直近で相次いでいる、適応障害や遺伝性の難病など、人気声優の病名公表と活動制限のニュース。さらに、タレントで参議院議員の水道橋博士もうつ病であることを明かし、所属するれいわ新選組の山本太郎代表が議員活動休止を発表した。
また近年では、芸能人の新型コロナ感染の発表も珍しくなくなった。一方で、本人からの公表がない中で、メディアが人気タレントの入院や病名について報じ、物議を醸すことも。Twitterでは「休むことで無理をしなくていいという空気が広がる」「どんな病気でも詮索されて気分いい人なんかいない」などと様々な意見があがっている。
病名の公表、そしてその後の社会のサポートとあり方について、2日の『ABEMA Prime』は議論した。
広島大学医学部客員准教授で医療ジャーナリストの市川衛氏は、芸能人の立場として「治療法が確立されていない病気を啓発したいという、いわばポジティブなケース」「治療のために長期休業する場合に、『なんで休んでいるんだ』と騒がれたり、問い合わせが殺到するリスクを考えて、先に自分から言うもの」と2つのパターンを説明。
「仕事をする上で影響が出る関係者には伝えるのが一般的な考えだ」というが、SNSなどで公に発表すること、した後の葛藤などはあるのか。去年、「脊髄空洞症」に罹ったことを公表し、手術やリハビリのため一時休養したAKB48の柏木由紀は「よかったのは、『自分も人間ドックに行く』『検査をしたら同じ病気が見つかって、柏木さんを見て頑張る』という意見があったこと。一方で、みんなが完治するわけではなくて、『今も正直しんどい。柏木さんを見て希望を持ったのにうまくいかない』という声も届いたりする。どっちが正しかったんだろうって、視野がそこまで広げられていなかった」と振り返る。
フリーアナウンサーの柴田阿弥は「“隠すのは悪いことではない”というのが広まるのもとても大事だ。私は長期で休むことはなかったが、少し心のバランスが崩れた時があった。これから先休むことになっても、休んでいる間は言わないと思うが、終わってから言うのはいいと思う。なぜかというと、公表してもしなくても何かしら絶対に言われるのと、時に善意でも人を追い詰めることがあると思うから。特に病気の時は、医者ではない人からのアドバイスも善意だとわかってはいるが、ネットでバーッと来ると相当しんどい。例えば声優さんだと『業界の闇だ』と言う人がいれば、水道橋博士さんに対しては『税金なんだから返せ』と言う人もいたりする。どうしても理解する気がない、理解できない人はいるので、“どっちも正解だ”というのが広がるといいと思う」と訴える。
市川氏は「ご自身が啓発の意味も込めて公表したいと思う場合は、慎重に配慮した上でしてもいいと思う。逆に病気は非常に個人的でプライバシーにかかわる情報なので、身体の不調であれ、心の不調であれ、周りから言いなさいと強いられたり、そうしなければいけないという空気に乗せられてしまうのは避けなければいけない。ただ、政治家においては、判断が一国の舵取りに関わってくるという、国民にとっても非常に重要な情報ではあるので、自分から言う必要性は一般の方より大きいと思う」との見解を述べた。
ジャーナリストの堀潤氏は「会社員時代にすごくしんどいなと思う時期があったが、やっぱり言えなかった。なぜかというと、その後の仕事にすごく影響が出るのではないかという心配があったから。悪い癖が社会にあるのではないかと思うのは、『がんの◯◯さん』とか、『◯◯の病気を克服した◯◯さん』とか、開示したとたんに主語が逆転してしまう。レッテル張りが得意な国で、公表することの圧になってしまっている気がするが、それを取っ払うにはどうすればいいのだろうか」と疑問を呈する。
文化通訳のネルソン・バビンコイ氏は、「うつ病に気付かず、それが“当たり前”だと思って生きている人は多い。病名がつくことで、“病気だから治せる”と見えるかたちにしないとなかなか治っていかない気がする。なるべく社会や周りの環境が言えるようにしなければいけないと思うが、日本の国民性として“言わないほうがかっこいい”というか、この国は難しいところがある」と指摘する。
市川氏は「日本人の優しさというか、病気だと言われたら“こうしてあげなければいけない”“大切にしてあげなければいけない”という思いは強いところがある。また、病名がつくことで勇気を得るケースもあるが、意識することで逆に挑戦できなくなってしまったり、“自分は病気なのだからこういうことは止めておこう”と行動制限されてしまうケースもある。人によるところがあるので、必ずしも言う必要があるわけではない。公益性とプライバシー権の尊重のバランスで考えられるべきで、多くの場合は後者が尊重されるべきだと思う」とした。(『ABEMA Prime』より)
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