「国会の大揉めを見るのが嫌」「野次はかわいそう」 若者は“対立”が苦手? 「子ども会議」に学ぶ議論のあり方
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 「学生と話していたら、彼女らは『対立する』とかキツイ言葉を使うのが怖くて大嫌いで、国会中継や討論番組は耳を塞ぎたくなるという」

 先日、Twitterで話題になったある大学の関係者の投稿。その学生は、たとえテレビであっても人が対立した様子を見るのが嫌で、国会中継や討論番組が苦手だという。

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 意外と同じような人は多く、松田さん(27)もその1人だ。「国会で(議員が)大もめしていて、(野次などを)言われているのを見ると“かわいそう”“自分が言われたら嫌だな”と思うと、もう見なくていいやとなる」。

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 中には、リアルな生活でも人との対立をなんとか避けようとする若者もいる。平成生まれのぽん乃助さん。「普段も過激なことを言う人はあまり得意ではなくて、自分自身がコミュニケーションする時も衝突を避けるように話すことが多い」。

 とにかく対立したくないと、言葉一つひとつに必要以上に気を遣うそうだ。「『今の若い人たちは気遣いができる』ということを言われることが多いが、それは波風を立てたくないから。積極的に気遣っているというよりは、消極的な意味もあるかもしれない」。

■「子ども会議」に学ぶ議論のあり方

 対立を避けることは一概に悪いとは言えないが、時には話し合いが必要なのも事実。今、そうした消極的なコミュニケーションを改善する取り組みも始まっている。

 「きょうのこどもかいぎを始めます。よろしくお願いします」

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 現在、全国各地で順次公開されているドキュメンタリー映画『こどもかいぎ』。コロナ前にある保育園を1年にわたり密着した作品で、タイトル通り、園児同士が話し合う“子ども会議”の様子が描かれている。

 会議のテーマは「結婚して子どもがほしい?」「水って何?」「どういう時にケンカが起こる?」など日常的なことから、哲学的なこと、中には「戦争ってどういうものだと思う?」といった内容も。こうした対話を通して、園児たちはコミュニケーション力や理解力、集中力などさまざまな力を育てていくそうだ。

 自身もあまり対立や言い争いが好きではないという、映画『こどもかいぎ』監督の豪田トモ氏。そんな中、『こどもかいぎ』の撮影で圧倒される場面があったという。

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 「対話というと、聞く力や話す力のコミュニケーションの部分だけが注目されがちだが、実は話を聞いてもらうことで自己肯定感が上がっていったり、共感性や仲間意識が高まったり、違った意見があると知ることで多様性が芽生えたりといろいろな要素がある。それは映画を撮るまでわからなかった部分で、すごく圧倒された」

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「Twitterを見ていると、中高年の人たちが信じられないぐらい罵り合いを毎日やっている。あれを見せられた若者たちが“それでもやっぱり対立が大事だよね”と思うだろうか。これを若者論で考えるのは間違っていて、社会的な問題として捉えたほうがいいと思う」と疑問を呈した上で、豪田氏の視点に「それこそが本質的な議論だ。いま国会やSNSで行われているのは単なる殴り合いで、そういう議論を幼稚園や小学校の時から教育することが大事だ」と述べる。

 これにパックンは「大事なのはディスカッションとディベートの違いを理解すること。前者は仲間と話し合って解決策を探り、話が終わっても仲良くする。後者は、敵と戦って第三者を説得する、味方につけるというものだ。議論と聞くと我々はよくディベートをイメージしてしまう。ネットでは自分の意見に合わない発言をした人を説得するのではなくて、自分の仲間を増やそうとして攻撃するだけだ」との見解。

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 佐々木氏は「結局、ディベートはエンタメだ。ディスカッションは最後、解決策・ソリューションを考えるから面白くはない。どうしても我々は“論破のほうが面白い”という方向に流れがちなので、エンタメとして成立する“信頼関係のある議論”が必要なのかもしれない」とした。

 『こどもかいぎ』では、争いが生じた時に子ども同士で話し合いをさせる「ピーステーブル」という取り組みにも密着している。豪田氏は「ただ場所を変えて、少し時間を置いて好きにしゃべらせる。最初はうまくいくのかなと疑問だったが、実際にやらせてみると、お互いに全然噛み合わないけど言いたいことを言い合って、2分ぐらいしたら“仲良くする?”という感じで戻っちゃう。それは世紀の発見だった」と驚きを口にした。

■“若者との接し方” 感謝は質より量が重要?

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 なぜ若い世代は対立を嫌うのか。ツナグ働き方研究所所長の平賀充記氏は「一つはオンラインコミュニケーションがすごく発達してきていること。コロナの影響で大学生はほとんどオンライン授業になり、彼らのことを“リモートネイティブ”と呼んでいるが、“会う必要がある時に会えばいい”となっている。モニター越しだと表情や熱量が伝わりにくく、コミュニケーションの生っぽさが減ってきている」と指摘。

 佐々木氏は「コミュニケーションの手段が多様化しているということだ。今までは対面か電話しかなかったところに、メッセージやLINE、将来はメタバースも出てくるだろう。いろいろな手段でつながっているわけだから、その中の1つを使って伝えるのはありではないか」との考えを示す。

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 では、“若者との接し方”はどのような点に気をつければいいのか。平賀氏は「褒めるよりも、もはや感謝。『ありがとう』と言ってあげるほうが喜ばれるという。褒めては欲しいんだけど、人前で褒めると悪目立ちする、逆に浮いてしまうという傾向もあるようだ。SNSで“いいね”を軽く送り合ったりするように、質より量で“いいね”“ありがとね”とレスポンス速くコミュニケーションをしてあげると、若い人にとっては自然な感じになる」とした。(『ABEMA Prime』より)

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