介護保険制度に見直し案…改革必要? 「要介護1と2の保険外し」が一時トレンド入り 利用者の負担増とサービスの質低下に懸念
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 少子高齢化が進み、特に介護や年金など社会保障給付金の増加が現役世代の負担を大きくすることが懸念されている中、厚生労働省で介護保険制度の見直しが検討されている。

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 介護に関しては、日常生活ができるものの一部に見守りや介助が必要な「要介護1」から、寝たきりで食事や排泄など常に介護が必要な「要介護5」まで、5段階で分類されている。介護保険サービスを利用した場合、多くの利用者の負担は1割で、国が9割を負担している。それを、厚労省の介護保険部会では「要介護1」「要介護2」の一部の介護サービスを国の介護保険から外し、市町村の総合事業へ移管することが検討されている。今年中に結論をまとめ、来年の法改正を目指すという。

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 その結果、懸念されているのが利用者の負担増加とサービスの質の低下だ。Twitterでは「#要介護1と2の保険外し」が一時トレンド入りするなど、多くの批判の声があがった。

 しかし、介護保険料が増え続け、日本の財政を圧迫しているのも事実。5日の『ABEMA Prime』は介護の現場にいる当事者とともに議論した。

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 改正でサービスの質の低下を懸念する「全国介護事業者連盟」理事長の斉藤正行氏は「事業者としても本当に深刻な問題だと受け止めている。要介護度自体は2だけれども、金銭管理や歩行が少し困難だという方が軽度なのか、認知症の方で手がかかる場合もある。こういった方々を介護保険から外していくことを非常に危惧している。事業者は“地域支援事業に移管を”と検討されていて、すでに要支援1と2については訪問介護とデイサービスが先行して移管されている。自治体によっては、介護サービスを利用する際の点数が10~30%引き下げられていて、つまり市町村からの報酬がそのまま下がる。介護事業者の平均の収支差率という利益率は、おおむね2~3%程度と国の調査で示されていて、売上が10~20%ダウンすれば多くが事業を継続できなくなる。そうなれば当然、介護サービスを受けたくても受けられない方々がたくさん出てくる」と警鐘を鳴らす。

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 改正案に反対しオンライン署名をしている、「認知症の人と家族の会」常任理事の鎌田晴之氏は「“介護保険から外される”という意味がわかりにくいと思う。介護保険は我々保険料を払っている被保険者、市町村が保険者。契約関係なわけで、要介護認定を受けると介護サービスを使えるという権利が生じる。自動車事故が置きたら保険会社が払うのと同じように、保険者はそれを保障しないといけない。そこから外れて、サービスの質と量の裁量が自治体に渡されると、予算がない自治体はどんどんサービスを減らすことになる」と指摘。

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 リディラバ代表の安部敏樹は「例えば特別養護老人ホームはどこに建っているかで値段が変わってくる。そのパターンは2、3パターンしかないが、世田谷区だと稼働率98%なのに赤字で、デイサービスなどを重ねてなんとか黒字化していくような事例もある。複雑だし儲かりづらい構図なので、事業者と利用者の不利益という観点からこのような議論が出てくるのは当然だ。とはいえ、介護は国家財政の大きな部分を占めているし、さらに若い労働者を公的なマーケットに閉じ込めて、イノベーションが起こりづらい状態を作ってしまっているのも、この国のボトルネックの大きな1つ。納税者、あるいは未来の世代からしてどうなんだという代替案が同時に出てこないと厳しいと思う。この国の活力が介護と医療と社会保険でどんどん削がれていく現状を黙って見ているわけにはいかない」と危機感をあらわにした。

 介護保険費用はこの20年で3倍ほどに増えたが、今の制度の仕組みでは回らなくなりつつあるのが現状だ。また、介護サービス事業者は25万以上あり、整理・統合や効率化ができるのではないかという声もある。

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 斉藤氏は「これからも高齢者が増え続け、税金や保険料を払う現役世代がどんどん減少していくので、社会保険の財源をどうやって確保していくのかは非常に重要だ。効率化という部分で、事業者も生産性の向上やDXに向き合っていかないといけない」と説明。

 また、「今回の介護保険の改正はまだ議論が始まったところだ」とした上で、「我々も全面的に反対だと申し上げているわけではなくて、高齢者に絶対必要なサービスと、ここは自助努力でできるという部分を見つめ直していくこと。例えば訪問介護のサービスは、入浴や排泄など直に接していく身体的な介護と、掃除や食事のサポートをする生活援助に分かれている。その中で、後者の掃除や食事のサポートは本当に保険料で払うべきかというと、検討の余地があるのではないかということだ。ただ、家事代行で自費でやれるかもしれないが、知識のない人が間違った対応をしてしまうと認知症の方が混乱して重症化してしまうリスクもある。ここをどう見るかだ」とした。

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 では、介護保険の仕組みを維持するためには利用者の負担増もやむを得ないのか。斉藤氏は「私も若い時には介護なんて遠い先の話だと思っていたが、誰しも“家族が”、そして“遠い将来自分も”と自分ごととして捉えていかないといけない。負担割合を高めていくことについて反対の立場でいろいろと申し上げている一方で、財政を健全化していこうと思ったら、今は40歳以上からしか納めていない介護保険料を、30歳とか20歳からももらわないと成り立たないなど、若者世代へのさらなる負担という議論にもつながりかねない。所得のある高齢者から少し考えていこうとか、事業者も努力をして効率化できることは考えようとか、全員が全員の立場で真剣に考えていくべきだ」と訴えた。(『ABEMA Prime』より)

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