16日夜、東京・池袋の「サンシャイン60ビル」が突然物々しい雰囲気に包まれた。午後6時ごろから、ビルの高層階にある飲食店で約100人による貸し切りパーティーがスタート。その後、乱闘騒ぎが発生した。
警視庁によると、通報を受けて警察官が駆け付けた際、店内では料理が飛び散り、皿やグラスが割れ、扉も壊れていたという。現場に居合わせた人は「中国人の方が多かったと思う。スーツを着ている人とか、それを囲うようにガタイのいい人とかがいて、けっこう怒っていた気がする」と話す。
捜査関係者によると、このパーティーは準暴力団、いわゆる"半グレ"である「チャイニーズドラゴン」のメンバーらが幹部の出所を祝い、開いたものだということだ。内部事情に詳しい人物によると、これまで明確に組織化されていなかったが、会長というポジションを新たに作り、ピラミッド型の組織を作ろうとしているという。今回の事件は、その派閥争いの中で起きたそうだ。
これまでも恐喝や詐欺、覚せい剤の取引などで逮捕者を出しているチャイニーズドラゴン。しかし、半グレ集団には暴力団対策法が適用されず、摘発への壁があった。
■今回の乱闘騒ぎに元刑事「警察にとってはチャンス」
10年以上前に暴力団をやめ、犯罪抑止や半グレ脱会支援活動などをしているサトウさん。今回の騒動について、「計画的ではなく、(別のグループが)威嚇や脅しに来た突発的なものだった」と話す。
サトウさんによると、チャイニーズドラゴンは中国残留邦人の子や孫が主なメンバーで、葛西や王子、池袋、新宿、赤羽など地域ごとにコミュニティ化。正確な規模は不明だが300~500人程度だという。
「ドラゴンは『怒羅権』という漢字3文字で表現される。壮絶ないじめを受けた人たちの怒り、そして自分たちの権利を守るというのが元々の始まりだ。1980年代からある組織で、その時に10代、20代だった人が、単純計算で今は50代、60代近くになっていると思う。一口に半グレといっても、自ら会社をやっている人もいれば、犯罪で経済活動をしている人もいる。本当に多様な組織だ」
最近になって内部のパワーバランスに変化が生じ始めたという。
「今までは地域ごとにそれぞれ統治していたのが、1つになった。若手の人を会長としたので、上を目障りに思う若手グループが多く発生した」
元埼玉県警捜査一課刑事の佐々木成三氏は「離合集散が繰り返されるので、つながりなどの把握が難しかった」と説明。一方で、「この事件は警察にとってはチャンスだと思っている。これだけの人数が集まって違法行為をしたということで、警察は捜査でメンバーの個人情報やある程度の証拠を強制的に押収できる。今まで把握できなかったグループの情報がわかってくる」との見方を示した。
■「準暴力団や半グレの背景にあるのは、行き場のないエネルギーだ」
チャイニーズドラゴンを指定暴力団とすることはできるのか。佐々木氏は「組織構造がしっかりしているなど、明確な組織であることが必要。チャイニーズドラゴンは離合集散が繰り返されているほか、中には犯罪行為をしていない人もいるわけで、全員を対象にして規制するのは難しい。警察も(暴力団に)指定したいとは思っているが、ハードルは高いだろう」と回答。
一方で、「準暴力団だから取り締まりができないわけではない。各種法令を駆使して、違法行為は積極的に事件化するというのが警察の姿勢だ。過去には特殊詐欺、違法風俗をやっていた半グレの集団を一斉摘発して壊滅したこともある」と説明する。
指定暴力団の取り締まりは厳しい反面、足を洗った人の受け皿はあるのか。サトウさんは「やめた後の5年間は口座を作れなかったり、携帯も借りられなかったり、経済活動が一切できない中で生きていけと言われる。こうなった時、仲間の助けが善意であればいいが、そうでなければもう一度悪い道に染まっていってしまう」と懸念を示す。
そんな中で国や行政のサポートは「まったくない」と指摘。官民の協力が必要だと訴えた。
「暴力団の問題に関しては、やめた後の環境を整えていかなくてはいけない。犯罪で執行猶予がついた場合は保護観察の期間があったりするが、例えばこれに似たような制度を作る。一律の『5年』というのもどのような経緯なのかが不透明だ。しっかりとしたルール化をしていかなければいつまでたっても形骸化したままだ。
準暴力団や半グレの背景にあるのは、具体性のない行き場のないエネルギーだ。それらをどう違うかたちで表現できるか。行政だけではなく民間の力も借りて、協力してこういった活動をできればと思っている」
(『ABEMA Prime』より)
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