「柔術黒帯の実力者MMAデビュー」の触れ込みで期待値がグッと上がったMMAデビュー戦は、まさかの“組みなし”の末にワンパンKO負けという予想外の結末。解説陣からも「さんざん引っ張って得意ワザを出さないなんて…」と困惑の声が漏れた。
9月29日にシンガポールで行われたONE Championship『ONE 161』。マテウス・フェリペ(ブラジル)とアリ・フォラディ(イラン)の一戦は、柔術黒帯とレスラーが持ち味を出さずにひたすら殴り合う謎展開を受けて視聴者、解説陣から困惑ぎみの声が相次いだ。
レスリング出身でMMAとキック両方の試合に参戦しているアリと、MMAデビュー戦となるフェリペ。フェリペは柔術黒帯で大会の優勝も多数、ムエタイ経験も長いという触れ込み。この日のABEMA解説・大沢ケンジも経歴を見て「ただの黒帯の選手ではなく、大会での実績もあるのでトップ中のトップでしょう」と期待を寄せた。
試合序盤はスタンドでの攻防。フェリペはゆったりとした構えからローを飛ばし“打撃もいける”感を出す。しかしゲスト解説の志朗は「ディフェンスが全然だと思いますね。相手の動きにオーバーリアクションすぎます。殴られるのが怖いのかも…」と早くも弱点を指摘した。
見た感じではミドル、ローと自信満々のフェリペが優勢に見える。対するアリもレスリングベースの選手だが、柔術マスター相手に露骨に「組みたくない」感じを醸しだすやや消極的な展開となる。
しかしラウンド後半、アリが突如動く。距離を一気に縮め右を一発叩き込むと、さらにオーバーハンドの右。よもやのパンチにフェリペが跳びヒザで対抗するも、志朗は「あんまり高く飛んでない」と冷静な指摘。さらに大沢も「パンチが怖いから跳んで組んでみようみたいな感じ」と続くと、直後に突然の決着は訪れた。
序盤からガードの緩さを指摘されていたフェリペに対して、アリが右フックを一閃。打撃音と共に後方にダウンしたフェリペは足をピーンと伸ばして硬直。誰が見ても“瞬殺”のKO劇にレフェリーが即ストップをかけた。
会心の一発を当てたアリは「ウワァー、ウワァー」と大絶叫。一方、期待の触れ込みらしからぬ打撃戦に終始したフェリペは、最大の武器である「組み」を一切見せずに撃沈。試合前の期待もあってか大沢は「一回も組みに行かなかったですからね…めちゃくちゃ悔いが残るんじゃないですか。得意なものを引っ張って出さないなんて…タックルすらもやってない、これはないだろう…」と最後まで残念そうだった。