19日にシンガポールで開催される「ONE 163: AKIMOTO VS. PETCHTANONG」で岡見勇信が元ONE2階級世界王者ミドル&ライトヘビー級を制したアウンラ・ンサンと対戦する。現在41歳の岡見はキャリア20年以上、UFCでも日本人最多となる14勝を挙げている実力者。じつに3年ぶりの試合を直前に控え、岡見のこの一戦にかける思いを聞いた。

― 3年ぶりの試合が岡見選手の「ビッグファン」を公言するアウンラとの対戦。いま、最も高ぶっているのは、どのような感情ですか。

岡見 色々な感情が入り混じっていますね。怖さもあるし、やっと3年間止まっていた現役ファイターとしての時を動かすことができる。皆さんの前で試合をできる喜びとか…色々とぐちゃぐちゃです(笑)。いまは、それらを整理している感じ。(少し間をおいて)でも、やっぱり安堵感かな。自分はこのまま試合をせずに終わっていくのかという思いがあった。若い選手を指導し、ともに練習してこなければ出てこなかった感情。そしてONEの舞台で戦いたかったアウンラと素晴らしい舞台、シチュエーションで戦える。もちろん試合は怖いし、結果が出るのも怖い。それは変わらないけど、ここまで来たら、試合を楽しむ気持ちを持って立ち向かいたいです。僕には必要な3年だったのかなと。3年前のONE日本大会での敗戦は、精神的にギリギリのギリギリだった。そういった意味で、試合をしていなかった3年間をポジティブに捉えています。

― 階級を上げて今回の戦いに臨みますね。

岡見 ほぼほぼ減量はありません。元気、エネルギッシュです。自分を削ることなく、自分そのものの状態で戦える。前回の日本大会では、試合翌日に写真を撮ってみたら、痩せこけていて「ファイターの体じゃないよな」と思った。それも階級を上げた理由の一つでした。当時はウェルター級で普段の91、92kgから84kgに落とす感じ。それが今は普段の体重の93kgぐらいで戦える。アメリカに練習に行き、93kgぐらいがベストという実感もあったので、それがミドル級に階級を上げた理由です。

― 今回の試合で「20年以上、培ってきたこと全てをぶつける」と。岡見選手はUFC日本人最多の14勝。自身のキャリアの中に置いて、この一戦が持つ意味は。

岡見 3年というのもそう、年齢的(41歳)にもそう。最後の最後の集大成。今までやってきたこと全て。ありのままの姿が19日に出る。先は見ていません。アウンラとの試合の後のことは何も考えていない。すべてを出すので、ありのままの姿を皆に見てほしいです。

― 以前、インタビューをさせていただいた際に、2011年、UFCのアンデウソン・シウバとのタイトルマッチは「負けるべくして負けた」「心の強さが足りなかった」「オクタゴンで対峙できる自分ではなかった」と主に心の準備不足について言及されていました。今回の一戦も、キャリアの中では重要かつ節目の一戦。2011年のご自身と比べて、試合を直前に控えた現在の岡見選手はいかがですか。

岡見 アンデウソンや相手との勝負もそうですけど、その後も続く“自分との勝負”が格闘家として大きなものになってくる。今までの自分は結果がすべて。それを乗り越えて乗り越えた先に勝利がある。自分を追い込んだ先に勝利があるという戦いの連続でした。ただ今回は格闘技の原点に立ち返って「格闘技を楽しもう」と。指導してきた格闘DREAMERSの若手を見ても、厳しい、苦しい中にも楽しむ気持ちを解き放って、負ける事なんて考えず、結果にとらわれずに自分をすべて出すんだという。そこは逆に自分が勉強させられました。「やっぱり楽しまないとダメだよね」って。結果ありきのスポーツではあるけど、そこに囚われて自分を追い込むだけというのはもったいない。

― この試合でプロ52戦。この試合で勝ったら「タイトル挑戦も」と話されていましたね。

岡見 こればっかりは戦ってみないと分からない。戦った後にどんな感情になっているのか。全く想像ができないですね。

― 現在41歳。キャリア20年以上の実績があります。そんな岡見選手が、この年になって格闘家としてのゴールやキャリアの終え方を意識することはありますか。

岡見 終わりは常に意識します。3年前はどういった着地ができるか、コロナが来ることだって思ってもみなかった。ただ現役でいる以上は上を目指している。それが無くなったときにすぐに辞めると思います。
 
― 勝つこと、ベルトを獲ること、様々な形があると思います。41歳の岡見選手が考えている格闘家としてのゴール(理想)があれば教えてください。

岡見 相手に打ち勝ち、自分に打ち勝つことができた。そういったことを心の底から思えたら、いつ終えてもいいと思っています。ただ、もちろんベルトは欲しい。欲を言えばキリがないです(笑)。アウンラは引いたら勝てない相手。前に出続ける姿、そこから勝つ姿を。“ありのままの姿”を見届けてもらえたらと思います。

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