“オブジェ付きベンチ”に「排除アート」の批判 街中に増えたのは“許容できない社会”になったから?「全員が被害者だ」
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 「これは排除アートですよね」。先日、Twitterであるベンチのデザインが一部で話題になった。

 「排除アート」とは、駅や公園などの公共の場所で、ホームレスが寝転がれないようにしたり、用途以外の使い方ができないようデザインされたものに対して使われる言葉。今回話題になったのは、11月1日に愛知県で開業するジブリパークに合わせて愛・地球博記念公園内に設置された、オブジェがあしらわれたベンチだ。愛知県によると、公園は19時に閉まるため寝泊りはできず、その目的も記念写真を撮ったり作品の世界に触れてもらうためで、それ以外の意図はないとしている。

【映像】「排除アート」の実例

 近年、公共のスペースに置かれたベンチやオブジェなどのデザインが「排除アートだ」と指摘されるケースが増えている。東京では、渋谷に設置されたオブジェやミヤシタパークのベンチ、新宿駅の地下通路に設置されたオブジェなどが、ホームレスの排除を意図したものではと批判を受けた。

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 排除アートは誰のため、どうして生まれるのか。12日の『ABEMA Prime』は議論した。

 前述のオブジェ付きベンチについて、公園のベンチのデザインも手掛ける株式会社グランドレベル社長の田中元子氏は「これに関しては別にいいと思っている。“楽しませよう”と思って作られたことがありありとわかることと、元々ベンチがあったところに増設されたもの。私は彫刻だと思って見ている」との見方を示す。

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 田中氏によると、排除アートの増加は「誰かが意地悪をしたり、人を排除してしめしめとほくそ笑んでいるわけでは決してない。公共空間や公共物の使い方が荒々しいから、管理するほうが困ってしまって『使えないように、近づかないように』と、リスクを避けていった結果だ」という。

 実際にデザインする中で、田中氏が“突起がないベンチ”をクライアントに提案したところ、「恒常的に設置するなら手すりが必要」との要望があった。この裏には「長居させたくない&横にさせたくない」「傷つけられたり壊されるのが怖い」という意図があるという。結果、高さ5センチの手すりをつける一方で、いつでも外れるように可動ネジで固定することを落とし所にしたということだ。

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 「個人的には、公共空間や公園など『公』の字がつく場所や物は、不特定多数の方に両手を広げていてほしいという願いがある。そうでないと、私自身も含めて“ここには来ないで”“これは使わないで”と、街の中でなにか行動制限をされているように感じるからだ」と田中氏。

 一方で、「そのベンチを誰が管理しているかということがある。管理者がお金も時間も手間もかけて、汚されたり壊れたりしたものを修復して、また戻すという作業をされている。その労力を無視し続けるわけにはいかないと思っている」との考えを示した。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「管理が大変ということだけではなくて、クレームが怖いというのもあるわけだ。結局、我々はあまりに清潔でピュアな社会を作り上げたんだと思う。『ゾーニング』という意見もあるが、それは社会を分断させるだけだという話になり、どこまで清潔さを求めるのかということになる。社会はそんなに清潔ではないのに、許容できない状態になってきている。ホームレスが一般の人に危害を加えたケースはほぼなくて、逆に殺されたりするケースが多くあるわけだ。危害と不快がごっちゃになって語られてしまっていることに問題があると思う」と投げかける。

 田中氏は「ベンチが少なすぎることが根本的に問題だ。ベンチが1基しかなければ、“あそこであいつが寝ていやがる”とムカッとくるのはわからなくもない。ホームレスの方々は居場所をすごく選ぶというか、できるだけ迷惑がかからないようにという方がすごく多い。そういった意味ではベンチが1000基あって、“誰かは寝ているし、私もここに座る”と誰にとっても使いやすい状況にまだ伸び代があると思っている。ホームレスの方も、家のある方も全員被害者だ。その被害を誰が作ったのかというと、誰かの悪意でできたものでは決してない。“清潔でいたい”“安全でいたい”“私にとっていいものでありたい”がせめぎ合った結果、自分の首を絞めているような構図になっている」と指摘した。

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 その上で、「愛知のベンチの話に戻ると、“かわいい物と一緒に写真を撮って楽しんでください”という、誰かに喜びをプレゼントする気持ちを排除するの?ということだ。線引きが難しく、誰もが納得いく形はない。いろんな人がいて、自分が100%納得いかなくてもうまくやっていけるという状況を作らないと、根本的に解決しないだろうと考えている」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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