心の病の早期発見や予防に…40年ぶりに高校で“メンタルヘルスリテラシー教育”が復活 柴田阿弥「過食して吐いても不調な時は気づけない」
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 毎年増加傾向にある精神疾患において、約75%が10代から20代前半までに発症するという。社会へ出る前にこそ心の問題を学ぶ機会が必要だと、この春に教育現場である取り組みが復活した。

【映像】“心の病”4つのサインと予防法3つ

 高校の授業で40年ぶりに復活したのが、「メンタルヘルスリテラシー教育」。精神疾患に関する正しい知識をつけることで、早期発見や予防に繋げようというものだ。日常生活に潜むストレスの要因やその対処方法、具体的な精神疾患の特徴などを学ぶ。

 しかし、どれだけ知識を学んでもなくならないのが、心の問題をタブー視する風潮。渋谷の若者に聞いてみると、「(こころの問題は)センシティブなこと」「聞いてあまり気分がよくなるものじゃないから、話すのに気を遣う」「(相談する)場所がわからないし、言っていいのかどうか、相手がどう受け取るかとかで悩む」「(相談すると)メンヘラ扱いとか、『あの子病んでるから関わらないほうがいい』とかある」といった声が聞かれる。

 9月に入り多くの学校で新学期がスタートする中、1日の『ABEMA Prime』は心の問題を議論した。

■メンタル不調から自殺未遂を経験「教育を受けられていれば…」

 メンタルヘルスリテラシー教育が復活した経緯について、静岡県立大学看護学部の篁宗一教授は次のように説明する。

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 「1978年に教育のかたちが詰め込み教育からゆとり教育へ変化した。それ以前にも精神疾患の記載はあったが、差別的な表現が含まれてテキストに載っていたようだ。そこから削除されて、疾患については40年以上触れずにここまできた。今年度から高校で扱われるようになったのは、予防することの意義が非常に大きいとわかり始めたから。1990年代後半から特に海外で予防するための教育が広がり始めて、2000年代に入ってから日本でも始まった。そこからの20年間で、メンタルヘルスのリテラシー教育が各地で行われて、ある程度の効果が認められてきたということが今回の改定に繋がったのではないか」

 大学で心理学を専攻、コロナの影響でメンタル不調になり自殺未遂を経験した橋本なずな氏は「教育を受けられていれば何か対策できたのではないか」と自身の体験を振り返る。

 「メンタルの不調をきたしたきっかけは、当時交際していたパートナーとの何気ない衝突。ただ、その後にカウンセリングや精神科、心療内科での治療を経て思ったのは、それまでに感じてきた積もり積もったストレスが原因だったということ。メンタルヘルスに偏見などはなかったが、自分自身がそうなった時の対処法はわかっていなかった」

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 精神科などを受診することに抵抗感を覚える人は多くいるが、実は金銭的なハードルもある。精神科と心療内科は保険適用となる一方で、カウンセリングの多くは保険適用外。1時間のカウンセリングで6000円~1万2000円が相場だといい、橋本氏も「費用面で通院を続けることが難しかった」という。

 心理的なハードルから受診が遅れてしまうことについて、篁氏は「精神病の未治療期間(DUP)という指標がある。これが長ければ長いほど予後が悪くなると言われているので、できるだけ早く治療することが大事だ」と警鐘を鳴らした。

■柴田阿弥「過食して吐いても“自分は不調だ”と気づけなかった」 心の病のサインは?

 フリーアナウンサーの柴田阿弥は、自身もメンタルヘルスに不調をきたしたが、それに気づけなかった経験があると明かす。

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 「4年ぐらい前、ストレスから過食して吐いていた時期があった。でも、普通に仕事をしていたし、番組でやいのやいの言っていたので、“自分は不調だ”とは全然思っていなかった。熱が出るわけでもないし、こういうものかな? みたいな。だんだん肌が荒れてきて、皮膚科の先生が『吐いてるの?』と気づいてくれた。それから精神科に行って薬をもらって飲んだら本当にすぐよくなったので、内科に行くぐらいの感じでカジュアルに受診できるようになるといいと思う」

 心の病のサインはどこに表れるのか。篁氏は「日常生活の中の変化に気づくことが重要。例えば、よく眠れなくなってしまうとか、食生活の変化で食べすぎてしまうとか、真逆のパターンで食べられなくなってしまうということもある。あとは気分の変化で、キレやすくなるとか、衝動的になるということもある。それらを自覚できない場合、周りが客観的に伝えてあげることも必要だ」と説明。

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 柴田はそれらすべてに当てはまっていたとした上で、「でも、周りの人には元気だと思われていた。自分でなかなか気づきにくいという人は、自分でリテラシーを上げていくしかないのだろうか?」と尋ねる。

 篁氏は「自分で気づければいいと思う。今回、教育で履修することになり、対処能力を全体的に上げていくことで、行動が改善して予防に繋がっていくと思う。メンタルヘルスの問題というのは、だいたい20歳前後にピークを迎えると言われている。中学生と高校生を比較してメンタルヘルス教育を実践する前に調査を行ったことがあるが、高校生になってくるとイメージができあがってしまっていて、遅すぎるんじゃないかというデータもある。できればもう少し早めの方がいいと思うが、これまでなかったことを知識として高校生に提供できるようになったとのは大きな一歩だと思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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