苦しんだ昆虫はおいしくない? 100億人時代に向け増産の昆虫食に”アニマルウェルフェア”は必要か
“昆虫食”の美味しい食べ方
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 15日、国連が「世界の人口が80億人を突破した」と発表した。

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 急激な人口増加による、世界的な食料不足が懸念される中、国連の機関も普及に力を入れている“昆虫食”。生産効率が良く、温室効果ガスなどの排出量が少ない“有望なタンパク源”だ。

 株式会社 昆虫食のentomoの代表・松井崇さんは「近年、昆虫養殖が欧米を中心に盛んになっている。昆虫も従来の家畜と同じような形で、大量養殖をしていく方針になる」と話している。

 日本では、未来に向けた挑戦的な研究開発プロジェクト「ムーンショット目標(内閣府)」の1つに、“昆虫が支える循環型食料生産システムの構築”が選ばれた。今年7月には、食用昆虫の研究機関や企業からなる団体が、安全で安定的なコオロギの供給を目的とした「コオロギ生産ガイドライン」を策定し、昆虫産業の拡大を目指している。

 これまでは一部の興味がある人が食べるような、ある種“サブカル的”な存在だった昆虫食。徐々に食料としての地位を認められるようになってきたが、食用昆虫の生産が産業として行われるようになるにつれ、ある問題が生まれた。

「家畜ではアニマルウェルフェアの考え方が広まっているけど、『昆虫も同じような考え方を適用しなければいけないのかどうか』という議論もでてきている」(松井崇代表、以下同)

 “アニマルウェルフェア”とは家畜を適切な環境下で飼育し、苦痛を減らすなど、快適性に配慮した管理のことを指す。フランスやドイツなどでは、“将来卵を産まない雄のヒヨコ”を生まれた直後に裁断機で殺処分していたことが、アニマルウェルフェアに反していると問題視され、規制が始まっている。

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 こうしたアニマルウェルフェアの考え方を、昆虫にも適用する動きがヨーロッパではすでに出てきている。EUに拠点を置く、食用昆虫に関する団体は“昆虫の幸福”へ配慮を求める呼びかけを行った。

 ウェルフェアの必要性は「動物が幸せに過ごす」という倫理的な観点だけではない。安全性や生産性の向上につながるという実利的な側面のほか、「昆虫が美味しくなる」可能性もあるという。

「昆虫を食用に加工するときも、いきなり熱湯に“だばーっ”とつけて殺すのではなくて、安楽死する形で加工したほうが味が良くなるという報告もある」

 昆虫食を研究する、東大阪大学の短期大学部・松井欣也教授は「ヒスタミンが出るか、出ないかというところが影響していて、長時間苦しんだ昆虫は美味しくない可能性があると感じる。環境は大事だと思っていて、密集して育てるといろいろな病気がでてくるし、餌も取り合いになる」と見解を示している。

 しかし、ウェルフェアを導入すれば生産コストもアップする。果たして昆虫にまで取り入れるべきなのか。そもそも昆虫が痛みを感じているのかについては、研究者の間でも意見が分かれていて、何か一つの基準をもって線引きするのは難しそうだ。(『ABEMAヒルズ』より)

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