9月29日に墨田区役所で行われた、毎年10月のピンクリボン月間に合わせた乳がんの啓発イベント。乳がんは女性が患うがんの中で最も多く、死亡数も増加しているため、「女性特有のがん」と思われがちだが、「実は男性にもできるらしい」とイベントMC。実は男性も発症するのだ。
野口晃一郎さん(47)は過去に乳がんを発症した1人。マンモグラフィを初めて受けた時のレントゲン写真をもとに、「乳首、乳管、腫瘍があって、乳首が若干へこんでいるように見える。『腫瘍が引っ張っている』という話だった」と説明。左胸は現在、「切除したので、傷口が残っている。何もないというか、真っ平な状態」だという。
約6年前、野口さんがお風呂に入ろうとシャツを脱いだ時、妻の美穂さんが異変に気づいた。「左側だけ引きつって、中に埋もれている感じがすぐわかった」。野口さんは「言われてみるとチクチクするような時もあったけど、がんに直結しているという意識はなくて。妻に言われて、『あれ、どうしたんだろう?』というのが最初だった」と振り返る。
乳がんの初期症状は男女で大きな変わりはなく、乳首の陥没、乳首からの出血などさまざま。では、もし胸に違和感があった時に男性は何科に行けばいいのか。正解は、乳腺科だ。
「内科なのか皮膚科なのか、それともどこか違うところなのか。いきなり乳腺外科に行こうと思う人はたぶんいないと思う。僕は乳がんの取材をしていたので、異変があった時に乳腺外科という選択肢があるのを知識として持っていた」
野口さんの職業はフリージャーナリスト。毎年10月、乳がんに関する記事を執筆していたため、男性も乳がんになることを知っていた。しかし、正しい知識が広まっていないことから早期発見が遅れるなど、死亡率は女性よりも高いという。さらに病院へ行っても…。
「『なんであの人は男性1人でいるの?』とか、たまに聞こえる。そう思うと、居場所がないというか。自分は病院に治療に来ているんだけれども、なぜかそこにいてはいけないような空気感。『なんでいるの?』みたいな」
男性の入院患者数は全体の1%ほど。患者同士がつながりづらく、悩みを抱え孤立してしまう。
約1カ月半後、野口さんは4時間にわたる手術を終え、現在はホルモン療法と年に1度の検査を行っている。「やっぱり早期発見があったからこそ、今娘とこうして一緒の時間を過ごして、遊びに行ったりご飯を食べたり、本当に心穏やかに過ごせるんだなと。正しいことを知っていれば救える命というのはいっぱいあるんだと思う」
■医師「男性は乳頭の下にできやすい」、セルフチェック方法は
男性の乳がんについて、NTT東日本関東病院・乳腺外科部長の沢田晃暢氏は「乳がん患者が全体で9万5000人ぐらいいて、そのうち0.6~0.7%が男性。なぜなるのかはわかっていないが、男性にも乳腺はある。乳がんや大腸がんは栄養過多、栄養の摂りすぎが原因ではないかというのがよく言われていることだ」と説明。
可能性が低い中でどのように見つければいいのか。「例えば、ビヨンセのお父さんが乳がんで、乳頭から出た血性の分泌物がシャツについたことでわかった。血液で見つけるというのは、今はいいものがない。がんセンターや日本対がん協会で、日本特有のマイクロRNAを使って見つけよう、血液でがんを見つけようということをやっている。海外でもDNAを見たりしているが、今は自分で触ったほうが早い」。
沢田氏によれば、男性もセルフチェックができるという。手順は、(1)腕をあげて渦巻状に乳首から乳房を外へ触る、乳房全体を優しく押す、(2)腕を降ろして乳房全体を優しく押す、脇に手を入れてリンパの腫れがないかを調べる。「基本的には女性と同じで、入浴中に胸を触る。女性の場合は大きいので、上、下、全部触って、脇のリンパも触る。男性の場合は乳頭の下にできやすいので、触ればわかりやすい」。
一方で、間違えやすいのが「女性化乳房症」だ。「胸が痛くて張っているという男性の人がけっこういる。50歳以上だとだいたい薬の副作用で、血圧の薬を飲んでいて胸が張ってきたとか、痛くなることがある。50歳未満の方だと原因がわからなくて、放っておくと治ってしまうこともある。乳腺外科に来られる方の9割9分は女性化乳房症で、たまに乳がんの人がいらっしゃる」。
■情報共有ができることで「安心感が得られるように」
男性乳がんの会(メンズBC)で体験談や専門医による講演が行われているが、野口さんは情報共有の大事さを訴える。
「私の乳がんが見つかったのは6年前だが、その頃はインターネットを探しても情報は全然なかった。やはり話しにくいという方もいらっしゃるが、男性乳がんの会があることで“ここに行けば同じ患者に会える。話が聞ける。1人ではない”という安心感が得られるようになった。ただ、高齢の方がインターネットで男性乳がんにたどり着けるかというと、そのあたりはまだ少し壁があると感じる」
どのようなかたちで社会に理解してもらうのがいいのか。沢田氏は「女性と同じように男性にもある」と知ってもらうことだと話した。
「ずっと啓蒙活動をしてきたが、男性に乳がんがあるということが全く知られていない。LGBTQといったことを思われたり、男性でもあることなのに精神的にまいってしまう方もいらっしゃる。要するに、“乳腺があるから乳がんになる”ということを知ってほしい」
(『ABEMA Prime』より)
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