今年6月、政府はすべての女性が輝く社会づくりを目指す女性版骨太の方針を発表した。「結婚すれば生涯、経済的安定が保障されるという価値観で女の子を育てることは、女性の進路やキャリアの選択を通じて、女性の長い人生の中で経済的に不利益をもたらすリスクを高めることになる」と女性の経済的自立を目指すとしている。
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「夫は外で働き、妻は家庭を支える」といった考え方が主流だった高度経済成長期。その数は年々減少し、共働き世帯の増加に伴って今ではその数も逆転した。
すーさんママ(仮名・48歳)は2006年、システムエンジニアの夫と結婚し、3人(中3、中1、小6)の子供を育てる専業主婦だ。
「主人がほぼ家にいない忙しい人で、お腹に第3子がいて、第2子をおんぶして長男は手をつないで……それで買い物カゴを持つのはちょっときつかった」
毎朝5時に起床し、夫の帰宅する午後10時まで家事や育児などを1人で行っているすーさんママ。個人の生き方が多様化する今、専業主婦はどうあるべきなのか。また、夫婦間で家事や育児はどう分担していけばいいのか。
ニュース番組「ABEMA Prime」に出演したすーさんママは「結婚を機に地元から遠く離れることになった『これから仕事を始めよう』と思ったら、早々に妊娠が発覚した。新しい土地で働きづらいので、子供のことを大事に思って家庭に入ることを決めた」と経緯を語る。
結婚生活は、借金約700万円の返済から始まった。夫の転職によって収入が上がったことで借金も完済。戸建ても購入でき、今の暮らしに満足しているが「これからかかる3人の教育、養育費も心配だ」と話す。
将来的に「また働きたい」と思っているのか。
「切り詰めるところは切り詰めて、楽しく家族でお出かけしたいときのお金は用意する。本当に教育費が必要になってお金が足りなくなったら働こうと思う」
家事育児の分担については「主人は仕事中心で、私は家庭をみようと、2人で話し合った結果が今だ。主人にやってほしいことはいっぱいあるが、平日はほぼ私がやっている。主人がしてくれるのは、私が用意したゴミ袋をゴミステーションに朝出すだけ。感謝の言葉をかけてほしいと思うときもあるが、満足だ」と話す。
今年7月、結婚を発表したソフトウェアエンジニアでタレントの池澤あやかは、家事分担について夫婦間で決めていることは「特にない」とした上で、「家事の分担は本当に家庭の平穏を左右する。専業主婦や共働きといった問題ではなく、ちゃんと話し合って分担を決めることが大事だ」とコメント。
2013年に結婚し、現在は2人の子供の父であるタレントの田村淳は「僕の家は妻が専業主婦だ。分担は特に決めていないが、自分がやれるときにはやる。結局、思いやる気持ちがあって『今日は疲れてそうだから、俺が子供をお風呂に入れようか?』とその都度話している。これはあくまでも俺の一方的な意見だけれど、時々夫婦で話し合うとか、そういう時間を持たないといけないと思う。あと、女性が『働きたい』と言ったとき、どうやって社会や制度がそれを支えるか。これも考えなきゃいけない課題だと思う」と話す。
跡見学園女子大学准教授の石崎裕子氏は「ライフコースが多様化している中で、専業主婦は選択肢の1つだ。過去は、女性であれば何年間か勤めたら結婚して、結婚したら専業主婦になるのが“定職コース”だった。みんながみんな専業主婦になれるわけではない。今は仕事を続けたり、あるいは転職したり、長い人生の中で選択肢がいろいろある。1回大学とか大学院に入り直したり、留学したりもできる。キャリアは就職だけではない」とコメント。
「専業主婦は夫が大黒柱一本で家計の経済的な部分を回している。夫が急に失職したり、病気になってしまったり、離婚したりすると、すごくリスクがある。ただ、女子大で教員をやっていて若い女子学生を教育しているが、専業主婦志向みたいなものは学生の間でも薄れてきているように感じる。学生たちのお母さん世代もいわゆるM字カーブの、子育て中は専業主婦だったけれども、自分たちが大きくなってくると母親がパートで働いたり、再就職したりといった姿を見てきている。『共働きでやっていくんだろうな』みたいな、そういう意識になっていると思う」
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「家事をやってない人は分からない“名もなき家事”がある」と話す。
「ゴミ出しをやっていない人は、ゴミ袋をゴミ収集所まで持っていくことがゴミ出しだと思っている。その前にゴミを分別したり、ゴミ袋をちゃんと買っておいたり、ゴミ箱をきれいにしておくなど、細かい家事がある。うちは僕が料理とゴミ出しと買い物をやって、妻が掃除と洗濯をする。これは別に押しつけ合ってそうなったわけではない。好きなことをやっているうちに、だんだんそうなった。昔は2人とも掃除があんまり好きじゃなかった。掃除はしょうがないからアウトソースして、掃除サービスに来てもらったが、そのうち妻が『掃除をやってもいい』と自分で言いだして、だんだん好きになった。組み合わせて随時やっていくことが大事だ」
また、佐々木氏は「知り合いの会社に、専業主婦向けのパートを紹介する事業がある」と紹介。
「例えば、出産するまで外資系コンサルや金融とかに勤めていて『とりあえず今は専業主婦をやっています』という人がいる。でも、一日ずっと忙しいわけではない。1日3時間程度であれば、働ける人たちだ。そういう人に株式公開の準備や管理といった難しい仕事があって、パートでもいいからお願いしたい会社もある。社会の中で、専業主婦でも働きたい人と会社をうまく組み合わせることによって、持っているスキルやノウハウを利用できるし、逆に専業主婦の人も自分のスキルを維持できる。間が空いてしまうと、スキルが時代遅れになってしまうこともある。それを埋める作業が大切だと思う」
(「ABEMA Prime」より)
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