将棋の棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメントの敗者復活戦が11月29日に行われ、藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が伊藤匠五段(20)に勝利した。この結果、藤井竜王は敗者組決勝戦へ進出。次戦では挑戦者決定二番勝負進出をかけ、羽生善治九段(52)と対戦する。
両者が「対戦を楽しみにしていた」と口をそろえた20歳対決。公式戦2度目の対戦で、注目の戦型は角換わりになった。序盤から両者の研究がぶつかり合い、指し手は猛烈なペースで進む。過去に第70期王座戦五番勝負の第2局、豊島将之九段(32)の先手、永瀬拓矢王座(30)の後手で指された一局を辿るように67手目まで同じ進行。68手目でようやく前例を離れ、昼食休憩までに83手まで進行した。
休憩明けからは伊藤五段が攻め、藤井竜王が受けに回り、一気間違えれば終わりという激しい終盤戦へと展開した。伊藤五段は強気の2枚の飛車で先手陣に攻撃を加えると、後手玉は上部脱出を画策。伊藤五段は苦しいながらも「間違えは許さない」と目を光らせたが、藤井竜王は猛攻をかいくぐって入玉を果たした。
ABEMAの「SHOGI AI」は藤井竜王の優位を示すも、伊藤五段は豊富な持ち駒を武器に果敢に逆転を狙う。しかし、藤井竜王も緩まず角成りから切り込み、伊藤五段の懸命の猛追を振り切って勝利を掴んだ。
藤井竜王は、「中盤からは玉が薄い形が続いて、それをしのげるかという局面が長かった一局だった。入玉しているが駒を取られているので、後手の方も入玉を狙ってくる展開もあるので、どうなっているかわかっていなかった」と激戦を振り返り、「(後手の銀打ちを)かわして、読み抜けが無ければ大丈夫かなと思っていた」と加えた。
この結果、藤井竜王は敗者復活戦決勝に進出。次戦では挑戦者決定二番勝負出場をかけ、羽生善治九段(52)と対戦する。「まだ挑戦を目指す感じではないが、次の一局にも全力を尽くせればと思います」と次局を見据えた。
一方、敗れた伊藤五段は本局で敗退が決定。悔しい中だが、「藤井竜王と対戦する機会はなかなかないので、とても楽しみにしていた。トップ棋士の先生とたくさん対局することができたので、とても貴重な経験だった」と話し、来期以降のリベンジを見据えた。
現在五冠を保持する藤井竜王だが、棋王戦は過去5回の参加で予選敗退が2回、挑戦者決定トーナメントでも最高3回戦で敗退と挑戦経験がない。今年度、五冠を防衛して棋王初挑戦から奪取を果たした場合は最年少で六冠達成とあり、大きな注目を集めている。
藤井竜王は勝者組準決勝で佐藤天彦九段(34)に敗れ、敗者組へ。六冠ロードは厳しい道のりとなっているが、まずは本局の勝利で挑戦権獲得に再び近づくこととなった。
(ABEMA/将棋チャンネルより)