続ける必要がある。

 小児から思春期に発症することが多いとされる1型糖尿病。原田さんの発症は9歳の頃で、低血糖で意識不明になったことも。判明したのは、「よく水分をとるのと、トイレが近くて夜中に起きたりして、お母さんが異変を感じて病院に連れて行ってくれた」ことから。学校で友達は理解を示してくれたものの、偏見や不便さも感じていたという。

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 「給食前に注射を打ちに保健室まで行かなければいけなかったので、給食当番になると早めに授業を抜けたりしていた。そうすると、『サボっている』とか言われたり。インスリンを打ったり補食をしたりすれば低血糖も高血糖も防げるが、先生からも『体育は見学しましょう』『プールはダメです』などと言われてしまい、周囲の理解がなかった。友達からも『贅沢な生活してたんでしょ』という偏見があった」

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 日本IDDMネットワーク専務理事で、自身も8歳で1型糖尿病を発症した大村詠一氏。「多飲多尿というのは全く一緒で、小学校2年生が夜中の1~3時にトイレに起きては水をがぶ飲みするのはおかしいということで、誕生日の翌日にわかった。それから毎日、1日4回注射を打つ。1回でいいと思われている方も多いが、1型糖尿病の場合は24時間管理する必要があるのと、食事の度に打っているので、1日最低4回は必要になってくる。私は緊張したり、興奮したりすると血糖値が上がるので、微調整はかなり難しい」と説明。

 治療法の一例として、注射を打つ「強化インスリン療法」の他にも、機器を用いて設定した速度でインスリンを持続的注入する「インスリンポンプ」があるが、「インスリンポンプは設定した速度で、0.025単位のごく小さい量で調整できるメリットがあるが、毎月の医療費が上がってしまう。高いものだと、注射の場合と比べてひと月あたり2万円ほど上がってしまうので、その負担から選べない人もいる」という。

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 生活習慣も影響する2型に対し、1型は年齢を重ねて症状が悪化していくことはあるのか。「私たちは命を繋ぐため、合併症のリスクを抑えるために対症療法でインスリンを打っているので、治る方向には進まない。なので、移植の方法や画期的な再生医療などが進むように、私たちの団体では日本の研究者への助成を行っている。ただ、日本人の5、6人に1人は2型糖尿病を発症するリスクがある遺伝子を持っているという研究データもある。今は贅沢病と言われていた時代よりはるかにたくさんの栄養をとっていて、生きているだけで2型糖尿病になりやすい。そのことを一般の人も気をつけていけるように、もっと認知度を上げていきたいと思う」と述べた。

■1型と2型の当事者で軋轢? 病名変更の必要性は?

 Twitterでは、1型の患者から「2型糖尿病=生活習慣病という考えで1型の印象が悪い」「生活習慣を見直せば症状が改善されるのは羨ましい」、2型の患者から「不摂生でなく遺伝や体質が原因の患者も多いのに」「インスリンを打てばなんでも食べられるくせに」「1型と2型の患者の間に壁がある」といった声があがる。

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 大村氏は「5月に神戸で開催された学会でこのスティグマ(負の烙印)、糖尿病に対する偏見をなくそうというセッションがあった。その中で生活習慣病という名前がセンセーショナルで、“皆さんが自分の生活を変えるんだ”という行動変容につなげたいという思いがかなり強くあったと。それが逆に今はネックになっているんじゃないか、という提案があった。そういう意味では、“あなたは今どんな治療をしているの?”“どんな苦しみがあるの?”“どんな手助けがあればもっと生きやすいの?”というところで、病気にとらわれず相互に理解するコミュニケーションができたらなと思う」と述べる。

 生活習慣病というイメージで周囲から向けられた目について、「私が発症した小学校3年生の時、テレビなどで“生活習慣病に気をつけましょう”と言って糖尿病は大きく扱われたが、そこから学校で言われるようになって“なんで生活習慣病って言われなきゃいけないの”と思っていた」と原田さん。

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 大村氏も「私は生活習慣病と言われる前の、成人病だと言われる時代に発症した。“なんで子どもがなるんだ”というところから、田舎だったこともあって『呪われている』『祟られている』と言われていたということを、成人になって母からポロッと明かされた。辛い思いを家族にさせていたんだということがショックだったので、そういうことがなくなればいいなと思う」と訴えた。

 日本糖尿病学会は、糖尿病患者に対する偏見や差別を除去するための手段の1つとして病名変更の可能性を検討しているが、そのことに対してはどう思うのか。

 大村氏は「糖尿病という名前が共通していたからこそ、多くの患者さんが使っているエビデンス、治験のデータが使える。私たち1型糖尿病患者が使える薬は、2型糖尿病の患者さんがたくさん治験に参加してくれたからというものもある。すごく恩恵を受けているところもあるので、名前を切り分ければいいというものではないのではないか。逆に2型糖尿病で差別を受けている方、偏見を受けている方の声も聞きながら、彼らが本当に病名を変えたいのか、どうしたいかをもっと寄り添って聞きたいなと思う」との見方を示す。

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 原田さんは「私は以前、『1型と2型で名前を変えたらいいのに』と言っていた。今は名前を変えるというよりは、糖尿病という名前に抵抗がある人、1型2型みんな共通して使える通称名みたいなのがあれば、小学生や中学生、高校生でも言いやすいのかなと思う」との考えを述べた。(『ABEMA Prime』より)

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