京都の“高さ規制”、緩和は必要? 推進派と反対派が議論 「景観維持を前提に活性化を」「人口が減っている周辺部に手厚い政策を打つべき」
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 情緒感溢れ、歴史に彩られた町並みから、国内外を問わず多くの観光客が訪れる京都。今、その景観をめぐり大きな議論が巻き起こっている。

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 京都は歴史的景観を守るため、最高で31メートルなど、建設される建物の高さやデザインに条例で制限を課していた。高層ビルが立ち並ぶ大阪や名古屋の中心街と比べると、京都駅周辺は京都タワー以外、高層建築はない。清水寺に近い二寧坂にオープンしたスターバックスも、日本家屋を利用した京都に溶け込んだ景観で話題になった。

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 そんな中、この高さやデザインの制限を緩和しようという動きがある。京都市の有識者会議は9月、規制緩和で都市開発を進めることで人や企業を呼び込み、街の活性化を進めるべきという内容の答申書を市に提出した。「駅周辺等にふさわしい都市機能検討委員会」は「若年・子育て層の市外流出や、産業用地・空間の不足に対応することにより、人口減少社会が本格的に到来する中においても、京都の都市としての持続性の向上を図っていく必要がある」としている。

 しかし、JR京都駅の駅ビルが建設された時も論争になるなど、「景観を守れ」という声は根強い。人口減少と税収のために都市開発を進めるべきなのか。14日の『ABEMA Prime』は規制緩和派・反対派の両者を交え議論した。

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 京都市に提出した答申について、検討委員会の座長代理で京都大学大学院准教授の大庭哲治氏は「高さ規制のみではなく、都市計画上の方策から検討するもので、京都の景観の骨格を堅持するのを前提に議論をしている。『都市計画マスタープラン』が2021年9月に更新されて、今後約10年の都市計画の在り方を踏まえながら、方針や将来像と現状とのギャップが非常に大きい地域をピックアップしている。そのギャップをいかに解消するか、課題をどのような方法で改善していけばいいのかを検討した」と説明。

 ピックアップされたのは、京都駅周辺、外環状線沿道、らくなん進都、西部工業地域(一部の高さ規制検討が望ましい)、市境エリア(建物の高さ・床面積確保が必要)の5カ所だ。

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 「西部工業地域は古くから工業地域として発展してきて、戦後も京都のものづくりを支えてきたようなエリア。最近は丹波口をはじめ、山陰本線など鉄道駅のアクセスの利便性が高まったこともあって、若い世代が流入し、居住を受け止めるようなエリアになってきた。つまり、住・工が混在していてるエリアだが、高さ規制の緩和も1つの方策としてありなのではないかということ。

 市境エリアは、京都市と隣接する向日市、あるいは久御山町、宇治市などでは今、街づくりが目まぐるしく進展している。そういった所と市境のギャップは大きな問題で、市境の外側と内側とでうまく連携を図りながら一体的な街づくりを図っていかないと、都市問題として顕在化してしまう。そのあたりをうまく工夫していくということで、高さ規制の緩和が1つの方策として上がった」

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 一方、規制緩和に反対する景観問題や都市計画を研究している京都自治体問題研究所理事の中林浩氏は「新景観政策というのが2007年にできて、これは20年くらいの住民運動の成果を活かした政策だった。そこから15年しか経っていないのに、『100年後を見て決めた』と変えてしまうのは大きな問題。京都は50年くらい人口が横ばいで、増えている所と減っている所がある。減っているのは周辺部で、そこに手厚い政策を打たずに、都心とその間の所を伸びしろのある場所だということで規制緩和する。言葉は悪いが、不動産業者や開発業者の利益のための提案だと思っている」との見解を示す。

 また、「西部工業地域、西院駅、西京極駅、西大路駅周辺の報告書を見ると、新景観政策以降の土地利用の動向で、若者が住むような共同住宅が立地し始めているという。つまり、“新景観政策が若者を呼び込む政策になる”と評価している。最後のところで『もっときちんと使うためには高度地区の建物の高さを高くしたらいい』と言っていて、じゃあもううまくいっているのではないか」と指摘した。

 京都市は成長戦略として「若者に選ばれる千年都市」を掲げるほか、「そこに暮らす市民の生活環境、歴史的環境の保全、都市の活性化のバランスを十分に確保しながら、常に保全と創造を繰り返すことができる土地利用の実現を目指す」としている。

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 中林氏は「京都は特別に景観がきれいなところではあるのだが、普通の街が保存されてきたと考えていいと思う。若者に全然人気がないから来ないということではないし、財政難も10年市長をやっていた人が一生懸命宣伝をしたもの。人口が減ったのはここ1~2年の話で、コロナの影響もあり、それで若者の流出と言うには怪しい。大学都市なので若者がすごく流動するということをきちんと入れて話し合う必要がある。財政難や人口減少、若者流出を規制緩和の口実にしてはいけない」と主張する。

 大庭氏は「口実にはしていない。諮問の内容は都市空間の魅力的な創造をどう図っていくかと、活性化。産業をどう活かしていくかを検討していく議論の中で、高さも1つの規制緩和ではないかと思っている。私自身も景観の価値は認識しているし、研究しているので、中林先生の意見と一致するところはもちろんある。今回のエリア・場所は、少なくとも皆さんが想像している京都のエリアとは違うということを認識していただきたい」と説明した。(『ABEMA Prime』より)

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