佐藤康光九段「棋士としてのプライド見せるチャンス」里見香奈女流五冠の歴史的挑戦受ける“試験官”にもエール/将棋・棋士編入試験
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 将棋の里見香奈女流五冠(30)が挑む棋士編入試験第2局が9月22日、東京渋谷区「将棋会館」で指される。第1局は徳田拳士四段(24)に敗れ黒星発進。残り4戦で3勝を目指し、第2局では岡部怜央四段(23)を試験官に戦う。史上初の女性棋士誕生となるか、大注目を集めている編入試験。挑戦者の里見女流五冠にはもちろん、日本将棋連盟会長を務める佐藤康光九段(52)は、試験官を務める若手棋士にも「矜持を見せるチャンス」とエールを送った。

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 将棋界の歴史を動す里見女流五冠の大挑戦。しかし現役A級のトッププレーヤーでもあり、日本将棋連盟会長の重責を担う佐藤九段にとっては、「歴史的な五番勝負であることは間違いないが、(受験)資格を得ること自体は不思議ではないと思っていた」という。その理由はただ一つ。女流棋界全体がレベルアップしたことだ。

 「里見さんご自身も発言されていましたが、公式戦が増えたことが大きいのかなという気がします。戦っていく中でいろいろな状況が出てきますから、研究だけでは得られない強さを身に着けることができます。自分なりの戦い方を身に着けていくというのは棋士誰しもが持っていると思いますので、対局数が増えたというのが大きいのかなという気がします」

 里見女流五段の活躍はもちろん、ともに女流棋界をけん引する西山朋佳白玲・女王(27)、伊藤沙恵女流名人(28)らタイトルホルダーも個性豊かな役者ぞろいだ。棋戦が増えたことで女流棋界全体がレベルアップしたこと、さらには棋士との公式戦を戦う上で、佐藤九段の目から見ても里見女流五冠に変化がみられるようになったという。

 「苦しくなった時の粘り強さですね。元々研究が深く、様々なバリエーションの対策をされているんですが、悪くなってからの戦い方が進化されていると思います。実際に逆転勝ちも多い。普通はそんなにできないことなので、そういう部分は大きな進化だと思います」

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 里見女流五冠は、試験第1局でデビュー以来12勝1敗(8月18日時点)で勝率0.923、堂々のランキング1位に立つ気鋭の徳田四段に敗れ、黒星発進を喫した。「試験官は新四段5名を棋士番号順に選出」と定められているとはいえ、想像を絶するプレッシャーの中で新進気鋭の棋士を相手に戦うのは厳しい道のりだ。また、試験官にとっても重圧は相当なもの。大注目を浴びながらの対戦ながら公式戦にはカウントされないため、ABEMAの視聴者からは「試験官側のモチベーションは?」「どんな気持ちなんだろう」のコメントも見られた。佐藤九段は、そんな試験官側の心情にも寄り添い、激励を送る。

 「もともとはアマチュアの方が棋士を目指す時の制度なので、そういう意味では棋士としてのプライドを心に秘めて対局していると思います。しかし、里見さんの場合はすでに女流棋界の第一人者です。そういう意味では心の持ちようの変化がある棋士もいるのではないかなと思います。言い方が難しいですが、里見さんの実績はすごいですから、ある意味“挑戦”しやすいという部分もあるのかなと思います。

 (試験官5人も)棋士として、里見さんの実績に敬意を表しているんです。試験官ではあるのですが、ぶつかっていくような気持ちもあると思います。もちろん(自身が)奨励会を抜けて棋士になったというプライドの部分と、これだけの実績を作ってきた方、という里見さんへの敬意。その二つが入り混じって指すことになるのではないかなと思います。

 『新四段5名を棋士番号順に選出』という制度になっていますので、めぐり合わせですからね。与えられた環境でベストを尽くすというのも棋士の責務です。さらに、棋士は大きな舞台というのを待ち望んでいる気持ちがありますから。公式戦とは違いますが、棋士としてのプライド、意地を見せるチャンスではあると思います」

 宝物を愛でる少年のように瞳を輝かせながら、会長・佐藤九段が微笑んだ。里見女流五冠の次なる関門は、目前に迫る。試験官は岡部怜央四段(23)。居飛車党の注目株で、2017年度第61期奨励会三段リーグでは里見女流五冠に黒星を付けた相手でもある。受験者・里見女流五冠にとっても、試験官にとっても厳しい戦いが続く編入試験の注目ポイントはどこか。

 「第1局の将棋を見ていると、先後の差も大きいのかなと感じました。里見さんにとっては1局1局が勝負ですが、まずはタイに追いつくかというところで第2局は大きいと思います。とにかく自分の実力を出し切ってほしいですね。第1局でも『らしさ』は出ていたと思いますが、徳田四段の指し方が見事でした。これだけ見事に指されるとしょうがないかなという気もするんですけど、自分なりの思いをぶつけてほしい、というところですね」

 未来の仲間へ、試験官の重責を担う後輩へ、会長・佐藤九段のまなざしは誰よりも温かい。注目の第2局は9月22日に東京・将棋会館で予定され、試験官は岡部怜央四段が務める。

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