将棋の棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメントが11月3日に行われ、藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が佐藤天彦九段(34)に敗れた。この結果、藤井竜王は敗者復活戦に回ることに。初の棋王挑戦と年度内六冠獲得への道は途絶えていないが、今後は敗者復活戦を勝ち抜き、挑戦者決定二番勝負を制することが求められる。
年度内六冠獲得を目指す藤井竜王に“黄色信号”が灯った。勝者組準決勝では、名人3期、さらに2015年度に棋王挑戦経験を持つ佐藤九段と対戦。振り駒の結果、佐藤九段の先手で「矢倉」の出だしとなった。過去3度の対戦ではすべて藤井竜王が勝利を飾っているが、矢倉は佐藤九段の得意戦法。中盤では、各所で駒がぶつかる激しい展開となった。
難解な進行を辿る中、藤井竜王は先手の玉頭を目掛けて攻撃。佐藤九段は玉の退避を余儀なくされ、形勢は藤井竜王側に傾き出した。さらに先手陣の不安定な囲いを遠方から攻め立て、佐藤玉を追撃。後手は強固な囲いを元に、強烈な桂打ちからリードを広げた。
しかし、苦境に立たされた佐藤九段が桂打ちの一手から勝負手を連発すると、形勢が逆転。後手の堅陣を切り裂くように優位に立った。互いに秒読みの中、藤井竜王もなんとか食いつき勝利への道筋を探ったが、再逆転は出来ず。互いに持ち時間をフルに使う大激闘を佐藤九段が押し切り、大きな一勝を手にした。
勝利した佐藤九段は、7期ぶり2度目の挑戦へ前進。「最後までわからない将棋だなと思っていました。(桂打ちは)スピード重視の手。どうなっているかわかってなかったです。(勝ちを意識したのは)こちらの駒が金気が多い感じになって、確実に相手の王様が詰むかなという最後の最後でした」と一局を振り返った。次戦では、羽生善治九段(52)対伊藤匠五段(20)戦の勝者と対戦。「ここまで来られたのは良かった。厳しい戦いが続くので、今日と同じように自分の力を出し切ることを第一に考えたい」と話した。
現在五冠を保持する藤井竜王だが、棋王戦は過去5回の参加で予選敗退が2回、挑戦者決定トーナメントでも最高3回戦で敗退と挑戦経験がない。今年度、五冠を防衛して棋王初挑戦から奪取を果たした場合は最年少で六冠達成とあり、大きな注目を集めている。しかし本局の敗戦により、敗者復活戦に回ることに。棋王戦は独自の敗者復活戦方式を設けており、本局以降は2敗失格ルールとなる。まだ挑戦権獲得が消滅したわけではないが、ここから敗者復活戦、挑戦者決定二番勝負の勝ち抜けが求められる。厳しい道のりを辿りことになるが、「目の前の一局に集中して頑張りたいと思います」と表情を引き締めていた。
(ABEMA/将棋チャンネルより)