不摂生に、様々な症状や合併症、長期間の療養、厳しい食事制限など、負のイメージを持つ人も多い「糖尿病」。その名称を変更しようとする動きがある。
糖尿病は、インスリンが十分に働かず高血糖になる病気で、大きく1型と2型に分類される。1型は全体の約10%で、小児~思春期での発症が多く、免疫の異常などが関係してインスリンが分泌できなくなる。2型は全体の約90%で、体質(遺伝)や過食・運動不足・肥満が関係しているとされ、インスリンが上手に働かなくなるが、規則正しい生活をしていても発症する場合がある。
日本糖尿病協会はこの名称が必ずしも病態を示す言葉ではないことを指摘。糖尿病の人の8割が名称変更を希望しているとのアンケート結果を発表した。山田祐一郎理事は「『尿』という排泄物の名がつく病名は、当事者には喜ばれないことは予想されること。今後、病名をなんとか変えていかなければならない」と表明。どのような病名に変更するかはこれから協議するとしている。
これまでにも、「らい病」が「ハンセン病」に、「痴呆」が「認知症」に、「精神分裂病」が「統合失調症」になるなど、病名は時代とともに移り変わってきたが、名称変更はどのような未来を作り出すのか。9日の『ABEMA Prime』は専門家とともに考えた。
調査で指摘されている偏見や差別について、薬師寺慈恵病院院長で救急医の薬師寺泰匡氏は「ここ何十年でだいぶ治療も進歩しているので、以前ほど“不治の病”であったり、生命の維持に支障をきたすようなものではなくなってきている。四六時中インスリンを持ち歩く必要があるかというと、そういうわけでもない。昔のデータを引きずったまま、生命保険に加入できなかったり住宅ローンを断られたり、結婚や昇進の障壁になっている理不尽な実態があるとしたら、改称の必要があるだろう。一方で、糖尿病に限らずだが、ある病態があった時に就労しないほうがいい場合も少なからずある。それを一緒くたにして就労を制限するのは、雑な議論だ。生活習慣病の疾患群の中に糖尿病が入っているのも、誤解を招く一因にはなっていると思う」との見方を示す。
パックンは名称変更に賛成の立場を示した上で、「記憶に新しいのはコロナの名称。『チャイナウイルス』でいいんじゃないかと欧米で騒がれたが、地名や民族名は問題になるので気をつけるようになった。フラットな病名のほうが情報もたくさん入るし、患者さんも差別や偏見を受けずに病気とだけ戦っていける」と提示。
特に「尿」という言葉を使わないでほしいという声が多いようだが、薬師寺氏は「糖尿病の病態を振り返れば、血糖値が高くなってだんだん血管が傷んでいく。例えば『むずむず脚症候群』という病名があるように、名前を聞いたらパッと症状がわかるのはいいと思う」との考えを示す。
一方で、「病気になりたい人はいないので、ことさら怖い部分を強調しなくていいのではないか。効果的な予防を考える上でも、前向きなアプローチのほうがいいだろう」とした。
日本糖尿病協会はメディアの伝え方についても指摘。例えば、糖尿病を報じる際、「生活習慣に起因する病気」と大まかなくくりで伝えたり、太った人やガツガツ食べる映像を使うことで誤った認識を与えているとしている。
薬師寺氏は「確かに“太った人”“ガツガツ食べる人”もいるが、病院に来られる患者さんには真面目な方が多く、ストイックだ。毎食ごとに血糖値を測り、インスリンを打った記録を付けているが、牛丼を食べて血糖値が200近くになってしまい、後ろめたい気持ちで来る方もいる。それを『一日ぐらいチートデイがあったっていいじゃない』と励ましながら外来をやっているのを思い返すと、偏ったイメージばかりが報道されるのがしんどいというのはよくわかる」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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