11月28日に決定した、岸田政権肝いり政策の1つ「スタートアップ育成5カ年計画」。産業競争力を強化していくため、国内への投資額を現在の8200億円から5年で10兆円、つまり10倍以上にする目標を掲げた。政府が立てた3つの柱の中では、助言役のメンターによる支援事業の拡大や、企業への投資の促進など、様々な策が示されることに。
【映像】スタートアップ政府計画決定 堀江貴文氏「投資“全張り”すべき」
日本はスタートアップ企業が非常に少ない国だ。特に短期間で事業を拡大、評価を高めたユニコーン企業と呼ばれる会社は現在6社のみで、海外と比べても歴然。この状況を打開するため、政府は今回の計画でユニコーン企業を100社に増やすとしている。
はたして、日本は世界的なスタートアップ都市になれるのか。課題と展望を28日の『ABEMA Prime』で議論した。
今回の政策を政府に提言した自民党副幹事長の小林史明衆議院議員は「いろいろな政権がスタートアップと言ってきたが、基本的には単年度の予算で、ぶつ切りになっていた。また、省庁がまたがっている制度はあまり整備されてこなかったので、今回は総理所轄のチームを作って、全省庁横断、しかも5年間という中期でスタートアップが生まれやすい制度を整備する環境を作る政策だ」と説明。
日本でその数が少ない理由については、「大学からけっこう技術が出てくるのだが、日本はその先につながっていかない。アメリカだとベンチャーキャピタル(VC)がメンターとして大学の中に入っていて、“その技術で起業しないか?”というサポートをしていたりする。投資額もアメリカは45兆円なのに対し、日本は大体8000億円で、まずお金が足りていない。2つ目に、日本はストックオプションが使いづらい制度になっている。そこから会社が上場したりしてお金を得るわけだが、その収入には税の優遇がないので手元に残る額は少ない。“もう1回起業しよう”“新しい企業に投資をしよう”という流れにならないので、スタートアップがうまく育たない」と指摘する。
一方、実業家の堀江貴文氏は「世界と戦えるテクノロジー・技術の裏付けが必要だ」として、「SaaSなどはアメリカや中国に規模で勝てっこない。日本国内で時価総額200億円のIPOだったらできると思うけど、そんなのをやったってしょうがない。ユニコーンを目指して、技術的に世界と戦えるようなことをやるためには、軍事費。日本は大学の研究に軍事費を使えないが、アメリカはDARPAという国防総省の下部組織が何千億円という金をスタートアップに入れている。イスラエルなんかでもそうだ。軍事研究なら、どこの馬の骨ともわからないような技術でも『一応1億円張っとこうか』とできるわけだ」との見方を示した。
株式会社クラウドワークス取締役の成田修造氏は「先生はCEOやCTOになれない、株を持ってはいけない、役職にも就いてはいけない、という大学の規則もあったりして、そんな状態では絶対にスタートアップは育たない。だから、もっと先生や生徒に起業させて、“役職に就いていいし、株も持っていいし、儲かってください”というマインドセットにすることがすごく大事だ」とする。
これに堀江氏は「大学で研究をやりながら、給料をもらって、ストックオプションももらえる。その会社が万が一、ユニコーンとかデカコーンになったら、すごいキャピタルゲインが得られると。そうなったら、“大手企業は最初の給料は高いかもしれないけど、別にストックオプションもないし…”みたいな話になる」と応じた。
小林氏もその意見に賛同し、「スタートアップの下に大学があり、改革をこれまでやってきた。国がやるべきことは環境整備だ」とした上で、「そもそもアントレプレナーシップ、スタートアップをやりたいと思うような教育をやるようにする。そして、制度。去年、ハンコを廃止したところ、電子契約の企業が3倍に成長した。今回、法律に書いてあるアナログな手段に限定しているルールが4万のうち1万個も見つかって、これを2年間で全部見直す。そうすると規制が一気に変わるので、新しいビジネスが生まれてくる。先ほど防衛費という話があったが、いわゆる政府調達や政府の研究費ということだ。年末の補正予算の中で、1兆円分スタートアップの予算を用意した。SBIR(中小企業技術革新制度)という、政府調達で全省庁が応援する、優先的に調達する制度で約3000億円用意した」と説明。
一方で、成田氏は「ユニコーンやデカコーンを作りにいくのは、そういうことではない」と指摘する。「もっと選抜された、本当に優れた起業家に大量のお金を投下するアプローチじゃないと。経営者を増やすことが重要なのではなく、経済を大きくすることが政府のゴールなはずだ。アメリカの上場企業の時価総額でも、ものすごい成果が出ているのはGAFAMとテスラ。この6社が圧倒的なパフォーマンスを出しているから、アメリカ経済は大きくなっている。日本もそれをやっていくと考えると悠長なことは言っていられなくて、優秀な人たちに起業してもらって、一気にお金を投下して経済を大きくするプランじゃないと無理だろう」。
これに小林氏は「今、Jリーグからどんどんヨーロッパに出ていく人がいて、ワールドカップで活躍している。Jリーグは地域にクラブをいっぱい作り、サッカーをやる人を増やした。つまり、裾野が広がると成功する確率がどんどん絞られていき、山が高くなる。今回は経営者を増やすために、例えば経営者保証をなくそうということもやる。私自身、地元で高校生や大学生向けに創業体験を2日間、経営者を6人グループにつけてアイデアを出し合うというのをやるが、それだけで参加した人は経営者になってみたいと思う。その中から駆け上がってきた人たちにジャンプアップしてもらうための、経産省がすでに成功した社長をつけてメンタリングする未踏事業というプログラムもちゃんと用意している。裾野が広がり、人が増えてきて、上のゾーンをより大きくすることができる」と答えた。
最後に小林氏は「今日あった議論はだいたい網羅できている。国ができるのは環境整備だと言ったが、その中でチャレンジするかどうかはやはり個人や民間の世界だ。我々は本気でこの5年間スタートアップ政策をやるし、2年間で規制も全部見直そうと思う。それを信じてチャレンジしてほしい」と呼びかけた。(『ABEMA Prime』より)
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