日本武道館で27日、安倍晋三元総理大臣の国葬が執り行われた。富士山をイメージした式檀の前には、岸田総理や昭恵夫人、皇族方や各国の要人など、合わせて約4200人が参列した。
この日、一般向けに設置された献花台にも多くの人が詰めかけ、追悼ムードに包まれた。一方で、「国葬反対!」と声を張り上げる人たちも。
最後まで賛否が分かれることとなった国葬は、果たして国論を二分したのか。安倍元総理を支持していた人たち、反対派の人たちはどこへ向かうのか。27日の『ABEMA Prime』は議論した。
今後の政治について、保守メディア「デイリーWiLL」編集長で『月刊WiLL』編集部の山根真氏は「右(派)も左(派)も喪失感がある。この10年は安倍さんが中心になって、政治以外の専門分野を語っても、やっぱり“安倍さんにつなげないといけない”みたいな。菅政権、特に岸田政権に関しては、背後に安倍さんの存在が大きかったと思う。国葬が終わった一区切りで、これからの“安倍なき時代”がどうなるかはわからない」とコメント。
一方で、「安倍さんと岸田さんは本音と建前、もっと言えば理想と現実みたいな関係があった。例えば核をめぐる議論だったら、『核シェアリングを議論しようじゃないか』と安倍さんが言えば、岸田さんは『核なき世界』を語るわけだ。これは岸田さんもやりやすかったと思うが、安倍さんがいないことで、いわゆる建前だけの理想論でやっていけるのかということをおそらく保守派は懸念している。菅前総理だったら岸田さんよりは安倍さんの思いを継いでくれるのではないか、という部分はなきにしもあらずだ」との見方を示す。
慶応義塾大学名誉教授の竹中平蔵氏は「自民党がどうなるか、特に安倍派の後継者がどうなるかは、簡単にはわからない。安倍さんが保守派の星だという認識も、マスコミがオーバーに作り上げたものだと思っている。私が小泉内閣で閣僚をやった時、実際に安倍さんと話して感じたのは、保守的ではあるけれども非常にリアリストだということ。小泉、安倍、菅と続くその流れは、ひとことで言うとプロアクティブ(先見的)な政治家だ。一方、岸田さんは非常に手堅くて、あえて言えばリアクティブ(受身的)。総理官邸に次官経験者が4人いるが、こんな政権は今までにない。それだけ霞が関を押さえて、ある意味では安定的だけれども、新しく時代を創るようなものは見えてこない。プロアクティブは今のシステムを変えることなので、必ず敵がたくさんできる。そういう政権を国民が求めるかどうかということだと思う」と分析。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「日本の近代史を振り返ってみると、明治維新と敗戦くらいしか世の中が変わらなかった。常にハードランディングなわけで、そうではない時期にプロアクティブに世の中を変えようとすると、“独裁者だ。ファシストだ”と言われてしまう。そのリーダーに従うのか、そうではなければまた戦争に負けるみたいな破滅的な出来事が待ち受けるのか。どっちを選ぶのかという話になってくるのではないか」と懸念を示した。
竹中氏は「日本は失業率が低く、賃金が伸びないという不安・不満はたくさんあるけれども、基本的にセキュリティは保たれているし、それなりに心地いい。国民はサステナブルではないということがだんだんわかってきた時に、プロアクティブな政権を求めるのかどうか。本当に日本は平時に変われない。明治維新、戦後の民主化などは、要するにショックセラピーだ。でも、5年後か10年後かに近づいているのかもしれない。それを国民が認識して、どういう政権を選ぶのか。そして、政治がどのように答えるかという問題だ」と応じた。
山根氏は「岸田政権は決断力がない、検討と先送りとよく言われるが、今回の国葬はターニングポイントかなと思う部分がある。この1年間の岸田政権の成果は何か? と聞かれてもあまり挙げられない中で、この国葬は岸田さんが下した初めてにして最大の決断だと。世論が二分され、なんなら反対が多い中で、それでもなんとかやり切ったという感触から何か学ぶところがあるのではないか」とした。
安倍元総理を失って保守系メディアも変わっていくのか。「保守系と呼ばれるけれども意識はなくて、“そう思われているだろうな”という認識はある。3号連続で安倍さんの追悼特集を組んだのも、大手メディアがあまり扱っていない“光”の部分を扱おうという、ある意味でカウンターの面もある。なので、地上波の動向次第ではこちらも変わるかもしれない」との考えを明かした。(『ABEMA Prime』より)
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