サッカーボールを自由自在に操り、華麗なパフォーマンスを見せる「フリースタイルフットボール」。毎年、世界大会が行われるなど、世界中で人気のスポーツだ。
その選手たち、通称「フリースタイラー」が腰にぶらさげ、ボールの持ち運びに使用しているのが、見た目もスタイリッシュな「ボールホルダー」だ。
いまでは累計2000個以上も販売され、世界20か国以上で使われているというこの「ボールホルダー」。実は日本で作られているのだ。
ボールホルダーの生みの親、高松恵三さん(74)。ボールホルダーは、一つ一つ手作業で制作している。アルミと革が合わさった斬新なデザイン。
口が大きく開くことでボールの取り出しが容易になるなど、機能性も抜群だ。実はこのボールホルダーが生まれたのは、恵三さんが、大好きなお孫さんにプレゼントするために作ったのがきっかけだった。
「自転車の前のカゴにサッカーボールを入れて公園とかに行く。そのときに、縁石とかに自転車で乗った時に、カゴからボールが飛び出しちゃうという。じゃあ本気でボールを運ぶとか、ぶら下げるとか、片付ける方法を考えてやろうと思って」
以前はクラシックカーの復元を行うレストア作業を行っていたという恵三さん。引退後は、様々な遊び道具を、孫たちの為に手作りしていた。
そんな中、試行錯誤を重ねて出来上がったのがこのボールホルダーだった。当時小学生だった2人の孫は、ボールホルダーを見て「かっこいい」と思ったという。
そして、そのカッコよさに驚いた人がもう1人。2人の父親で、恵三さんの息子の雅幸さんだ。
「また変なものを作って来たのかなと正直最初疑っていたが、実際使ってみるとすごく斬新でかっこよかったので、これはすごいものを作ってきたなと感動した」
そんなボールホルダーを「みんなに見てもらいたい」と思った雅幸さんが写真をSNSに投稿。すると、海外の反響が多く寄せられたという。
「海外の方から、すごく食いつきがよくて、『使わせてほしい』とか、『どこで売ってるんだ』とか、たくさん来た時期があって」
海外のフリースタイラーから「使わせて欲しい」との連絡が相次いだのだ。はじめは無償でボールホルダーを送ってあげていたこともあったという。
フリースタイラーがボールホルダーを使っている様子をSNSに投稿するとその反響から、さらに問い合わせが増加。ボールホルダーを作り続けるため、販売することを決意した雅幸さんは、父・恵三さんの名前を冠したブランド『KEI-CRAFT』を立ち上げ、販路を広げた。
「やっぱり嬉しい、自分が作ったものが売れるって。どんどん改良していって物も良くなっていった感じ」
ボールホルダーが少しずつ売れるようになってきたころ、毎年、チェコで行われるフリースタイルフットボールの世界一を決める大会「スーパーボール」への協賛を依頼され、チェコを訪れた恵三さんと雅幸さん。大会当日、信じられない光景を目撃する。
「みんな腰にぶら下げて、街中でも見受けられるくらいに使ってくれていて、『ほんとかよー』って感じね。孫たちに電話したよ。『すごいことになってるよ』って。(孫たちは)『じいじやったじゃん!』って感じで(喜んでいた)」
多くのフリースタイラーの腰には、恵三さんが作ったボールホルダーが......。また、大会の表彰式で優勝者に贈られた賞品もボールホルダーだった。
「会場で1,2,3位の方達が頭の上に『頂きましたー』と掲げてくれたときには、さすがに感動した」
そのあと、世界の多くの大会で協賛を務めたKEI-CRAFTは、フリースタイルフットボールの世界では知らぬものはいないブランドに成長した。
国内では、子どもたちにも使って欲しいと、比較的安価なモデルを開発。恵三さんの指導のもと町田市の工場で作られているこのホルダーは、現在、町田市のふるさと納税の返礼品にも選ばれている。
「ここまで、この状況になるとは思っていなかったし、ただ、孫に喜ばれればいいなってぐらいで作っていた。でも、ここまで来たのも本当に孫のおかげというか、孫に逆にに感謝しなくちゃいけないって感じだね」
(『ABEMA Morning』より)
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