「プーチン大統領だけが批判をされて、ゼレンスキー大統領は全く何も叱られないのはどういうことか?」
18日、日本維新の会の鈴木宗男参議院議員のパーティーで疑問を投げかけた、森喜朗元総理。「ゼレンスキー氏は大統領として多くのウクライナの人たちを苦しめている。のみならず、ポーランドを始めとしてヨーロッパにいるかつての仲間の国々もみな苦しんでいる」と述べ、岸田総理に対しても「アメリカ一辺倒」と苦言を呈した。
【映像】握手する森元総理とプーチン大統領(ロシア、2000年4月)
現在、日本・ロシア協会の最高顧問であり、プーチン大統領とは20年以上前から深い関係を築いてきた森元総理。これまでの“失言”のイメージもある中、Twitterでは「ロシアに利用されてない?」「日本が外国から攻められたら、岸田総理が悪いことになるの?」など批判の声があがる。一方で、「ロシア側からの視点も一理ある。ただの失言ととらえるべきではない」「メディアが西側の情報だけなのも気持ち悪い」と理解を示す意見も少なくない。
また、鈴木氏もロシア視点で持論を展開している1人だ。かねてから、去年10月に親ロシア地域へ自爆ドローンを飛ばしたこと、今年2月にゼレンスキー大統領がウクライナの核放棄を明記したブダペスト覚書の見直しを主張したことなど、ウクライナ側の責任も指摘していた。この日も「先に手を出したのが悪いが、原因を作った側にも一抹の責任がある」と発言。「一方的にロシアを悪者にするのは不公平」と主張した。
侵攻から9カ月。“ロシアは悪、ウクライナは正義”の二元論で捉えていいのか。23日の『ABEMA Prime』で議論した。
森元総理の発言について、日本・ロシア協会理事の自民党・片山さつき参議院議員は「本当にサービス精神の強い方で、親ロシア派の鈴木宗男先生のパーティーの場だったということが1つある。また、総理時代の森・プーチン会談や沖縄サミットなど、一定の国際情勢を作ることに成功された時からの信頼関係がまだあると思う。その上での発言として聞けば、取り沙汰されていることとは(印象が)少し違うだろう。他方、G7・G20サミットの最中にロシアがウクライナの主要都市や民間インフラにミサイルを撃って、現地から死体の画像が送られてくるような状況の中で、岸田総理以外のどなたが総理でも、G7と協調してこの(ロシア非難の)姿勢をとるのは日本の国益だ。20年の流れ、非常に大きな状況の変化という2つを見なくてはいけない」と話す。
防衛研究所主任研究官の山添博史氏は「発言の意図は判断しかねるが、ロシアの言い分が一顧だにしてもらえないのは問題なのではないか、という出発点は理解できるところ」とする一方で、「ロシア側とウクライナ側の言い分を、等距離・等価値に置いていいかというのはまた別の話だ。ウクライナ側の現場で行われていることは、西側のいろいろなメディアで検証し得るもの。一方、ロシアは当局と違うことを言うと罰せられる状況にあるので、確認や検証がしにくい。そのために、ウクライナ側から出てきている情報のほうが信頼しやすいと捉えている」との見方を示す。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「森さんや鈴木宗男さんは、まるでゼレンスキーが国民を戦わせて無理に戦場に引き込んでいるような印象で言われているが、そもそもそういう問題なのか。ウクライナ軍の士気は高くて、国民は電力が足りない中で非常に頑張って、なんとかロシア軍を押し返そうとしている。これは民族自決の問題で、ウクライナ国民が“我々は戦うんだ。ロシアを押し返すんだ”という判断をしているのに、関係ない我々が『もう戦争をやめろ』と好き勝手言えるのかと。それこそ他国への干渉だろうと思う」と指摘した。
ゼレンスキー大統領はロシアの停戦案を拒否した。18日、「ロシアは今、力を取り戻すための休息として停戦を求めている」「このような休息は事態を悪化させるだけだ」「真の永続的な平和は、ロシアの侵略を完全打破することによってのみ実現する」と話している。
片山氏は「まさに今、国際社会で言われているキーワードは、一方的な力による国境線の変更だ。これは認められず、徹底的に戦わなくてはいけない。どのような状況に戻りたいかというと、おそらくは2月24日より前、武力行使を行っていなかったところが最低限のライン。ただ、ロシア側にその気がないので、仲裁に入ろうとしても難しい」との見方を示す。
山添氏は「『プーチン大統領を追い詰めたら核兵器が使われるかもしれない。そうなる前に停戦するべきだ』という議論について、かえって危険だという反対論がある。核の威嚇を使うロシアが求める状況で停戦が行われると、それが有利な状況をもたらしたことになると。次にまたロシアが要求を出してきた時に、核の威嚇が有効になる世界になってしまい、さらに次の問題を引き起こしてしまう。日本も他人事ではない」とした。
では、この侵攻に落とし所はあるのか。片山氏は「終わりはあるだろう」との見解を示した。
「ヨーロッパの戦争は1990年代以降もあって、ボスニア・ヘルツェゴビナなどでは凄惨を極めた。彼らはある意味では歴史の上に成り立っているので、落とし所がないかというと、必ず終わるだろう。あとは、プーチン大統領の拳の下ろし方やプライドの問題だ。ロシアと比較的話せるフランスが何度か話そうとしたけれど、若い今の大統領では役者が違い過ぎて、はっきり言って噛み合っていない。だから、イギリスのボリス・ジョンソンあたりが出てくるか、またドイツのメルケルがいれば逆の意味で面白かったかもしれないが、今の首相には無理だ。役者がちょっといない」
(『ABEMA Prime』より)
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