11月19日にシンガポールで開催されたONE Championship「ONE 163」で青木真也とザイード・イザガクマエフ(ロシア)が対戦。試合は1ラウンド、イザガクマエフが青木に強烈な右を叩き込んでダウンを奪うと、追い打ちのパウンドでTKO勝利を収めた。試合後、青木はABEMAの取材に対して号泣。「試合する前に帰りたいと思って…秋山さんとやったときから、気持ち切れてんのよ」などと、涙ながらに苦しい胸の内を明かした。
イザガクマエフはダゲスタン共和国出身のヌルマゴメドフ門下、39歳の青木にとって同階級で最強かつ大本命の刺客との対戦となった。青木は連敗中だが、秋山成勲戦とケイド・ルオトロとのグラップリング戦など、新たなルールやスペシャルマッチで新たな挑戦を続けてきた。
1ラウンド序盤、プレッシャーをかけるイザガクマエフに青木は合わせるように遠距離からミドルキックとローを折り混ぜる。一方のイザガクマエフは動じず強いプレッシャーをかけると、伸びのある左ジャブやローなどシャープな攻撃を繰り出していく。
すると開始1分、イザガクマエフが左の強いカーフ、フェイントをかけて渾身の右を青木のアゴに叩き込んでダウンを奪うと、上からパウンドの嵐。背中を向けたまま反撃できない青木の様子を見たレフェリーが試合をストップした。
試合後、イザガクマエフは青木を抱えて称えつつ、マイクで「試合前に”殺してやる”とトラッシュ・トークもあったがアオキは素晴らしいレジェンドで、彼から色々学んだ。アイ・ラブ・ユー青木」とリスペクトのコメント。次戦はライト級王者のクリスチャン・リーへの挑戦を表明した。
決定打となった右フックについてABEMAゲスト解説の志朗は「ストレートとフックの間の見えないパンチで、立ち技選手レベルのパンチ力」とイザガクマエフの打撃技術を称賛。一方、完敗とはいえ最強の敵へ挑んだ青木に視聴者からは「それでも青木は一瞬ドキドキさせてくれたよ」「打撃で勝負して覚悟がみえた」など、その姿勢を称える声が多く聞かれた。
試合後の青木は「満足してるんですよ。はい…もう…あの…」と言葉は途切れ途切れ。
「帰りたいと思って…試合する前に帰りたいと思って、初めて。もういい。突っ張れなくなっちゃってさぁ。人に辛く当たれないのよ、もう。人に辛く当たってまでやろうと思わないのよ…もう。よく頑張りました。よく、みんなを敵に回して頑張りました」
そのようにこれまでの葛藤を口にした。さらに青木は「秋山さんとやったときから、気持ち切れてんのよ、もう…。何のために頑張っていいのか、分からないのよ。もう嫌われるのも疲れた。人に辛く当たるのも疲れた」と弱気な発言を繰り返した。
先月、日本での記者会見後のインタビューで「僕がやってるのは競技じゃなくて“闘い”だから。試合の結果じゃなくて生き様で見せている」と語った青木。勝っても負けても、その“生き様”で人々を魅了し、ONEの舞台でも10年にわたって活躍。日本の格闘シーンを牽引してきた青木真也だけに、この負けから新たな生まれるストーリーにも注目したい。