山際大志郎氏、葉梨康弘氏、寺田稔氏と、閣僚の辞任が相次ぐ岸田文雄政権。内閣支持率は30.5%(ANN世論調査、11月19・20日)と、政権発足以来最低となった。
そんななか、野党・立憲民主党の政権奪取に向けた「秘策」が、元日本テレビ解説委員でジャーナリストの青山和弘氏の取材メモから見えてきた。
「保守層を取りにいきつつ党内をまとめるには、野田さんをもう一度担ぐしかないだろう。(安倍元首相に対する)追悼演説以降、野田さんの意識も変わってきた」(立憲民主党幹部の発言・青山氏取材メモより)
2012年11月14日、野田総理と野党・自民党の安倍総裁(いずれも当時)による党首討論は、議員定数・議員歳費の削減をめぐる「伝説の一戦」となった。国民に信を問う決断(=衆議院解散)を求める安倍氏に対して、野田氏は「一票の格差」と定数削減を、今国会ないしは次の国会で実現することを条件に解散すると明言。その後の総選挙で自民党が圧勝し、第二次安倍政権が誕生した。
それから10年。銃撃により亡くなった安倍氏への追悼演説が、今年10月25日に行われた。これまで追悼演説は、野党党首クラスが務めてきたが、民主党の元代表である野田氏が選ばれた。
「野田さんに追悼演説のオファーが来た時、本当に受けたくなかったそうだ。褒めても党内から怒られる。批判したら遺族に失礼で、とても難しい役回りだからだ」(青山氏)
立憲民主党のベテラン議員は、野田演説は安倍政治を褒めているものではないが、「遺族を泣かせ、与党側からも喝さいを浴びた」(取材メモより)として、それができるのは野田氏だけだと評する。
青山氏によると、野田氏自身は千葉県議会議員時代から駅頭に立ってきて、過ぎゆく通勤客を振り向かせるために磨いた話力が生きたと話しているという。
「自分はもう一度政権交代可能な二大政党を作るまでは、死んでも死にきれない。一強多弱のままではいけない」(野田氏の発言・取材メモより)
11月27日の『ABEMA的ニュースショー』では取材メモの背景について、青山氏がスタジオで解説した。演説者が野田氏に決定した経緯について、多数派である自民党からの推薦が必要なため、菅直人元総理や、枝野幸男元官房長官、立憲民主党・泉健太代表では「嫌みのひとつくらい言われるのではないか」となり、安心して任せられる人選になったと説明する。
実は野田氏と安倍氏にあまり接点はなかったそうだが、考えが正反対かというとそうでもないという。父が自衛隊員だった野田氏は保守寄りの考え方を持ち、安倍氏も「悪夢のような民主党政権」と生前振り返りながら、政権交代後の最初の総理が野田氏だったなら長期政権になっていたのでは、と評価していたという。
演説の文章も野田氏自身で作り、総理引き継ぎ時の皇居控室でのエピソードを盛り込むなど、「相当悩まれて、推敲に推敲を重ねた」(青山氏)。野田氏から直接聞いた推敲箇所として、以下の3点を挙げている。
・「<勝ち逃げ>はないでしょう」
→「<勝ちっぱなし>はないでしょう」
・「長く国家のかじ取りに力を尽くしたあなたは、<歴史の被告人>にならなければならない運命です」
→「長く国家のかじ取りに力を尽くしたあなたは、<歴史の法廷に、永遠に立ち続け>なければならない運命です」
・「あなたが放った強烈な光も<その先の暗い影も>」
→「あなたが放った強烈な光も<その先に伸びた影も>」(いずれも取材メモより)
こうした細やかな気配りを背景に、野田氏再登板の動きがある。立憲民主党の支持率が低迷する要因は、左派に寄りすぎていることが考えられ、「中間層」を取り込む政策を考えるうえで、野田氏が適任なのではないかとの声があるという。党内でもリベラルとされる蓮舫氏や辻元清美氏も「野田さんなら、ついて行こう」と思うほどの人望があり、保守層を取り込みながら、政権交代を目指す可能性があるのではないかと、青山氏は分析している。(『ABEMA的ニュースショー』より)
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