物価やエネルギー価格の高騰が家計を直撃。生活に不安を抱える家庭も少なくない中で、政府は8日、低所得者である住民税非課税世帯への5万円給付を決定した。
注目されたのは、非課税世帯の内訳だ。Twitterでは「収入がそこそこあっても生活は決して楽ではない。不公平だ!」「働かないほうがタダでお金もらえる国ですか?」「値上げの影響は所得に関係なく全員受けてる」「どうせ5万円出すなら若者にこそ支給すべき」などと批判的な声が目立つ。
はたして、非課税世帯への5万円給付は効果があるのか、その平等性は。12日の『ABEMA Prime』は専門家と議論した。
今回の対策について、関東学院大学経済学部の島澤諭教授は「住民税非課税世帯というと“生活が苦しい若い人”と感じるが、8割近くが年金生活世帯なのでイメージとは違う。結局、インフレは消費税みたいなもので全国民が困っているわけだから、非課税世帯に限る必要はあったのか。財源と言われている9000億円のうち6900億円が高齢者にいってしまうので、高齢者を重視しすぎている印象だ」と指摘。
給付の線引きを住民税で決めているため、持ち家や貯金がある年金生活者に5万円が給付される一方で、賃貸で貯金もなく、子どももいて出費の多い家庭に給付されないということが起きてくる。「細かく言えばきりがない。もしこういう給付をしたいのであれば、全国民に一律で配ったほうが不満は少ないと思う」。
リディラバ代表の安部敏樹氏は「もうバラマキのスタイルはやめてくれと。この何年かでどれぐらいばらまいたのか、そのお金が社会全体でどれだけ生産的な投資になったのか。未来の所得が上がっていくようなもののほうが重要度は高いと思っているが、そうでないものは極力やめたほうがいいと思う。うがった目で見ると、統一教会の話で特に支持基盤の高齢者の支持率が下がって、そこに向かってばらまくという効率がいい政治的なアクションと感じてしまう」と疑問を呈する。
一方、制度アナリストの宇佐美典也氏は「基本的にはこの政策に賛成。今だいたい日本の電気の卸売市場での価格は25円kWhぐらいで、ヨーロッパが55円kWhぐらい。日本は長期のLNG契約が多いからだんだんヨーロッパに近づいていって、原発の再稼働が迅速に進むということがなければまだまだ価格は上がっていくだろうから、早い段階で手を打ったほうがいいのは間違いない。ただ、給付の基準として、本当は300万円とかで区切ったほうがよかったのだろうが、日本はマイナンバーで政府が所得を把握するのが困難なので、迅速に対応できる住民税非課税世帯で切った。そこはこれまでの不作為の結果だ」と評価した。
金額別世帯所得を見てみると、200~300万円が13.3%、300~400万円が13.4%(厚労省「令和3年国民生活基礎調査」より)。4分の1を占めるこの層に5万円は届かないが、再び国民全員に一律給付するのは難しいのか。
島澤氏は「ばらまいたお金は誰かが将来的に負担しないといけないので、結局は財源をどうするか。赤字国債ということで、将来若い人たちが返していかないといけないわけだ。今高齢者に使われている社会保障のお金が82兆円、子育て世帯向けが10兆円。さらに、今回は高齢者に配るかたちなので、前者を1%削減すれば9000億ぐらいは賄える。高齢者向けの社会保障給付を削り、他の人たちに配るというやり方も1つあるのではないか」との見方を示した。(『ABEMA Prime』より)
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