横浜市の寺「慈陽院なごみ庵」で行われている、その名も『死の体験旅行』。
参加者には、事前に20枚のカードが配られ、自分の大切な人やもの、風景などを記入。そこから、住職の語りによる死の体験旅行が始まる。病にかかり命を終えていくまでの物語だ。
参加者は、その物語の主人公として、死に近づいていく状況を疑似体験する。物語が進むにつれ迫られる、取捨選択。参加者は、死に近づくことで直面するできなくなること、行けなくなる場所、大切なものや人との別れと向き合うことになる。
「大切なものを書き出してそれを1つずつ失っていくという作業を繰り返していくが、書き出すことによって自分の中から整理されていく、大切なことだったり自分がこれからどうしていきたいかというところまで考えながら言語化、可視化することの重要性も感じた」(「ABEMA NEWS」の楪キャスター)
終了後に行われるのが、参加者同士の感想を話し合うシェアリング。人に話したいという思いが自然とあふれるのか、初対面にも関わらず、参加者は自分の素直な気持ちを打ち明け合った。
「だんだん捨て去っていくときに、5枚くらいになった時に最後は奥さんだなと気づきましたね。20枚あると捨てやすいものもあるが、だんだん捨てにくくなる。そこからはあきらめるしかないんだなという気持ち」(参加者)
開催される度にすぐに席が埋まる人気で、これまで4000人以上が受けた、死の体験旅行。
「元々は欧米の医療関係者向けの研修。想像の中で自分の死を体験していって、特に医療関係といってもホスピス、終末医療施設の医療者向けのものなので、自分が診ている患者の気持ちに寄り添うという発祥のもの」(慈陽院なごみ庵・浦上哲也住職)
浦上住職が行う死の体験旅行は、その医療従事者向けのワークショップを、一般の人でも受けられるように数カ月かけ作り直したもので、今でも改良を重ねているという。
自宅で家族を看取ることが減り、死について意識する機会が少ない現代だからこそ、人は人生の終わりと向き合いたいと思うのではないかと浦上住職は話す。
「(死について)四六時中考えることでもない。必ず来ることなのでそこに向き合っていくのは生きるのに誠実なこと。ただ『考えなさい』と言ってもなかなか考えづらいことでもあるので。今の時代だからこそ死を感じとるという講座が求められているのかなと」
(『ABEMAヒルズ』より)