すでに“ボクサーモード”か。10月30日、後楽園ホールで開催された『RISE 162』で、那須川天心がリング登場を果たした。
この大会のメイン前、寺戸伸近の引退エキシビションと引退セレモニーが行われた。寺戸は55kgを中心に一時代を築いたハードパンチャー。全日本キックボクシング連盟、Krushで活躍し、RISEでも第2代バンタム級チャンピオンとなっている。またKrushでは武尊との対戦も。
そんな寺戸と最後にエキシビションで闘うことになったのが那須川だ。那須川はRISEバンタム級の第6代チャンピオン。寺戸は同階級の先輩王者となる。エキシビション登場は大会当日昼の発表。いわばサプライズだ。
すでに6月の『THE MATCH 2022』での武尊戦でキックボクシングのラストマッチを終えている那須川。現在はボクシングデビューに向け練習を積んでいる。今回はエキシビションという形で、リング上での“最後の蹴り”が見られるかと思われた。
だが、那須川は寺戸の蹴りをブロックするものの、自分から蹴ることはなかった。寺戸のパンチをディフェンスする動きもボクサーばり。さらにロープを背負った寺戸に、超高速のパンチ連打を見舞う場面も。これには場内が大きくどよめいた。そして、そんな中で「トリケラトプス拳」のポーズを見せるのも那須川ならではのサービス精神だろう。ゴング前には、左腕をグルグルと回すパフォーマンスも。
今回は引退エキシビションであり、あくまで主役は寺戸。それでも単なる“相手役”とならず、那須川は自分自身の現状をファンに報告するような闘いぶりを見せた。
エキシビション後は寺戸を労うと同時に「いつボクシングに行くんだと言われますが、面白い発表が近々できると思います」と那須川。また「メディア出演もしていますが、誰よりも練習している自信があるので。期待していただけたら」とも。
55kgの元チャンピオン対決は、エキシビションながらさまざまな見どころがあるものになった。この舞台に向けハードなトレーニングを積んできたというだけに、寺戸の動きも軽快。さすがにブランクを感じたようだが、見応えのある3分間は寺戸と那須川だったからこそだろう。多くの仲間が見守る中、「格闘技人生、幸せでした。みなさんに出会えて最高でした」という言葉とともに、寺戸はリングを降りた。
文/橋本宗洋