7日夜、東京地検特捜部が駐車場サービス「パーク24」の本社に家宅捜索へ。東京オリンピックをめぐる汚職事件で、またスポンサー企業にメスが入った。
【映像】高橋容疑者は“神様”? 元電通マン&元JOC職員に聞く
事件が大きく注目されたのは先月17日、大会組織委員会の元理事・高橋治之容疑者の逮捕だった。大会スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」から、スポンサー契約などで便宜を図る見返りに5100万円を受け取った受託収賄の疑いが持たれている。AOKIホールディングスの前会長・青木拡憲被告らも贈賄の疑いで逮捕された。
さらに今月、大会スポンサーの選定をめぐり、高橋容疑者に約6900万円の賄賂を渡した疑いで出版大手「KADOKAWA」の元専務・芳原世幸容疑者ら2人が逮捕された。この事件の背景には何があるのか。8日の『ABEMA Prime』は、元電通マンと元JOC職員に聞いた。
高橋容疑者は大会組織委員会の元理事のほか、元電通マンの顔がある。そして、サッカーのワールドカップなど国際的なスポーツビジネスに深く関わった経験も持っていた。JOC職員として長野オリンピックの招致に携わった経験を持つスポーツコンサルタントの春日良一氏は、「オリンピックマーケティングは1980年くらいから出てきたもので、“スポーツがお金になる”と考えたのがアディダスと電通。2社が一緒になってISLという会社を1982年に作り、オリンピックやサッカーワールドカップ、世界陸上など大きなイベントを牛耳って、スポーツのためにお金を生み出していくシステムを作っていった。その後、オリンピックのシンボルである五輪のマーク、“絶対に商品化してはいけない”という神聖なものを、“それを使ってもいいから寄付してくれ”ということで、1業種1社ということを決めてスポンサーを取っていった」と、スポーツマーケティングの発展に電通が関わってきたことを説明。
その上で、「今回の問題は電通の問題と、高橋さんという個人の問題と分けて考えないといけない。つまり、高橋さんでなければ問題は起きなかった部分があると思う。スポーツマーケティングを作ったのは電通の服部庸一さんで、高橋さんの大先輩。彼が、スポーツがお金になる世界を初めて見せてくれた人だ。そのチームの一員として高橋さんがいた」と指摘する。
制度アナリストの宇佐美典也氏は「ISLで枠組みを作った人たちが第1世代で、“スポーツをなんとかしないといけない”という志があったと思う。次は高橋さんたちの第2世代で、そこでだいぶ利権化したのではないか。ISLはなくなり、今IOC側にIOCテレビジョン・アンド・マーケティング・サービスという会社があるが、竹田さん(竹田恒和JOC前会長、パーク24の社外取締役)が社長を務めていたということで、第2世代が仕切ってきた。仕切っている人が固定化するとどうしても利権化してしまうので、そこを1回リセットして浄化するという時期が来た」との見方を示す。
リディラバ代表の安部敏樹氏は「高橋さんの下で働いていた方に聞いた話だが高橋さんのことだけは電通の同じチームのメンバーでも正直わからないと。1人に依存し、その人のところにお金が流れていく状態に対して、誰も文句を言えない状態が作られていたのだろう。オリンピック全体の中でも、高橋さんのブラックボックス化がより強いレベルであったのだと思う」と推察した。
春日氏は「高橋さんという本当に特殊な方の問題だ」と再度述べ、「先ほど第2世代という話があったが、服部さん亡き後、彼がサッカーや世界陸上を通じて成績を上げ、“高橋さんに任せておけば大丈夫だ”という偶像ができた。“オリンピック、スポーツでお金を持ってきてくれる人は高橋さんだ”となると、そこに任せる、すがるという構造がスポーツ界にできてしまっていたのでは」と推察した。
これに対し、電通に12年間勤め現在はネット広告を手掛ける株式会社Lamir代表の藤沢亮氏は「当時の電通はものすごく縦社会の会社で、部長の目を見るのも“失礼だ”と言われたほど。その中でも高橋さんは神様で、象徴的な存在だった。2001年、電通はインターネットではお金を作れないとなった時に出てきたのがスポーツで、それをお金をどんどん生むプラットフォームにしていったのが高橋さん。圧倒的な存在で電通を潤し、日本社会もスポーツビジネスも発展させるきっかけを作った」と振り返った。
東京オリンピックのスポンサーは、上から「ワールドワイドオリンピックパートナー」「ゴールドパートナー」「オフィシャルパートナー」「オフィシャルサポーター」と並ぶ。組織委員会はみなし公務員に該当するが、スポンサーの選定は入札方式ではない。
宇佐美氏は「電通はこういう序列を作ったが、これを覆しにかかった会社が高橋さんのところに相談しに行ったのではないだろうか? 電通自体はちゃんとやろうとしたが、OB(高橋容疑者)が許さないということではないか」と疑問をぶつける。
春日氏は「コネクションが取れやすくて、自分が説得できる企業を高橋さんが選んでいるという見方もできる。一番低いランク(オフィシャルサポーター)だから、そこまで大きな会社ではないこともある。交渉もしやすいし、高橋さん自身も知っているしというところで、それらの会社が今出てきている」とした。
東京オリンピック・パラリンピックの大会経費総額1兆4238億円のうち、組織委員会の負担は6404億円で、そのうちの6割がスポンサー料。国内スポンサーの額では史上最高額だとみられる。
春日氏は「頭を使ったし、人脈も使ったし、特殊なやり方をしたと思う。一方で、税金を使いたくないのであればスポンサーシップで得るしかないわけで、スポーツ界自体が頑張らないといけない。ここはフェアに、透明にすることは考えなくてはいけないと思う」と指摘した。(『ABEMA Prime』より)
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