「身内が亡くなっても涙が出ない」41歳の“蘇生”を繰り返す毎日…記憶喪失の現実と謎
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「免許証をA4まで拡大コピーして、貼り付けてある。それで名前をまず把握する」

 41歳の時に心筋梗塞で倒れた大庭英俊さん。一命を取り留めたものの脳が損傷し、記憶障害になった。大庭さんは過去の記憶のほとんどを失い、また今日起きた出来事も、翌朝には忘れてしまう。そんな日常を16年間続けている。

【映像】「なぜここに?」ひろゆき氏と遭遇した大庭さんのリアクション(※出会いのシーン)

 ニュース番組「ABEMA Prime」の取材当日、大庭さんは前日打ち合わせしたスタッフの顔を覚えていなかった。名前は「ちょっと待って。わかりやすい名前だった。佐藤、鈴木……田中?」とギリギリ思い出すことができた。

 類似の動画や画像を毎日繰り返し見るうちに、その人の顔や情報をインプットすることができるようになった大庭さん。憧れのひろゆき氏を前に「なぜここにいるのか分からないが、ファンです」と述べた。

「身内が亡くなっても涙が出ない」41歳の“蘇生”を繰り返す毎日…記憶喪失の現実と謎
「身内が亡くなっても涙が出ない」41歳の“蘇生”を繰り返す毎日…記憶喪失の現実と謎

 2日にわたって大庭さんと過ごしたひろゆき氏。7日放送の「ABEMA Prime」では、取材の模様を紹介した。

 ひろゆき氏は「大庭さんは毎回毎回新鮮な感じで対応してくれる。映像ではちょっとわかりづらかったと思うが、ニュースや車の運転など、自分と関係ない記憶は蓄積されている。ただ、大庭さんが面白い、楽しいと思ったことは覚えてなくて、逆につらいことやインパクトが強いと覚えている」と振り返る。

 大庭さんも「うれしかったことなど、良いことほど忘れてしまう」といい、今回の取材も「ものすごく楽しかったんだと思う。何があったのかすごく気になる」と悔しがった。ニュースを覚えているのは「ニュースを入れる(記憶の)棚があって、そこに日付を追うごとに繋がっている感覚」があると明かした。

「身内が亡くなっても涙が出ない」41歳の“蘇生”を繰り返す毎日…記憶喪失の現実と謎
「身内が亡くなっても涙が出ない」41歳の“蘇生”を繰り返す毎日…記憶喪失の現実と謎

「実際は57歳だが、毎日毎日41歳の蘇生した瞬間から朝が始まっている」と話す大庭さん。忘れにくいもの、忘れやすいものというのはあるのだろうか。

 高次脳機能障害のリハビリテーションが専門の東京慈恵会医科大学第三病院教授の渡邉修氏は「感情に訴えるものほど覚えやすい」と話す。

「記憶を司る海馬という場所と感情を司る扁体というのが隣り合わせになっている。健常者でも誰でもそうだが、一生懸命ワクワクやった経験は残りやすい。『社会のシャワーを浴びる』という言い方をするが、神経衰弱や記憶のドリルをするのではなく、きちんともう一度本来のやり方を学習し直すことが、一番の刺激になる。感情と記憶は繋がっていて、誰の脳でも構造は同じだ。そういう意味では個人差はない。例えば3.11(東日本大震災)の時に何をしていたかというのをみんな覚えている。ただ、その人が考える価値の重さによって、記憶の残り方が違うのだろう」

 ライターのヨッピー氏も、脳炎になって一週間ほど言葉が話せなかった経験があるという。

「僕の場合、急性の発作みたいなものだった。漢字は書けるのにひらがなは書けなくて、自分で『なんでこんなことが起こるんだろう?』って思っていた。さっき大庭さんが“棚”の話をしたが、僕もそんな感じで『漢字を書く棚は生きているのに、ひらがなを書く棚は応答しないな』と思った」

 高次脳機能障害の原因はどこまで分かっているのだろうか。

「脳みそは1300gくらいの重さがあって、場所ごとに、ある程度役割が決まっている。大庭さんも『棚』という表現をしたが、ある程度この中に漢字を覚えるなど、さまざまな分担がある。病気によってその場所がみんな違うので、症状もバラバラだ。基本的には右脳と左脳と役割が違う。高次脳機能障害という言葉は厚生労働省が定義したが、それは精神的なものは含まない。必ず脳出血や脳梗塞など、必ず脳に傷がついたものだ」

「身内が亡くなっても涙が出ない」41歳の“蘇生”を繰り返す毎日…記憶喪失の現実と謎

 ひろゆき氏は「何かきっかけがあると、昔の記憶が出てくることもある。キーワードやフラッシュバックで紐づいて、事故前の記憶なども覚えている。初めてのデートの話もあった」という。

 ひろゆき氏の投げかけに、大庭さんは「そうだ、ありました」と思い出した。

「言葉で紐解いていくというか、引っ張っていく。ちょっとした軽いフラッシュバックが起きる感覚だ。小さなもの手繰り寄せてまとめて一つの形にしていく」

 高次脳機能障害で良かったと感じることを聞かれると、大庭さんは「感情がちょっと欠けているところがあるので『悲しい』がわからない。身内や親族で近い人が亡くなっても、涙も出ないし、何の感情の波もない。そういう意味では傷が少なくて済むのかもしれない。すごくお金がある人を見ても、妬んだり、羨ましいと思ったり、そういう気持ちはない」と答えた。

「身内が亡くなっても涙が出ない」41歳の“蘇生”を繰り返す毎日…記憶喪失の現実と謎

 ひろゆき氏は「ただ、大庭さんは話しているとすごく面白いし、一緒にいて楽しい。でも、欲求がないから、食欲も睡眠欲もない。薬を飲むときに無理して食べている」とした上で、「同じ行動をし続けることが割と大庭さんは好きなので、同じ生活ができればよくて、いつものスーパーで、いつものゼリーがあればいいみたいな人だ。楽しい感情だけしかない、正義感も強くて、お坊さんに近いものを感じた」とコメント。

 大庭さんのようなケースは多いのだろうか。渡邉氏は「そんなにないと思う」とした上で「ただ、記憶の中枢である海馬は脳の中でもけっこう弱いところだ。脳の奥深いところにあっても、事故で低酸素になったときなど、記憶障害自体は結構頻度が高い」と説明する。

 大庭さんは今後どのように過ごしていきたいと思っているのだろうか。

「このままのんびりと1日でも長く生きていければなと思う。記憶をなくしても」

(「ABEMA Prime」より)

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