闘神、復活!瀬戸熊直樹、プロ人生最大の屈辱で見えたもの「実績はゼロと思ってやる」/麻雀・Mリーグ
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 実績十分のベテランが、全てをゼロにしてMリーグの舞台に帰ってくる。昨期、個人では32人中最下位、チームも断トツの最下位と、これ以上ないどん底を見たのが、TEAM雷電・瀬戸熊直樹(連盟)だ。Mリーグで積み上げたもの全てを失ったような惨敗で落ち込みもしたが、開幕を前に全て吹っ切れたのか、所属団体のリーグ戦を中心に活躍。“闘神”復活の雰囲気を漂わせている。「チームも個人も崖っぷち」と自らを追い込みつつ、麻雀が楽しいとも語る瀬戸熊は、今期どんな迫力ある麻雀を展開するのか。

【動画】プロ麻雀リーグ「Mリーグ」昨期の戦いぶり

-今年も開幕がいよいよ近づいてきました。

 チームも個人も崖っぷちだと思っているので、若い時にチャンスを掴んだ時(の心境と)と同じです。勝たなければもう扉は開かない。勝つしかないということで、今までで一番準備をしている気がします。 

-昨年は個人もチームも最下位。瀬戸熊さんの長いキャリアでもあまり経験がないことでしたか。

 特に最下位を抜けようという意識もなかったですね。チームのためにと思ってやった結果なので、最下位だろうがブービーだろうが下から3番目だろうが、僕の中ではあまり関係なかったです。チームのために「僕はこれだけやりました」と、やり切ったぐらいにならないとチーム全体の活気にもつながらないと思うので、とにかく本当に一人の名もない自分に戻って M リーグでの実績はもうゼロと思ってやるしかないです。

-豊富なキャリアがある分、一からの出直しをする大変さもあると思います。

 (連盟の)A1リーグからも落ちたんです。今、A2リーグで首位にいるんですが「これはなんでかな」と自分で分析した時に、すごく自分がチャレンジャーになっているんですよ。今まではA1にいることにしがみついてた自分がいて、落ちたことによってすごく気持ちが楽になりました。鳳凰位を目指して遮二無二にやっていた時と同じ気持ちになっているので、自分が失っていたのはこれだなと思いました。チームも最下位、個人も最下位なので本当に失うものがない、本当の意味でのチャレンジャー精神です。周りは自分より強いし、実績も上と思って、胸を借りるつもりでキャリアの全部置いてきて初心に戻ります。A2リーグも最初はすごく不安だったんですよ。リーグ戦というのは、降級した人がズルズルいっちゃうことも多いので、正念場でした。ただ、やってみると意外と通用するし、自分より若い子の中で打つのも楽しいですね。ここ5年は麻雀が苦しかったんですが、今は楽しくやっています。楽しいのが一番。チーム状況などで苦しい時もMリーグにはあると思うんですが、楽しめるようになりたいです。

-これまでMリーグでは、瀬戸熊さんの口から「楽しい」「楽しむ」という言葉はあまり聞かれませんでした。

 久々に麻雀が楽しいです。プロになって麻雀が楽しいなと思うことは少ないですが、久しぶりに麻雀が楽しい。決勝戦とかで「この時間が永遠に続けばいいのにな」と思うことがあったんですが、リーグ戦など普通の試合でもそう思えていて「この手をどうやって仕上げよう」とか、「この強い相手をどう討ち取ろう」とか、そういうことを考えている自分がいます。自分を築いてきたものを守ろうという思いが強くて、去年の大敗は本当にファンの人には申し訳なかったけれど、自分的にはそれが糧になって新しいシーズンに入ろうとしています。

-今までで一番いいテンションになっていますか。

 そうですね。「今回は絶対に負けない」という気持ちになっているので、そういった意味では闘争心も蘇ってきています。モチベーション的にも気持ち的にも、いい意味でスタートラインに立てそうではあります。

-チームとしては昨季、最下位でした。今季に向けて一緒に練習などはありましたか。

 これは僕の持論なのですが、チームメイトとは(試合で)当たらないので、それぞれが調整すればいいと思っています。自分で苦手なところを克服した方がいい。チーム全体での情報共有は必要ですが、チーム全体が頻繁に集まって練習しようというのは、僕の中ではそんなに意味をなさないと思っています。もちろん集まってコミュニケーションを取ることが大事なので、ゼロはダメだと思いますけれど、そんな過度にはやらないです。

-今期から新たに3人のMリーガーが誕生しました。それぞれ対戦経験などはありますか。

 みなさん、それぞれ最強戦で打ったことがあります。後は日本シリーズや、他でも当たったことがあるので、初見ではないですね。ストロングポイントも、ちょっと弱いところもお互いにわかっているんで、それをこの舞台でどうせめぎ合うかというのは、今から本当に楽しみだし、打ち盛りの3人が入ってきたので、最初に言ったように自分の全てをぶつけるしか勝てる術はないです。

-瀬戸熊さんも多数のタイトルを取ってきましたが「タイトルホルダー」になっている人は、何か違いますか。

 たぶんみなさん、自分の中では自信満々だったり、秀でているところは自信を持っていると思うんですが、そこまで「自分は絶対負けない」とは思っていないですよ。でもその意識のバランスとか、攻める・守るのバランスが取れている時は一番いいですよね。僕も自分の中では「まだまだ弱い」と思っていたのに“絶対王者”とか呼ばれちゃって、重荷になったこともありました。今回の3人も、持っているタイトルとか自分の地位を失うのは怖いと思うんです。僕も同じ気持ちを味わったことがありますから。そういった意味では初年度ですけど、3人はそれぞれ自分の居場所を確保するために必死にやってくると思うので、こっちはそれを受けて立つ立場です。もう後がないので、ぶつかり合うしかないです。

-後輩の本田朋広さんは昨期、Mリーグの洗礼を受けた形になりました。何かアドバイスはありますか。

 特にはないですね。僕が本田にやってあげなければいけないのは、のびのび打てる場面を作るということです。昨年は僕もそうだったんですが「トップ必須」とか、そういう半荘が多すぎました。本田は受けの麻雀を打つので「2着でいいよ」とか「ラスじゃなければいいよ」という場面で行けるようなポイント作りが大事です。あと1つだけ直すとすれば、やはり本田は「TEAM雷電はこうあるべき」というところを、言い訳にしていたところがあるんですよね。2年目はそれは外していいです。「本田朋広はこう打つんだ」と、雷電の呪縛から外れちゃった方がいいと思います。「雷電らしく」というのは、本田にはもういらないと思うので、みんなが自分の最高の麻雀を打つ。僕も最高のパフォーマンスをするし、萩原聖人さんも黒沢咲さんもやらなければいけないところで、本田は本田ができる最高のパフォーマンスをしてくれればいいと思っています。それで彼が迷った時に聞いてきたらアドバイスをするし、長いシーズン、グチもあると思うんで、それも聞いてやろうと思います。麻雀のことで精神的なサポートをしていきたいです。

-ファンの方は、豪快な「トルネードツモ」を楽しみにしています。

 昨シーズンの最後から、実は手組みを変えています。「瀬戸熊直樹はこうあるべき」だというスタイルに囚われちゃっていた部分がありました。でも自分の麻雀が、どこがいいところなのかと考えた時に、勝ちにこだわっているところ、勝ち試合が一番いい状態なんですよ。だから今回は本当に、とにかく結果にこだわります。いい結果が出てる時は内容がよくなっているので、そこは僕にとって同義。メンゼンがどうのとか、鳴きの麻雀がどうのとかは考えてなくて、鳴く手は鳴くし、鳴かない牌は我慢する。その結果どういう風になるとか全然予想がついていないですが。

-今期、ファイナル行きを逃すと規定によりチーム構成が変わります。

 最下位からのスタートなのであまり大きいことは言えないんですが、一打一打一生懸命打つだけです。最終的には自分を信じたいと思います。自分がこれまでやってきたことで、よかったこともあるしダメだったこともあるけど、最終的には自分が歩んできた道を信じて、やりきりたいと思います。

-改めて、いろいろと吹っ切れた印象があります。

 本当にいろんな意味で守りに入っていて、昔はタイトルを取るしか男子プロが生き残る道はなかったのに、こういう時代になっていて「この場所にいたい」とか「このリードを守りたい」とか、それがやっぱり自分の弱さにつながっていました。もう一回、何もなかったところを思い出してやりたいと思います。

※連盟=日本プロ麻雀連盟、最高位戦=最高位戦日本プロ麻雀協会、協会=日本プロ麻雀協会

◆Mリーグ 2018年に発足。2019-20シーズンから全8チームに。各チーム4人、男女混成で構成され、レギュラーシーズンは各チーム94試合(全188試合)。上位6チームがセミファイナルシリーズ(各20試合・全30試合)、さらに上位4位がファイナルシリーズ(16試合)に進出し、優勝を争う。優勝賞金5000万円。

ABEMA/麻雀チャンネルより)

【動画】プロ麻雀リーグ「Mリーグ」昨期の戦いぶり
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Mリーグ 配信情報まとめ
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