住みやすい地域にするために作られたはずの自治会をめぐって、今あるトラブルが起こっている。19日配信の産経ニュースによると、自治会に入らなかった夫婦がゴミ置き場の利用を禁止されたとして、自治会に慰謝料とゴミ置き場の利用権利の確認を求める訴訟を起こしたことがわかった。
【映像】自治会の入会に2万円…! 集会で待っていた光景(漫画あり)
Twitterには「自治会役員を強要するのやめて欲しい」「しつこく消防団に入れって言われる」「面倒だけど入会しないと村八分が怖い」などの声も寄せられている自治会。はたして自治会は本当に必要なのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、自治会の存在意義について考えた。
自治会と住民間のトラブルについて、ブロガーのじゃがいもころりん氏は自身の経験をこう漫画で紹介する。
自治会役員「引っ越してきたと聞いたので、ご挨拶と町内会の入会のお誘いに来ました」
じゃがいもころりん氏「ありがとうございます。ぜひ入会したいです」
自治会役員「入会金が2万円、月会費が3000円です」
何の説明もなく提示された自治会費の高さにびっくりしたじゃがいもころりん氏。集会には豪華な弁当があり、男性はビールまで飲んでいたという。高い会費は派手な飲み会のためだったのかもしれない。
飲み会は年に何回も行われ、お祭りやイベントに関する費用のほか、集会所の修繕費なども自治会費で賄われていたという。
「イメージでは、年間で何千円というところが多いのかなと思っていた。入会金を取ることにまず驚いた。それから毎月3000円ぐらい取られて、何に使うのかと思った。費用以外も正直大変で、その自治体はもともと地主の方が多く、おばあちゃんやおじいちゃんがいる家庭が多かった。集まる頻度は月一ぐらいだが、行事などがあるときは月に何回も集まる。私は核家族だったので、小さい子どもを抱えながらの参加だった。主人は平日いないし、けっこうきつかった。昭和チックで『古くからいる自分たち以外の新参者は黙ってついてきてください』という感じだった」(じゃがいもころりん氏)
じゃがいもころりん氏がいた自治体は、40世帯程度の小さな地域だったという。ゴミ捨場については「自治会に入っておらず、実際にスーパーのゴミ捨て場に捨てに行っているご家庭も少ないがあったみたいだ」と話す。
NPO「まぢラボ」代表理事の石本貴之氏は、この裁判についてどのように思っているのだろうか。
石本氏は「私としてはちょっと行き過ぎてしまったと思う裁判だ」と見解を述べる。
「公共サービスとしてのゴミ処理の話と、自治会が提供するサービスの話を少し混同してしまったのではないか。地域によって違うかもしれないが、何らかの形で行政の介入があったほうが、解決も速やかだったと思う。補助金のような形でお金が出ているケースが多いとは思うが、公共財なのか、自治会や町内会の共同財なのか。その境目が曖昧なところで、このゴミ捨場の問題が出ているのでは」
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「万単位の自治会費は高いというイメージが僕はあるが、一般的に平均でどれぐらいなのか」と質問。石本氏は「平均までは分からないが、1万円を超えるところもあれば、数千円単位のところもある。1万円が一概に高いとは言えない」と答えた。
ひろゆき氏が「そんなに高くしないと守れないようなものなのか」と驚くと、石本氏は「これも自治会によって違うが、中には自治会の資産が数千万円単位で積み上がっているところもある。その使い道については、なかなか議論されていないケースもあると思う」と述べる。
裁判になっている自治会のゴミ置き場に関するルールは、自治会役員や掃除当番を担う住人の年会費は3600円、掃除当番などを担わない住民は「準自治会員」となり年会費1万円となる。また、会費を払わない非自治会員はゴミ置き場の利用が禁止される。
もし、掃除当番を担わない準自治会員を作って年会費1万円だった場合、これは高いのだろうか。
大規模マンションの自治会長を2年間務めていた、元・自治会長★芸人氏は「年会費1万円なら、個人的には安いと思う」と話す。
「要は通常の自治会費が3600円だから、ひと月300円だ。もし年額1万円だけでいいなら、ひと月800円程度。通常自治会費300円を引くと、500円程度だが、それだけでゴミ掃除当番をアウトソーシングできるなら、かなり安い」
元・自治会長★芸人氏が会長を務めていたマンションは「自治会費としてはこれと同じ年額1万円で、月会費はひと月300円だった」という。
「ゴミ置き場は管理費で賄っていた。余談だが、年会費が高すぎたのか余剰金がけっこう出てしまった。それを解消するために年会費を下げた。マンションの中にゴミの集積場があり、それ自体はマンションの管理組合が管理している。資源ゴミについては補助金が出ていたので、マンションではなく、自治体単位で資源ゴミの回収を行っていた。その補助金を自治会の活動費に当てていたが、そういう仕組みがあるかどうか、これも地域によってまた異なる」
産経ニュースが報じた裁判は、最高裁にもつれ込む事態になっている。どこに落とし所がありそうか。
元・自治会長★芸人氏は「行政がどこまで管理してくれるかだと思う。私自身もこの裁判を見て、やはり自治会がゴミを捨てる行為を制限するのは、やりすぎだ。『我々が自治会として管理しているからタダ乗りは許さない』は理屈としては分かる。でも、ゴミは捨てる権利は当然あるはずなので、やはり行政が自治会に入らなくてもその人のゴミをちゃんと回収できるようにする。ただ、どちらが便利かというところで、自治会に入って利便性を取るか、そうじゃなくても回収される道を残すか。これが落としどころじゃないか」と述べた。
石本氏によると、自治会加入率は「年々下がっている」という。「表面化、報道されないだけでこういったトラブル自体は増えているのではないか」と指摘する。
「こういった問題が一つの自治会で起こっている問題ではないことを鑑みると、行政としてゴミ処理の仕方をどうするか。これは中長期的に考えていかないといけない。そもそも1対1の関係性で終わらない問題だ」
地域の防災・災害などを考えると、自治会にも存在意義はある。それが、ゴミ捨て場を使う権利となると、本来の趣旨とは外れてきていないだろうか。
石本氏は「町内会や自治会の中には、自主防災組織という形で、取り組みが進んでいる地域もある。私は新潟にいるが、今年8月に水害があり、村上市高根集落で助け合って復旧した。本当に山奥のどん詰まりの集落なので、足りない部分は自分たちだけでボランティアセンターを立ち上げて、地域外から人を呼んだ」と事例を紹介。
「結局どこから行政サービスになるのか、それが議論になってくると思う。特に災害時は行政がまわらないことのほうが圧倒的に多い。そういったことを考えていくと、特に被害が甚大なところにリソースが投下されがちで、地域の外の人たちもそこに集中しがちだ。災害時、いかに自分たちの地域で自治力を持てるか、共助力を高めておくか。これはすごく重要な要素だ」
(「ABEMA Prime」より)
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