3Dプリンター住宅で“ローン地獄”から解放 「車を買う値段で家を提供したい」…国境を越えた家づくりで増える選択肢
【映像】3Dプリンター住宅の施工の様子
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 立体物を成型できる3Dプリンター。今や様々な用途で使われているこの技術を使って、
世界最先端の家を作る」を目標に“たった24時間”で住宅を作る会社を取材した。

【映像】3Dプリンター住宅の施工の様子

 2022年も残すところ1カ月ほどとなり、各社が年末年始商戦に向けた目玉商品を発表する中、髙島屋が驚くべき福袋企画を発表した。森の中にたたずむ、なんとも未来的な形の建物。髙島屋が1棟限定で販売する「3Dプリンター住宅」だ。

 この住宅を手がけるのが、今年日本で初めて3Dプリンター住宅を製造したセレンディクス株式会社。COOの飯田さんは、「これまでの住宅建設にかかっていた時間やコストが大幅に短縮される」と話す。

「家の躯体を組み上げていく部分に関して、(従来は)非常に時間と人の手がかかっている。通常の住宅でいえば180日近く時間がかかるけれど、3Dプリンターの場合は躯体を出力することによって家の“ガワ”ができてしまう」(セレンディクス株式会社・飯田国大COO、以下同)

「ちょうど1年前に『24時間で家を作る』と発表して、わずか23時間12分で完成させている。年内で6棟販売する計画だったが、今年の10月に販売をスタートさせて既に完売している」

セレンディクス株式会社・飯田国大COO
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 今回の福袋で販売されるのは、グランピングや別荘用途を想定した約10平米の小屋タイプ“Sphere”。価格は330万円だ。来年以降は50平米モデルの販売を予定していて、将来的には百平米の自宅を300万円で販売するのが目標だ。

「30年も住宅ローンを支払い続けるのは非常に難しい。その大きな課題を解決する一つの手段として、車を買う値段で家を提供したいと考え、3年前にこのプロジェクトをスタートさせた」

 目指したのは、日本の耐震基準と欧米の断熱基準を満たす家。ところが、日本にはまだ
3Dプリンターで家を作れる技術者がいなかった。

「まず海外の人たちと組むのが一つのやり方。補足すると、海外にも2つのタイプがあって
3Dプリンターの開発に詳しい人たちと、3Dプリンターにあまり詳しくないけれど3Dプリンター住宅の施工に詳しいチームがある。これは別々の技術で、3Dプリンターに詳しくても施工が分からなかったり、3Dプリンターの施工には詳しいけれど実は設計業務が分からなかったりするというように、みんなバラバラ」

「特に日本は耐震基準が世界で一番厳しいから、海外の企業がそのまま入ってきて日本でやろうと思ってもそれがクリアできない。日本の耐震設計のトップクラスと海外の3Dプリンター住宅のトップクラス、そして実際に施工している人たちのチーム、材料が分かるチーム。一つの国でやるよりも、複合的にやるほうが素晴らしい」

3Dプリンター住宅
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 今年販売した6棟は、海外5か国で同時に出力したものを日本に持ち込み、完成させた。
それぞれの分野のプロによる国境を越えた家づくりで、“思わぬビジネスチャンス”も生まれたという。

「世界中の3Dプリンターメーカーから今、『耐震に関する知見で協力してほしい』と言われている。実は、日本は耐震に関して世界トップクラス。地震は世界中で起きているので、耐震の知見に関しては日本の技術を使いたいという話が今すごく出ている。3Dプリンター住宅を世界に販売する大きなチャンスがある」

 日本と海外の技術を組み合わせて実現した理想の3Dプリンター住宅。国内外150社の協力企業と共に「日本の“住まい”に関する課題の解決を目指したい」と飯田さんは話す。

「いま、日本人の住宅ローンの平均完済期限は73歳。住宅ローンを組める方はまだよくて、日本人の4割が一生住宅を持てないという状況になっている。SDGsのいの一番は『貧困をなくす』ということだが、貧困を無くすためには自分の家があるのは非常に大事なこと。車を買う値段で家が買えれば、もっと色々な選択肢が増える。明るい社会が待っていることを伝えて、早く実現させたい」

(『ABEMAヒルズ』より)

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