「虐待を予防しながら養子縁組につなげていきたい。赤ちゃんポストを作りたい」
こう話すのは、都内で複数の小児科医院などを運営する医療法人社団「モルゲンロート」の小暮裕之理事長。今年9月、モルゲンロートは親が育てられない子どもを匿名で預かる「赤ちゃんポスト」を東京・江東区に設置する計画を明らかにした。2024年秋の設置を目指していて、実現すれば関東で初めてとなる。
「今決まっているのは、18人が入院できる産科病院を作っていいということ。これは東京都から認可を受けている。これから設備を作り、行政に赤ちゃんポストを支える仕組みを作っていただく」
赤ちゃんポストの設置の背景には、近年問題となっている「乳児の置き去りや虐待を減らしたい」という思いがあった。
年々増加の一途を辿る虐待件数。虐待を受けた子どもが親となり、自身の子どもにも虐待をしてしまう“負の連鎖”が生まれていることが指摘されている。
かつて小児科医として勤務していた小暮さんも、これまで幾度となく、虐待を受けた子どもの治療にあたってきた。
「(子どもが)極度の栄養失調や脱水などで“骨と皮に近い状態”、ミイラになる寸前のガリガリな状態で救急に運ばれてきた。そういう悲惨な事例を見ながら、産科病院と一緒に赤ちゃんポストを作ることを決意した」
またこの病院では、匿名での出産を望む女性が特定のスタッフにのみ身元を明かして出産を行う「内密出産」の導入も予定している。内密出産はこれまで熊本県にある慈恵病院が独自に導入。今年8月までに5例の出産が明らかとなっているが、この病院以外に内密出産を導入している病院はない。
「育児が難しい方に対して、里親をマッチングさせていく。自宅で出産して、そのまま赤ちゃんが亡くなってしまうのは『防げる死』だと思っているので、(赤ちゃんポストと)同じ意義がある」
先月30日には、国が始めて内密出産に関するガイドラインを作成し、公表した。医療機関が「子どもが出自を知る権利の重要性」を親に説明することや、親の身元につながる情報は病院が適切に管理することが盛り込まれた。
その一方で、加藤厚労大臣は「まずは現場で妊婦に通常の出産をすることを説得し、理解してもらうことを前提とした上で、それでも(内密出産を行う)という判断はある。そうした場合はガイドラインに従って対応してください」と話し、内密出産は推奨しない考えを示した。
小暮さんは、赤ちゃんポストの設置や内密出産の導入について「賛否の声があるのは理解している」としたうえで、「『手伝わせてください』『応援させてください』といった連絡も来ているので、2年後の赤ちゃんポストの実現に一歩大きく前進したと感じる。僕ら自身は2年後になるが、すでに病院(産婦人科)で働く先生たちはもっと早く実現できると思う。すごくいいきっかけになった」と明かした。
今後は熊本にある慈恵病院への視察に加え、施設に導入する設備や運営にかかる資金の確保などを行政と連携し、よりよい形での赤ちゃんポスト運営を模索していくとしている。
「少子化の日本だからこそ、赤ちゃんを遺棄・虐待しない別の道として、子どもを他の里親に育ててもらうという選択(養子縁組)がもっと一般的になった方がいい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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