10月15日(土)に東京・大田区総合体育館で開催されたキックボクシングイベント『RISE WORLD SERIES 2022』のSuper Fight! スーパーライト級(-65kg)。本戦全11試合が行われた内、会場からの声援が“瞬間最大風速”を記録したのが白鳥大珠(TEPPEN GYM)とYA-MAN(TARGET SHIBUYA)の一戦だ。
熱狂を生み出すまでの伏線はいくつもあった。キャラが先行しつつも、試合ではしっかりと勝利を収め続けるYA-MAN。対するは、大舞台での負けが目立っていた“キックボクシング界のプリンス”こと白鳥大珠。Twitter、記者会見での“舌戦”も、盛り上がりを作るのに一役買った。
結果は、3対0で白鳥大珠の判定勝ち。2Rでダウンを取られ劣勢だったYA-MANも、最後まで足を止めて殴り合うなど、見どころが満載の中、勝者の白鳥に試合後話を聞くことができた。
(激闘を物語る鮮血。右スネの傷は1ラウンドにカットしたもの)
■YA-MANに触発されスイッチが入った
――今大会のメインビジュアルでも「イケメン(白鳥)vsイケメン狩り(YA-MAN)」という煽りがされていましたが、それを差し置いて素晴らしいファイトでした。
白鳥 いや〜、もうYA-MANも制作側もずっと煽ってくるから乗っかってましたけど、そんなことどうでも良いぐらい「勝ち」にこだわってましたね。試合が決まってから、練習後、家でも過去の試合映像を見たりとか、毎日ずっと格闘技のことを考えていて、メンタル的に不安になることもあったんです。だから、こういう結果が出て本当にホッとしてますね。
――いろいろと対策はしていたと思うんですが、プラン通りに進めることはできていたのでしょうか。2Rでは膝蹴りによるダウンを奪いました。
白鳥 途中までは、って感じですね。膝のシーンは、何度も練習してたので、その通りに行って良かったです。(同門の)天心からも、「距離が詰まってきたら膝入れよう」と言われたんで。ただ、最後はYA-MANの気迫に押されてしまったかなと。
――試合前のインタビューでは、「YA-MANの喧嘩ファイトには付き合わない」と話していましたが、後半以降はバチバチに殴り合っていましたね。
白鳥 最後までスタイルを貫き通したかったんですけどね。結構、すぐスイッチが入っちゃうので、今回も相手のペースに乗っちゃいました。そこはYA-MANの強さでもあるし、自分の弱さでもあるなっていう感じですかね。
――YA-MAN選手と実際戦ってみて、どういう印象を受けましたか?
白鳥 気迫が全面に出ていて、本当に気持ちの良い選手だなと思いました。最初はいらんことばっかり言ってくるから、マジで嫌いだったんです。けど、試合が終わると爽やかでギャップがあって 「あ、こいつ好きだな」っていう。なんか自分のことを「モテない」って言ってるみたいですけど、格闘家っていうのは、リング上でカッコよければモテるんで……まあ、あれはモテますよ(笑)。
(試合後の控室での一コマ。左膝を上げ「膝入ったね」と笑顔の那須川天心)
■天心たちのように「格闘家」と聞いて、パッと名前が出てくるような選手に
――指田(さしだ)烈選手、那須川龍心選手、風音選手と、今大会は同じ「TEAM TEPPEN」の選手が多数出場される中で、さらに最年長として、人知れずプレッシャーはあったのではないでしょうか。
白鳥 そうですね……僕も年取ってきたっすよね(笑)。メインに出た風音とか、後輩みんなが強くなっている中で、結果が出ない自分に不甲斐なさとか悔しさは感じていて。そういう意味も含め、これからトップに行くには、さらに今後格闘技を続けていくには絶対に落とせない試合だったなと思っています。
――「よく負けてる」っていうイメージを持たれていると自身でも話していましたが、これで少し払拭できたのでは。
白鳥 ねえ……なんでなんですかね。たしかに今年『THE MATCH』では負けましたけど、その前は勝ってるんですよ。直樹選手、原口健飛選手と強い選手に2連敗したのが印象深いのかな。まあ、これで再スタートできるし、徐々にやり返して行きたいですね。
――勝利後のリング上でも「12月25日、試合に出させてください!」と直訴していましたね。もう再来月に迫っていますが、あまり短いスパンは気にならないのでしょうか。
白鳥 ガンガン試合していくのが自分には合っているんですよね。前に一年に8試合ぐらい戦ったことがあって、正直身体はキツかったんですけど、すごく人生が充実してるなと感じたし、成長も実感できて。もしできるなら、誰でもいいので組まれた相手と戦って、今年を気持ちよく締めくくりたいなと。
――いま勢いに乗っている選手を破ったことで、白鳥選手の新しい章が幕を開けたようにも感じます。今後どういう存在になっていきたいですか?
白鳥 「格闘家」と聞いて、パッと名前が出てくるようになりたいですね。天心、武尊選手、朝倉選手に堀口選手というような。YouTubeやテレビで知名度が上がる人もいるんですけど、そういったことを抜きにして、“純粋に強い選手”として覚えられていきたいです。