「反抗期」がない子どもが増加? 経験しないことによる弊害も? 22歳で迎えた当事者「“私は自立した大人”という考えは幻想だった」
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 突然やってくる子どもの反抗期。戸惑いを隠せない親は多くいる。中学生の息子が真っ只中の佐藤さん(仮名・40代)は「ある時だけ突然別人格になる感じ。穏やかに会話していても、私の一言に反応して『うっぜー!』みたいに言われる」と話す。

【映像】「反抗期」経験せずに大人になると弊害も?

 4カ月ほど前、ゲームの時間をめぐりケンカが勃発した際には、「私が冷静になろうと思って(部屋で)仕事とかをしていたら、下から『ドーン!』って音がして。下りて行ったら『えぇ?』と思って」。

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 佐藤さんが目にしたのは、壁にあいた穴が額縁に飾られている様子。しかもその横には、「ガチキック~母親へのにくしみをこめて~」という手書きのタイトルが。「最初はびっくりというか、何が起こっているのかよくわからない状態で。その後にブワーッと怒りがこみ上げてきて、『何やってんねん』みたいな」。

 なぜこんなことになったのか。「お母さんとは別ならば」という反抗期らしい条件で、長男が取材に応じてくれた。「『クソ!』って感じで(壁を)蹴った。『なんで言いたいことばっかり言ってくるんだろう?』と腹が立って。(穴があいたことは)『あぁ穴あけた』みたいな、怒りと嬉しさの狭間という感じ」。

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 子どもが壁にあけた穴を親が“反抗期の証”として飾る様子がネットで話題になっていたことを思い出し、自ら展示したという。タイトルを付けた理由について、「たぶん、親をもっとイラつかせようみたいな感じ」と話すが、母親と喧嘩をしたいわけではないそうだ。

■専門家「親側から見たら反抗、子ども側から見れば自己主張」

 なぜ子どもは反抗するのか。子育ての悩み相談を20年以上受けている、医師で臨床心理士の田中茂樹氏は「親側から見たら反抗だけど、子ども側から見れば自己主張している。時に相手の意に反していても、自分の思いをちゃんと通そう、自分を守ろうとする。そういう対人関係の練習だ」と説明。

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 自立の過程で重要な役割を果たしている一方で、ある調査によると、ここ最近は反抗期がない子どもが増えているという。田中氏は「長く校医をしていて、昔は怒鳴る先生がいて、それに逆らう子どもたちがいてにぎやかだったが、ここ数年は怒鳴る先生を見たことがない。おそらく先生も子どもに対して優しくなってきていて、受け入れる力が増えている。また、争いを好まない子が増えているように思う」と推察する。

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 そんな中、「自己主張する練習ができていないと、社会に出てから必要な時にしっかり主張する力が育たないことにつながる」という弊害も。

 親が高圧的で反抗することができなかったというろくさん(33)。自己主張できなかったことでその後、苦しんだと振り返る。「周りにいいように使われるというか、思ってもいない時間まで残業させられたり。上司の失敗であるにも関わらず、『何かしたんじゃないか』と私が問い詰められて。『言いたいことがあるなら言え』と言われるが、何も言えずに結局は『自分のせいです』ということで、言葉を飲み込むほかなかった」。

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 親の対応が反抗期のありなしに影響するのか。田中氏は「親が子どもを尊重して1人の人として認めたり、厳しい言い方や高圧的な言い方をしない。そう接していれば、反抗は当然少ないと思う」との見方を示す。

 ろくさんは人間関係がうまくいかず、精神的にも追い込まれてしまう事態に。「人と話せなくなったり、ほぼ無表情だった。反抗しないことで損をすることのほうが多いんだなと今になって思う」。

■22歳で反抗期に「“私はすでに自立した大人だ”という考えは幻想だった」

 反抗期を成人後に迎える人もいるようだ。ライター・ブロガーの川代紗生さん(29)も、両親との関係は非常によかったという。

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 「特に母親と仲が良くて、趣味を共有したり、好きなアーティストが一緒だったり、洋服をシェアしたり、プリクラを一緒に撮ったりと、一心同体みたいだった。母親が苦労人で、生活費を削って頑張って習い事に行かせてくれているのがわかっていた。周りから“あの人は教育ママだよね”という白い目で見られていることもなんとなく理解していて、母親がそう思われているのは嫌だった。“母親に対する誤解を解きたい”という気持ちがモチベーションになっていたところが10代ではあった」

 その後、大学生でアメリカに留学した時に困ることが起こったという。

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 「初めて母親と離れて寮で生活する中で、例えば現地の友達とうまく話せないとか仲間を作れないというトラブルが起きた時に、真っ先に出てきたのが“お母さんだったらどうするかな”。“相談したい”というのが出てきてしまったが、時差があるのでそんな簡単にはできない。“母親がいないと私は何も考えられないんだな”ということで、すごくショックを受けた。10代の時、“私はすでに自立した大人で、親に対してワーワー言う必要がない”と思っていた。でも、留学してみてそれはある種の幻想だったと気づいた」

 川代さんはその後、22歳で反抗期を迎える。留学中、自分を理解するために自伝を執筆する中で、「これまで自分の努力で得られていると信じていたものは、実は全部母親のおかげだった」「頭の中を整理して母親と対峙してみたら違和感が生まれた」と明かす。

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 その状態は1年間続いたが、今となっては1人の人間として向かい合えているという。その上で、自身の考えを整理する時間は必要だったと振り返った。

 「身を粉にして働いてくれたという感謝もあるし、当時は母親にものすごく憧れを抱いてしまっているところがあって、“母親みたいになりたい”と。でも、(頭を整理して)“母親のコピーではなく、私は私になりたいんだ”と気づいた」

(『ABEMA Prime』より)

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