三ツ矢雄二「“声優は裏方”という根本に使う側が戻ってもらいたい」 相次ぐ声優の体調不良、業界を変えるには“ブームの終息”が必要?
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 最近、続々と報じられる声優の体調不良。なりたい職業ランキングの常連にもかかわらず、アイドル活動をする多くの若手女性声優が体調不良を訴え、活動を制限したり休止したり、中には適応障害と発表するなどメンタルの不調を訴える人も。なぜそのような事態に陥っているのだろうか。

【映像】メンタル不調で辞めた元アイドル声優「きつかった」

 メンタルヘルスの重要性が叫ばれる今、声優業界はどうあるべきなのか。23日の『ABEMA Prime』では、40年以上のキャリアを持つ三ツ矢雄二氏と、アベプラのナレーションも担当する榎本温子氏の声優2人とともに議論した。

■榎本温子「20代の頃のメンタルは悪かった」

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 以前と比べて声優の仕事は変化してきているのか。三ツ矢氏は「今みたいに全ての声優さんが歌を出し、踊り、芝居もして、みたいなことは僕たちの時はなかった。それが変わったのは、2.5次元ミュージカルが流行り出した頃と、深夜アニメが増えたこと。深夜のアニメを見ているファンがまずキャラクターを好きになって、その声を担当している声優さんのことも好きになって、両方合致して人気が出た。今の“声優アイドル”は、例えばAKB48といったものを模倣したものがだんだん主流になり、“声で芝居をする職業”という部分が二の次、三の次になっている。オーディションをすると、『あなたはグラビアに出られますか?』『水着になれますか?』『歌を歌えますか?』と聞かれる。それができない人はキャスティングされないこともあったりして、時代は変わったなとすごく感じる」と話す。

 榎本氏は「20代の頃のメンタルは悪かった」と振り返る。「私がデビューしたのは1998年。その時はプロモーションがセットになっていて、歌を歌ったりイベントをするのが当たり前の時代だった。1回CDを出すとプロモーションで雑誌に出たり、ジャケット、PVを撮ってと、想像以上に仕事が多い。土日に地方で店舗回りをすることもあって、かなりスケジュールを圧迫していた。本来やりたかったアニメーションの仕事を『もうちょっと自分で育てていきたい』『こういう役柄をやってみたい』ということができなくなっていって、相談する場所もなかった」。

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 また、雇用が不安定だとも指摘する。「私の頃は1年もののアニメーションが多かったが、だんだん“1クール・13本で終わり”というものが増えていった。少し下の世代が『ワンクールのものしか出たことがない』『主役を1回やったら終わりだ』と言っていると聞いた時は衝撃だった。人数が多く、消費がどんどん早くなっていて、色がついちゃうから使われにくくなる、という話も聞いたことがある。基本的にお芝居の能力がベースにはあると思うが、なるべくプロモーションに使いやすい人材が選ばれるのは確かだ。今で言うとTwitterなどSNSのフォロワー数であるとか、『歌えない』『あれは嫌だ』『これは嫌だ』と言わないかどうかとか、使いやすさでも選ばれると思う」。

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 さらに、声優の“兼業”にも驚いたといい、「だんだんアニソン歌手から、声優が歌う文化になってきて、今はアイドルグループを組んでいる。女性ばかりフィーチャリングされるが、男性声優もアイドル化がすごい。ちょっと下の世代の子に聞くと、アイドルを5つやっていて、『少ない方だ』と言う。実際に出演しているグループは1つくらいで、あとはアプリの音源の声入れ、レコーディング、ゲームなどがある状態。そんなにやっているのは異常な事態だ。歌うのは喉をすごく酷使するし、重なってくると声帯に異常が出てしまって、体調を崩す方が結構多い」と懸念を示した。

■三ツ矢雄二「“声優は裏方”という根本に使う側が戻ってもらいたい」

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 声優業界の疑問点として、三ツ矢氏は「若手声優が使い捨てになっている」ことをあげる。「アイドル以外で地道に続けている人たちは、1本30分のアニメーションで1万5000円というギャラで細々と頑張っている。そういう人たちが何年後かにギャラを上げなくちゃいけない時に、『他にいるからいいよ』と使い捨てになってしまう。事務所と密に関係を持っていても、『休ませてください』と言うといい印象を与えない。僕は事務所に強く言えるけど、新人の人は言えないというのは、将来がすごく心配だ」と懸念を示す。

 さらに、業界を変えていくためには「声優ブームが一旦収まること」が必要だと指摘。「聖子ちゃんや明菜ちゃんのアイドルブームは一度去った。それと同じように、アニメ・声優ブームも落ちつくか去っていかないと、やはり新しいシステムは成り立たない。今、30代や40代で残っていられる声優さんは先があるけど、20代でバタバタしている新人の声優さんはある意味、明日がない。そういう子たちがきっちりと残れるように使う側が考えていかないと。今のブームになってから、アニメや洋画の声優、ラジオのディスクジョッキーなど、『マルチに活躍したい』って判を押したように言ってみんな入ってくる。そういう仕事があればやって、自分の首を締めちゃって自滅する。1回これをチャラにして、“声優は裏方で、芝居をする。そのキャラクターを生かしていく仕事なんだよ”という根本に、使う側も戻ってもらいたい」と訴える。

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 榎本氏も大きくうなずき、「私たちには権利も何もないので、使う側が戻ってほしい。今アイドル10人のグループを作ろうとしたら全員新人になるが、昔はライブとか稼働がない時に中堅が入っていた。そうすると技術が伸びるんだけど、新人だけだとなかなかうまくならない。しかもゲームだと1人で録るので、掛け合いやコミュニケーションがないままやっていくから、育っていかない」と述べた。

■公認心理師で声優の小松美智子氏「専門家のサポートを」

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 メンタル不調を訴える声優が続出する背景について、精神保健福祉士・公認心理師で声優の小松美智子氏は「産業医や保健師、精神保健福祉士など、いわゆる産業保健の専門家とつながっているという話は聞いたことがない。(メンタル的な)サポートを受けられないとなると、自分で抱えていってメンタル不調になりやすくなることもある。そもそもプロジェクトや業界構造に欠陥があるとしか思えない。職業ストレスとして、量や内容の要求度が高く、加えて自己コントロールができない。自己選択ができない状況下に置かれると、心身の不調をきたしやすい」と説明する。

 では、メンタルケアのためにどうすればいいのか。「まずは本人のセルフケア。若年層でなかなかオンオフの切り替えは難しいと思うが、自分がどういった時にオフになれるのか。次に相談体制。マネージャーともそうだが、外部の専門スタッフ、弁護士や税理士も含めて、専門分野の皆さんとのつながり・連携を保つ。それから養成所の中でのデビュー前の心理教育やキャリア教育。構造理解ということで、専門のストレススコーピングも含めて取り組んでいくことが大事だと思っている」とした。(『ABEMA Prime』より)
 

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