将棋の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が9月12日、順位戦A級3回戦で糸谷哲郎八段(33)に勝利した。この結果で、順位戦A級の通算成績を2勝1敗とした。注目が集まる名人挑戦、さらには最年少名人獲得に向けて、次戦の4回戦では斎藤慎太郎八段(29)と対戦する。
異例の超スローペースとなった本局は、後手が用意した作戦に藤井竜王が応じ、横歩取りの出だしとなった。後手の構想を探るように、藤井竜王はじりじりと距離を取り持ち時間を投入。棋界屈指の早見え早指しと言われる糸谷八段も、一手一手にしっかり時間を使って慎重に読み進めていた。
長い序盤戦を経て、局面が動き出したのは夕食休憩明け。夜戦に突入し、糸谷八段が歩を進めてようやく本格的な戦いが始まった。先に持ち時間が1時間を切ったのは藤井竜王。先々まで読み進めていたか、一気に攻撃を開始した藤井竜王が先に抜け出した。深い前傾姿勢となりながら、激しい攻防戦を繰り広げた。後手は角を切って飛車取りから攻めを加速させ、大駒3枚の迫力で迫るも、追いつくことは出来ず。最後は糸谷玉を馬から追い込み、待望の2勝目を手にした。ABEMAの中継に出演した田村康介七段(46)は「守備力が高い。攻撃力も高いけれど…。藤井さんの敷いたレールに吸い込まれて行く。藤井竜王の受けの強さが光った。完璧に切らして勝ったような将棋だった」とコメントしていた。
この結果で、藤井竜王の通算成績は2勝1敗に。次戦、4回戦では、2期連続8勝1敗の好成績で名人に挑戦した強敵・斎藤八段との対戦が予定されている。藤井竜王は「ここまで中盤でミスが出てしまっている将棋が多いので、次局から修正していけたらと思います」と次局を見据えた。
一方、敗れた糸谷八段は1勝2敗と黒星が先行。次戦では現在王座戦五番勝負に挑戦中の豊島将之九段(32)と対戦する。「厳しい相手が続くが、熱戦を指せれば」と話し、初めての名古屋将棋対局場での一局を「きれいな対局場で、タイトル戦を指しているような気分だった」と振り返っていた。
順位戦A級は9人が総当たりするリーグ戦で、渡辺明名人(棋王、38)への挑戦権を争う。第1期を除いてA級初参戦で挑戦権を獲得した棋士は9人で、そのうち名人奪取を果たしたのは谷川浩司十七世名人(60)、羽生善治九段(51)、佐藤天彦九段(34)のわずか3人。藤井竜王がこの仲間入りを果たし名人位を奪取した場合、谷川十七世名人が保持する21歳2か月の最年少記録を更新する。
今期のA級は全員がタイトル戦の大舞台を経験している猛者揃い。10月には今年度3つ目の防衛戦となる竜王戦七番勝負が開幕と、引き続きハードスケジュールが待ち構えている。厳しい戦いの中でどこまで勝ち星を集められるか、今後も目が離せない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)