昨年1月、日本で公開され話題になった映画『恋する遊園地』。遊園地のアトラクションに恋をする女性を描いたフィクションのラブストーリーで、エッフェル塔と結婚した実在するアメリカ人女性がモデルになっている。
【映像】「私の親友」寝室に信号機…“偏愛さん”の暮らし方(画像あり)
世の中には“好き”を超え、人間と同じように物を愛する人が実在する。クロス・マーケティング QiQUMOを利用し全国の男女160名を調査した結果、「人間以外のモノへの感情で感じたことのあるもの」について、「家族愛を感じる」と答えた人は45.5%、「友情を感じる」と答えた人は28.3%だった。
吉川羅紅さんも、ある物へ特別な愛情を注ぐ一人だ。「自販機横のゴミ箱」を愛する吉川さんは「ゴミ箱は私にとっては人と同じ。表情がそれぞれ違う」と話す。
およそ5年前、ゴミ箱が顔に見え、虜になった吉川さん。それから街をあてもなく歩き回り、見つけては近づいて表情を確認するようになり”家族愛”に似た感情を抱いているという。スマートフォンで写真を撮影も行い、表情と魅力をTwitterで発信するだけでなく、写真をまとめた自作のアルバムも作っている。
信号機が「親友」という女性も。4年前落ち込んでいた時に人の命を守るために働く信号機を好きになってしまったというイラストレーターの石橋さんは去年、ヤフオクで落札した信号機をニーロと名付け暮らしている。「ただの好きとは違う」と話し、無二の友情を感じているという。
さらに恋愛感情を抱く人も。バンド「東京恋慕」のボーカルとして活動するドクガエルさんは「六本木ヒルズは彼氏だ」と断言、「思い出が関係している」と話す。
「高校が六本木にあって、毎日麻布十番駅から来ていた。校舎からもよく見えて、毎日一緒に会っているうちに好きになっていった。見えているだけでも満たされる。擬人化は全くしない。バイト先の饂飩坂のあたりから見える姿が一番好き。先日、久しぶりに行ったら新しいビルが建って風景が変わっていて、本当に泣きそうになった。ただ、微妙に残った隙間から見えて、それがすごくうれしかった」
会話は「光っているとそれが呼吸や鼓動のように感じる。てっぺんに光るLEDがあって、その色が季節によって違う。なんとなくコミュニケーションという感じだ」という。
六本木ヒルズの中も好きなのだろうか。ドクガエルさんは「美術館や展望台も好きだ」といい、「六本木ヒルズに対してマイナスな気持ちになったことは一度もない。恋愛感情に近いが、人とは別だ」と明かす。
「これからもだんだんビルが増えていって会える時間も減っていってしまうかもしれないが最後までずっと一緒にいたい」と話すドクガエルさん。
一方、バストロンボーンを愛する山中雅姫さんも同じく「恋愛感情だ」と断言する。
「私はこの造形美、フォルムがたまらない。他のバストロンボーンではなく、この“彼”がいい。特別視してしまうのはこの子だけ。パートナー、彼氏みたいなものだ。同じモデルでも製造番号が違う。人間が持つDNAと同じだ」
通常のトロンボーンと比べて、バストロンボーンはロータリーバルブの仕様が違うという。会話的な通じ合いはどのように補完しているのだろうか。山中さんは「私は声が聞こえるというより、演奏時のピッチの違いを感じる。気温によっても違ってくるので、人間と似ている」と答える。
さらに山中さんは、結婚願望や性的欲求もあるという。「私は掃除のときにすごく楽しくなる。分解してオイルをさしたり、クロスで拭いたりするときにすごい満たされる。ずっと一緒にいたい。尽くしたいと思う」と話し、「モノへの恋も人への恋も同じ純粋な気持ち、変な人という勝手な偏見をやめてほしい」と訴える。
精神科医・井上智介氏は、人ではなくモノへの恋愛感情を持つ人について、「過去に人間関係につまずき、人を愛せない人というのは全くの誤解だ」とコメント。モノが感情や性格を持っていると感じる「対物擬人化共感」を持っている人が多く、WHO(世界保健機関)でも日常生活に影響がなく、社会的に逸脱がない場合は精神疾患ではないという。(「ABEMA Prime」より)