「子どもの成長が楽しみではなく恐怖」 脳性まひ児補償、制度改定も抜け落ちる子が 当事者が課題訴え
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 今月10日、国会内に集まったのは、脳性まひの子どもを持つ保護者たち。野田聖子氏らも立ち会う超党派との会合で訴えたのは、「産科医療補償制度」について。2009年からスタートしたこの制度は、99.9%の分娩機関が加入する保険のようなもので、出産時のトラブルで子どもが脳性まひとなった場合、総額3000万円が支給される。

【映像】脳性まひの子どもを持つ保護者らが集まった会合の様子

 しかし、中には補償を受けられず苦しむ人たちもいる。これまでの対象は、出生時の体重が1400グラム以上あることや、在胎週数32週以上の場合。28~31週は個別審査が必要で、審査に引っかかると補償対象外とされていた。

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 一昨年の報告書で、この個別審査の基準には医学的根拠がなかったと判明。今年1月に制度が改定し、個別審査は撤廃された。ただ、これまで対象外となった少なくとも550人に対して、遡って補償が認められなかったことが問題となった。

 脳性まひの子どもへの平等な補償について、15日の『ABEMA Prime』で当事者とともに考えた。

 「産科医療補償制度を考える親の会」会員で、自身の子どもが脳性まひにもかかわらず補償対象外になっているジャーナリストの中西美穂氏は、現状と問題点について次のように話す。

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 「『医学的根拠がない』というのは制度を運営する日本医療機能評価機構が発表しているが、そう言うなら当事者のことをなぜ考えなかったのかがすごく疑問だ。そもそもの主旨として、障害児の経済的負担を軽減するということが謳われている。600億円の剰余金がある状態で、550人を救済したとしても約160億円。十分足りるだろうと交渉を重ねてきたが、『未来の維持に使う』と言うばかりだ。私たちが掛金を支払っているのに、なぜ今の脳性まひ児を救わないのかと。親の会としての活動は1年くらいだが、ようやく私たちの声が届くようになってきたところだ。

 過去に遡及するのは難しいというのが国の考えだが、私たちが求めているのは遡及ではなくて、新制度を作って救済に当ててほしいということを言っている。あともう1つ大事なのが、補償対象になると、なぜ脳性まひになったかという原因分析が行われること。それを550人分していない、対象外だからできないというのは、産科医療の質の向上の観点にも反しているのではないか」

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 一方、新生児科医・小児科医の今西洋介氏は「550人という数字は、個別審査基準を外れて声をあげている人たちの数だ。未申請の人もいるわけで、そこの把握がまずスタート地点。国は『調査する』とは言ってくれているが、どれだけ補償していいかがわかっていない」と指摘した。

 脳性まひの子どもを持つ親の肉体的・精神的・経済的負担は大きい。3歳の息子を持つ40代の母親は「3歳でも固形物が食べられず、ペースト状にしている。医師からは胃ろう(※)を勧められる」「将来に絶望しかない。子どもの成長が楽しみではなく恐怖」だという。
※おなかに穴を空けてチューブで食べ物を流し込む方法

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 中西氏は「脳性まひでイメージされるのは寝たきりが多いと思う。重度のお母さんが口にするのは、『寝返りのできない乳児がそのまま大きくなる』ということ。思い描いていた、子どもが学校に行く、就職する、恋をする、みたいなことが閉ざされたという辛さもあるし、いつまでこの子を看られるのだろうという親亡き後の不安もある。そして、自分の体重より重くなった子どもをどのように支えていけばいいのかという身体的な部分もそうだ。今、国が在宅への移行を進めているが、施設でみられなかった子どもが人工呼吸器をつけて家に帰ってくると、育児を通り越して介護、さらには看護という状態だ。寝返りをうてないので、体の向きを変えるということを2、3時間おきにしなくてはならない。気管切開をしている医療的ケア児も多いので、お母さんが仕事をできないということだけではなく、人間らしい生活ができているのかなと思う」と語った。

 脳性まひ児を20年間療育するのに必要な出費総額は、所得制限がある世帯で約2500万円~7000万円、平均世帯が自治体補助を受けた場合で約1800万円から。一方、子どもの介護で親は就労が困難になるため、収入を確保することは難しい。

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 中西氏は「母親が働ける福祉制度が追いついていないので、お金の不安がずっと付きまとう。私の子どもも将来どのように自立できるのかはすごく不安だし、お金がかかることも事実。あまり『お金』と言いたくないが、現実問題はそうだし、健やかな生活を送らせてあげたいのが親の願いだ。脳性まひは対処療法でリハビリがメインだが、今は再生医療というものが出てきている。それは自由診療で何百万円とお金がかかってくるが、かたや補償対象になってお金を使えるお子さんもいる。そういう療育の格差は非常に問題だと思う」と訴えた。(『ABEMA Prime』より)

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